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30 手加減

「ちょっとタイムだ」


 今にも斬りかかってきそうな女から離れて、受付嬢へと近づく。


「どうされましたか?」

「質問なんだが俺なんか怒らせるようなこと言ったか?」


 顔を近づけると、受付嬢の頬がわずかに赤らんだ。現在の顔は人間の女が好むようにデザインしたもので、ピピナにも「師匠はシャキッとしていれば普通に格好いいよね」と言われるくらいには好評だ。


「聞いてるか?」

「あ、えっと……コホン。失礼しました。お耳を」


 受付嬢がそんなことを言ってきたのでカウンターに身を乗り出す。


 耳に女の吐く息が当たった。


「サーシャ様は剣聖であり生涯無敗であるソーリア様を尊敬しておられ、自分もそのようになりたいと常々仰られております。なので他人からの評価には殊更敏感なのです」

「つまり弱いことを指摘したのがいけなかったのーーんっ?」


 女の掌が俺の口を塞ぐ。受付嬢は恐る恐ると言った様子でサーシャに視線を向けた。


「ふっ。どうやら本気で私の実力を勘違いしているようですわね」

「サ、サーシャ様、落ち着いてください。貴方ほどの方が怒るようなことではないはずです」

「大天才であるこの私を弱いと言ってますのよ? 聞き捨てなりませんわ」


 ズイッと腕を組んだ女剣士が身を寄せてきた。


「真の実力者がどのようなものかご指導して差し上げましょうか? 勿論、貴方にその度胸があればの話ですが」


 ああ、なるほど。何で怒っているのかと思えば、俺より強いつもりでいたのか。


「ふっ」

「……今の笑い方、個人的にかなりカッチーンっな感じなんですけど?」

「ああ悪い。別に挑発する意図はなかったんだが……」


 生物としてのエネルギー量にこれだけ差があるというのに、どうして気が付かないのか。俺の擬態がそれだけ上手いということか? だが人間に限らず勘のいい奴はたまに気付くんだよな。その差は一体何なのか。


「不思議だ」

「いや、何ですの? 結局やりますの? やりませんの?」

「ん? ああ。別に相手してやってもいいぞ」


 勝敗は分かりきってるが、リーナ達を鍛えている時はそれなりに楽しめた。こいつでも楽しめるか試してみてもいいだろう。


「その度胸だけは誉めて差し上げますわ。ウケナさん。訓練室をお借りしますわよ。できれば見学禁止の部屋を貸して下さいな。ちょっと現実を教えてあげるだけなので、晒し者にするのは可哀想ですからね」

「訓練室は空いていますが、その、本当にやるんですか?」


 視線から推測するに、どうやら俺に言っているようだ。


「安心しろ。手加減はちゃんとする」

「はぁ。えっと、では、その……サーシャ様、くれぐれもーー」

「安心しなさいな。ちゃんと手加減はしますわ」


 そんなこんなで黒髪の女剣士と遊ぶことになった。

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