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12 物のついで

 困った。何度試してみてもこのベッドというものの良さが理解できない。


 空中で寝るのも、地面で寝るのも、溶岩で寝るのも俺には変わらないからだ。いや、そもそも睡眠という行為自体が不要なのだが、人間はよく眠る生き物。ならば人間として活動している俺も寝るべきだろう。


「あの、これでよろしいでありますか?」


 ベッドに横たわり俺を見上げるメイド。雄にはない胸部の膨らみとうっすらと割れた腹筋、そして白い肌に勲章とばかりに刻まれた大小様々な傷が印象的だった。


「ああ。それでいい」


 女を抱く。ガラス細工のような肢体を。最初は難しかった。あまりにも繊細なその体を壊したこともある。死んでさえいなければ治すことは雑作もないが、一回壊した女は二度と俺と寝たがらない。たまに変わった嗜好の持ち主が寄ってくることもあるが、そいつらも百年やそこらでいなくなる。


 痛みと快楽に歯を食いしばるメイドを見下ろしながらふと思った。


 果たして俺は人としての生活を楽しめているのだろうか?


 分からない。ただ学習はしている。その証拠にラーミアは俺がどれだけ体を動かしても壊れない。人間に化けたばかりの頃を思えば信じられないほどの上達ぶりだ。


 同時に虚しさも込み上げてくる。俺は学習がしたくて人間に紛れているのだろうか?


 数時間ほど交わると女が眠りについた。


 無防備な姿だ。人間は元々の肉体強度が低い上に、再生能力も貧弱なのだから、ベッドに要求されるべきは安眠ではなく防御機能ではないだろうか。そんなどうでもいいことを考えてる自分に気付く。


「……寝るか」


 夜明けまで数時間。気付けば退屈な睡眠から逃れる言い訳を探していた。気を付けなければいけない。俺のことだから一つの習慣を破れば他も次々に破ってやがて人間であることも止めてしまうだろう。


「まぁ、それはそれで別にいいんだが」


 ただ、あの三人が生きてるうちは人間でいたいと思わなくもない。


 リーナ達の顔が脳裏に浮かぶ。……あいつら、魔術紋のことを怒っているだろうか?


「隷属紋か。そんなものがこの大陸にあるとはな」


 ピピナとフローナはどうか知らないが、リーナは身分の高い人間なのだろう。アレが原因で面倒な事態になってないといいが。


「せめて尻とか太ももとかにしとくんだった」

「んっ……ご主人様。どうかしたでありますか?」


 メイドが重そうな瞼を開けた。


「悪い。起こしたか?」

「いえ、お構いなくであります」


 全裸のラーミアは特に胸部を隠そうともせずに上半身を起こす。性格なのか、職業柄なのか、あるいは訓練で身につけた精神性なのか、リーナ達と同じように男を知らなかった割には、このメイドにはあまり羞恥心が見られない。


「少々早いでありますが、朝食を準備いたしましょうか?」

「いや、まだいい。それよりも……」


 メイドの下腹部へと手を伸ばす。スベスベの肌を触りながら思案する。


 ここへ紋を入れたわけだが、そんなに目立つか? 案外俺が気にしすぎなだけではないだろうか。


「さすがご主人様、性豪という奴でありますね。了解であります。さぁ、どうぞ。自分は何回でもお付き合いするであります」


 俺の意図を勘違いしたラーミアが煮るなり焼くなり好きにしろとばかりに横になる。物のついでだ。コイツに紋を入れてどれだけ目立つか確認してみるか。


「なぁ、凄く強くなれる魔術紋欲しくないか?」

「……はい?」

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