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2 包帯令嬢

 勢いをつけすぎたせいか、着地は結構派手な音を立てることになった。だがおかげで黒装束も、黒装束に襲われている貴族(?)も俺に注目してくれた。


「一つ、質問をしよう」


 周囲を確認する。馬車の護衛と思もわしき者達は全滅。それなりに奮戦したようで黒装束の死体も転がってはいるが、客観的に見てすでに大勢は決していた。今は小刀を構えた黒髪のメイドが顔の半分を包帯で隠した令嬢を血だらけになりながらも背中に庇っている。


「これはあれか? 盗賊が貴族の馬車を襲って金品を巻き上げようとか、そんな感じの現場か? それとも親しい誰かを奪われた報復とか、そんな聞けば涙を誘うような深い事情でもあるのか?」


 前者なら令嬢とメイドを助けてやってもいいが、後者なら放っておく。何故なら人間の倫理に基準を置いた場合、どちらに問題があるのか判断が難しいからだ。そんな考えるのも面倒な状況に進んで首を突っ込む気はなかった。多少影響されているとはいえ、俺はリーナ達のようなお人好しではないのだ。


 黒装束達から発せられる不穏な気配、その矛先が俺に向く。一方メイドと令嬢は成り行きを固唾を呑んで見守っていた。


「一応忠告しておくが、安易な行動はやめて状況を説明することを進める。別にお前達とは戦ってみたいとも思わないしな」


 分かっていたことだが、戦闘意欲などかけらも湧いてこない。黒装束達は人間の中ではそれなりに動けるみたいだが、それだけだ。不意を突かれなければピピナ一人でも勝てるだろう。


 でもその不意を突くのが上手い奴がいるのが問題なんだよな。


 三人とも実力的にはもう一流と言っていいだろうが、やはり後三年は一緒にいるべきだったのかもしれない。ーーなどと、俺が早くも別れた三人のことを案じていると、黒装束が四方から一斉に攻撃を仕掛けてきた。


「面倒くさいな。ほら、飛んでいけ」


 俺が片手を下から上に持ち上げるように振れば、突風が発生。それが黒装束達を持ち上げてキラン! と輝く真昼のお星様にしてくれた。


「……嘘」


 その場の全員が空を見上げる中、包帯巻いた令嬢がポツリと呟いた。


「それで? お前はどうするんだ?」


 残りの黒装束。そのリーダーと思わしき男……いや、女? 女だなこいつ。に問いかける。


「我々はそこの女に家族を奪われた。これは報復なのだ。邪魔をしないで欲しい」

「嘘です。こいつらは魔帝国の暗殺者。命令のままにお嬢様を襲いにきた、ただの刺客です」


 二人がそれぞれ別のことを主張し始めて、正直凄く面倒くさい。もう放っておこうか……な? 


「あれ? お前、ひょっとして……」


 似てるか? 似てるな。うん。似てる……と思う。


 包帯令嬢に興味を覚え近づく。そしたら今度はメイドから不穏な気配が飛んできた。


「止めとけ。お前では俺には勝てない」

「分かっております。ですので、どうかお願いです。お嬢様に近付かないでください」


 お嬢様、ね。まだ自信が持てないが、この令嬢……似てる気がする。だとしたらーー


「気が変わった。おい、黒装束。この令嬢に聞きたいことができたから、お前らは消えろ。大人しく引くなら見逃してやる」


 俺がそう言うや否や、背後から小さな針が飛んできた。それを指でキャッチして、飛ばしてきた奴にそのままリバース。背後でうめき声が上がった。


「今のが最後の忠告だ。どうする?」

「……撤退」


 女がそう言うなり、黒装束達は統率された動きで音もなく引いた。

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