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異世界転移の……説明なし!  作者: サイカ


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18/251

18 オリバー


            18



思わず一歩踏み出すと、猫が威嚇を始めた。


しまった! と思ったがもはや出ていくしかないだろう……


せめてゆっくりと近づいて怖がらせないようにしなければ。


長い黒髪がサラサラと風になびく

近づく程に彼女の美しさに気が付く

小さな顔に大きな瞳……こちらも黒か……

ラベンダー色のワンピースに細い腰

ピンク色の小さな唇


見たことがない髪と瞳の色に見かけない顔立ち……


どこから来たのだろう。俺がここへ帰っていない間にこの街に越して来たのか……

だとしたら名前くらいは聞いたことがあるかもしれないが俺の顔は知らないかもしれない。


あまり見つめてはいけないだろうか。


彼女も私をみている。警戒しているのだろう……


早く近くに行きたいが、離れたところで一度立ち止まる。


すると………………彼女が微笑んだ。


息が……止まる……


女性から笑顔を向けられたのは………こんなに大きくなる前……子供の頃以来だ。


どうしていいか分からない……これでは俺の方が彼女に怯えているようだ……


「あの……何か……?」


彼女の方から話しかけてきた。

落ち着いたその声音に息をする事を思い出す。


「……もう日が暮れます。こんなところで一人で何をしているのですか?」


「夕食にしようかと……たまには外で」


確かに敷物を広げ準備をしていたが……魔獣の事を知らないわけではあるまい。討伐隊も街に来ている。


しかし……納得は出来ないが一旦そういうことにしておこう。問い詰めて怖がらせてはいけない。


「そうですか……そちらは猫ですか? 見たことがない毛色ですね」


彼女の足元で毛繕いを始めている猫が気になって聞いてみた。彼女は猫を見つめてから視線を俺に戻し、


「あなたは何故ここに?」


話を逸らした……………?


しかしここで迂闊にも名前を名乗っていなかったことを思い出す。これでは彼女の名前を知ることも出来ない。


「…………………失礼しました。名乗っていませんでしたね。私はオリバーといいます。ここは好きな場所でよく来るんです」


「オリバーさんですか。私はトウカといいます。先に場所を取ってしまい申し訳ありません。すぐに片付けますので少しお待ちください。」


彼女、トーカさんはせっかく広げたものを片付けようとしたので慌てて止める。

俺が付いていれば問題ないだろうと、帰りは送っていくと伝えた。


着ている服を見るとどうも平民のようだが、手入れの行き届いた髪や肌は貴族以上に美しくもみえる。

どこかのご令嬢ならば護衛も付けずにこんな時間にこの場にいるわけがない。やはりこの街の住人なのか?



彼女は少し考える様子を見せた後、


「あの……良ければ一緒に座りませんか? あと馬触ってもいいですか?」


俺は混乱して思わず


「っ!あ、あぁ…」


返事をしてしまった。


彼女に一緒に座らないかと誘われたのか? 馬を……グリアは触ってもいい。いいが怖くはないのか?

再びグリアを引いて彼女の元へ向かう。


彼女は怖がる様子も見せずグリアに手を伸ばす。

グリアも気持ち良さそうに撫でられている。


グリアは本来人間好きだが大きさのせいで怖がられるため俺以外の人間に撫でられることなど滅多にない。


俺達はそんなところが似てしまっている。

気持ち良さそうなグリアをみていると羨ましくなってしまいその感情に戸惑う。


俺も……撫でて……ほしい…………思ってしまったあと恥ずかしくなる。俺は何を考えて………


「立派な馬ですね! それにとってもキレイ……キレイだねぇ、お名前は何ていうのかなぁ?」


「グリアです」


俺の馬を誉めてくれた。触れて名前を聞いてくれた。


これまで感じた事のない感情が胸に溢れ始めていた。


更にグリアを撫で、グリアも彼女の肩に顔を乗せて甘えている。俺も彼女のあの艶やかな黒髪と細い首筋に顔を埋めて…………………俺は………何てことを考えているんだ……

邪な考えを振り切っている間に彼女は満足したようだ。


その後、彼女に敷物の上では靴を脱いでほしいと言われ従う。初めての事だが戸惑いを彼女に気付かれないようにした。


その間彼女は自分の分の夕食を半分に切り皿に乗せ私の前に置いてくれた。

まるで子供の頃に戻ったようだ。


俺も買ってきた果物を出すと、彼女はとても嬉しそうな笑顔で華やかな食卓になったと喜んでくれた。

宝石でもドレスでも花でもなく果物でこんなに喜んでくれる女性がいるだろうか。


彼女があまりに警戒心がなく無防備に笑うので思わず触れてしまいそうになる。



珍しい毛色の猫がジッと魚を見つめているのに彼女が気付きご飯にしようといい、皆で食べ始める。


彼女をみていると、ふと視線が合う。

一瞬驚いたような困ったような顔をしてから照れたように笑う………




俺は思った―――結婚もいいかもしれない―――――――――と




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