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神様からの答えは一つも返ってこない。
ドアが開きシスターが一人入ってきた。
お菓子を置いて誰にも会わず、すぐに帰るはずだったのに……
「あら。こんにちは。お邪魔しちゃったかしら」
少しふくよかでニコニコと優しい雰囲気のシスター。
何か安心してしまった。
「こんにちは。ちょうど終えたところでした。あの、こちらの教会には孤児院も併設されていますか?」
「ええ、教会の裏手に孤児院があるんですよ。こちらへは初めてこられたみたいですね。最近引っ越して来たのかしら? それとも王都へ向かう途中の滞在かしら?」
誰かと会話することなんて考えていなかったからどうしよう……とりあえず家は山にあるから引っ越してきたというのはなし。
きっと街には時々買い物に来るから短期滞在も…………なし?かな。
なんて言おう……ぼやかしてできるだけ曖昧に答えたいけど…………
あ!……結界張ってくれば良かった……
と、とりあえず、クッキー渡して話をそらしてみよう……
「あの、これお菓子なんですけどたくさんあるので良ければ皆さんで召し上がってください」
「まぁまぁ! 子供たちが喜ぶわ! ありがとうございます。ちょうどいい時間だわ。一緒にお茶にしましょう!」
遠慮させてもらおうと口を開いた瞬間
「まぁ……! ノクト殿下」
ノクトデンカ? 聞いたことある気がする……
ノクト……デンカ…………ノクト……あっ! 湖の!
この世界で初めて会話した人だね、確か。
この街の人だったんだぁ。
ん? デンカ? デンカ…………って……あの殿下!?
お城に住んでる…………あの!?
そういえば……いろいろやったところ全部みられてるんだった! 下着姿も! どうしよう!
よりにもよって一番めんどくさそうな人に見られてたぁ――!
何でお城に居ないの!?
……!? 討伐隊! セアラが言ってた。確か……第二王子率いる討伐隊って……言ってたぁ……
「こんにちは。シスター………お名前を伺っても?」
「申し遅れました。私はこの教会のシスター長をしておりますクラリスと申します。こちらは……あら! ごめんなさい! まだあなたのお名前も伺っていなかったわ」
ノクトは私の事を誰にも言ってない……? それとも……ダメだ……偽名なんて思いつかない……そしてクラリスさんシスター長なんだ。偉いんだ。
仕方がなくゆっくりと振り返る。
彼は……服をきている。 今回は私も着ている。
気が付かないかも。髪の毛隠してるし服着てるし。
明るいところで見ると背は高いし銀髪サラサラだし顔がいい……ちょっと俺様な感じの雰囲気もあるような気がしないでもないけど、これはこれで需要はありそうだ。
そんな俺様ノクト様の表情からは何もわからない。
「初めまして。ノクト殿下、クラリスシスター長。私はトウカと申します」
「初めまして。クラリスシスター長、シスタートーカ」
クラリスシスター長がすぐに私はシスターではないと訂正してくれたけど、ノクトにトーカと呼ばせていただきます。と言われた。
気が付いているよね……これ……知らない振りをしてくれてるけど。
湖でそう呼んでいいっていう話したし。
その後、ノクトも含めてみんなでお茶にすることになった。
私の思いとは違う方へどんどん進んでいく……
ノクトが私に手を差し出す。
顔が熱くなる……こういうところだぞ王子。
慣れてないんですけど……どうすればいいの……
差し出された手に私の手を重ねると、思いの外強く握られて、すぐに手を繋ぎ直された……いわゆる恋人繋ぎ……です。
この世界の常識がわからない……
3人で孤児院へ向かっているけど……この手はいつまで繋いでいるんだろう。
恥ずかしい……クラリスシスター長が助けてくれるかもとそちらを見ると、アラアラ、ウフフな暖かい目を向けられて終わった……違うんです、そういうんじゃないんですよ。
そろそろ離してくれないかと思い、ノクトを見上げると彼もこちらを見ていて目が合う。
彼がフッと笑う。
少し意地悪そうな笑顔にみえたのは気のせいかな?
「ミケネコサンは元気か? トーカ」
気のせいじゃなかった……
前を歩くクラリスシスター長には聞こえないくらいの声で話しかけられたので、私もそれくらいの声で返す。
「やっぱり気が付いていたんですね。私の事を黙っていてくれてありがとうございます。三毛猫さんは元気ですよ。そろそろ……て、手を離してもらえませんか殿下」
「それは出来ないな。トーカがまたどこかへ消えてしまうかもしれないだろう?」
「………………」
そうかもしれないけど、今そうなったらノクトも一緒に消えることになる…………とは教えてあげない。
「子供たちとの茶会が終わったら話がある」
突然真剣な声で言われると緊張する。
湖での事だろうなぁ………
「……わかりました」
孤児院には3才~16才までの子供たちが15人とシスターが4人とクラリスシスター長の20人で暮らしているらしい。
クラリスシスター長が子供たちを集めてクッキーを見せるととても喜んでくれた。
小さい子たちにも可愛くお礼を言われると頬が緩んでしまう。時々おやつ持って来ようかな。
そして案の定手を繋いでいることを冷やかされた。
離してくれないなら消える、と小さく低めの声で呟くと離してくれた。
誰のかわからないけど、ワンピース黙って借りてごめんなさい、助かりました。ありがとうございました。
心の中でお礼をいう。
賑やかで穏やかな時間はあっという間に過ぎていき、お茶会はお開きになった――――――




