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32 勘違い

「うぇええん!! 負けちゃった。負けてしまいましたわ!! 無敗の夢が、剣聖への道がぁ! うぇえええん!!」

「……マジか」


 まさかの反応に驚かされる。色んな人間を見て、時には関わってきたが、流石にこのシチュエーションで泣かれるのは初めての経験だ。


「お前、面白いな」

「ヒック。ヒック。く、草取りで生計立ててる男に負けたなんて、ヒック。知れ渡ったら。私もう剣聖になれませんわ。びぇえええええん!!」


 何という豪快な泣きっぷり。これって演技とかじゃないんだよな? 俺が油断したところを攻撃するつもりとか、そんな感じの。


 それならあり得そうだと思ったので、油断したふりして近づいてみる。


「びぇえええん!! 何でおっぱい触りますのぉおおお?」

「あ、悪い。間違えた」

「びぇえええん!!」


 女の泣き声が一層大きくなる。


「あ~、なんだ? 元気出せ。俺に負けた事実が不都合ならお前が勝ったことにしてくれて構わないから」

「びぇえええ……えっ!? 今なんて言いましたの?」


 ピタリと泣き止んだな。やっぱり演技なのか?


「だからお前が勝ったことにしていいぞ」

「でもそれは……本当ですの? 本当にいいんですの? 言っておきますけど、私に勝ったとなれば指名依頼だってくるようになりますわよ」

「ああ。構わないぞ」


 人の社会での評価など千年どころか百年もつかどうかも怪しい不確かなものだ。気にする気には到底なれない。


 あっ、でもせっかくなんでコイツを鍛えてみるか。


 先程の勝負では特に何も感じなかったが、ちゃんと指導すればリーナ達の時に感じた楽しさをもう一度味わうことが出来るかもしれない。


 そんなことを考えながら見つめていると、女が不安気に体を引いた。


「な、何ですの?」

「交換条件と言うわけではないが、黙っててやる代わりに一つだけ条件がある」


 ビクリ、と大袈裟なほど大きくサーシャの体が揺れる。


「ん? どうした?」

「そ、そういうことですの。……くっ。いいですわ。先程はA級の冒険者にならなければ相手にしないと言いましたが、それに匹敵、いいえ、凌駕する実力を見せられた以上、認めるのも吝かではありませんわ」

「悪い。何の話だ?」

「ですから口止めの代わりに私をお望みなのでしょう? いいですわよ。さぁ、好きにしなさいな。それでこの大天才の天才的な経歴を守れるなら安いものですわ」


 ……ああ。なんか変な勘違いしたのか。しかしこれはこれで悪くないかもな。


「そうか。それなら宿に行くか」


 据え膳食わねば……そんな言葉を思い出した俺は、受付嬢に敗北した旨を伝えると、自称天才を宿へお持ち帰りした。


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