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転生先は箱庭ゲーム!? 龍の女帝はただ生きていたい  作者: 光陽亭 暁ユウ
第二部 黄昏の章 ―― 夏秋戦争の幕開け ――
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第四十四話 ベリーソース・ベリースイート

 ユウリィ達との歓談を終え、ルーヴとガットネーロはクリムゾニア城の厨房にいた。

 せっかくだからケーキも持ってこよう……ということになったのだ。

 プラケンタ作のケーキは魔術により冷蔵保存されており、常に味が保たれている。

 その技術を見ながら、ルーヴは外の世界は便利だなと目を細めた。

 ルージュ村やその南方にある漁村の文化圏は、そこまで氷魔術が発達していないのだ。


「さーて、ケーキを出して……おや?」

「ん……?」


 ケーキを出し、皿やフォークを用意するガットネーロ。

 だが彼女は、ふと手を止めた。

 どうやら、厨房に誰かが入ってきたらしい。


「あ……どうも」

「ああ……アンタ、誰だ?」


 知らない顔、知らない臭いの女性だ。

 服装からして給仕ではないのだろう。


「ええと、私は新しく来た給仕見習いでして……民間から、徴用されました」

「おお、そうなんスねえ、ではこちらへ!」


 おどおどとする女性を、ガットネーロは手招きする。

 シークレットサービスの表の顔として、給仕をしていた身の上なのだ。

 もしかしたら、彼女に手ほどきをしてあげようというのかもしれない。


「は、はい……」


 なおももじもじとしながら、女性が歩いてくる。

 そして……。

 ガットネーロの手に握られたフォークが女性の首を刺し、引き抜かれた後に喉を刺し、更に抜かれてもう一刺し。

 女性は首から血を噴き出し、赤い噴水のようになって倒れ伏した。

 その手には……ナイフが握られている。


「隠密の先輩として手ほどきッス、もっと殺意は隠さなきゃ駄目ッスよ、なーんてもう聞こえないか」


 ガットネーロは笑いながら手をひらひらと振る。

 だがその目は笑っていない。

 シークレットサービス……つまりプロフェッショナルとしての顔だ。


「あーあ、ケーキが苺ケーキになっちゃったッスよ、アタシ果実系よりはチーズ系派なんスよね」


 そう言うと、ガットネーロはケーキにフォークを入れて食し出す。

 人間の血がついたものを人間に出すわけにはいかないので、しょうがないだろう。


「後で歯を磨けよ」

「はいはいっと」


 死体を漁って所持品を奪いながら、ルーヴは死体をどうしたものかと考える。

 腹が減っているなら食ってもいいが、今は人間一人分を食べるほど空腹ではないのだ。


「はあ……んむっ、借り物のメイド服なのにべっちょべちょ……厨房も拭かないとッスねえ、怒られちゃうや……ごくっ」

「まあ緊急事態だから許されるだろう、それより今はこれをどうするかだが……ユウリィやウルスには見られたくないな、お子様には刺激が強い」


 顎をさするルーヴ……。

 その時だ、血の香りを嗅ぎつけたのか、数名のウェアウルフが厨房にやってくる。

 ルージュ村からの避難民のうち、ルーヴが指揮することになった若い衆……ルージュ狩猟隊のメンバーだ。


「お嬢、なんか問題でも?」

「ああ、間諜をガットネーロが始末したんだ、よし……この女はお前達にくれてやる、好き放題食べて良い」

「マジですか!? 人間って珍味じゃないですか、いつか食べてみたかったんですよ!」


 ブラエドやニライカナイの民に偏見を持たれているものの、ウェアウルフは基本的に彼らに不干渉を貫いてきた。

 せいぜい戦うのは、バンディー達のような近隣を荒らす山賊や密猟者程度。

 なので人間を喰らう機会などそうそう無いのだ。

 無論ゆくゆくは人間とも友好関係を築きたいと考えており、此度の戦争参加はそういった側面もあるのだが……。

 それはそれ、これはこれ、敵対する人間でかつ愛着のない者……それはただの獲物、食肉の塊でしかない。


「さて……この女の臭いは覚えた、アラクネと同じ機関の者なら、もう一人仲間がいるはずだが……」

「それならこちらに」


 声と共に、ルーヴの隣にもう一つ死体が置かれる。

 全身の骨が折れ、顔中が腫れ上がった死体だ……元の性別すらよく分からない。

 そんな死体を投げて寄越したのは……カシャだ。

 華奢で小柄な灰猫獣人といった見た目の彼女には、とてもではないが似つかわしくない。

 だが実際、彼女は死体を片腕で担ぎ、投げて寄越してみせた。


「準備運動にもなりませんでした、のろまな方は返り血も遅い……私を襲うには何もかも足りませんでしたね」

「出た! 女王陛下の強者ムーブ! 現役時代に何度これアタシいらなくねって思ったことか……!」


 どうやら、カシャは拳一つで自分を襲おうとした間諜を返り討ちにしたらしい、しかも返り血を全て避けてみせたという。

 確かに、身に纏う純白の着物には汚れ一つ存在しない。

 シライ共々……ガットネーロが言うとおり、何故彼女の力を必要としたのか分からない逸材だ。


「ふふふ……一人の力が優れていても出来ることは限られていますよ、個の英雄などたかが知れている、強者は群でこそ強いのです」

「はあ、なるほど……まあ確かに10よりは10と7と6を集めて23にするのが良いって理屈は分かるッスけど」


 そう言うと、ガットネーロは紅茶を用意し始める。

 口の中が甘すぎて、少し胃の中へ流したくなったのだ。

 ティーセットにも血がこびりついているが、特に気にした様子は無い。


「あのー、カシャ様、そのお肉も頂いて良いですか?」

「ええ、引き出せる情報は全て引き出しました、ご自由にどうぞ」

「よっしゃ!」


 カシャも特に人間を食べることや血のついた食器を使うことに抵抗はないようだ。

 そういった面は、やはり人間と異なる生物らしいと言える。

 だがそんなこと気にした様子も無く、カシャは手をぽんと合わせた。


「そうそう、血がついてしまいましたね……メイド服、新しいものを用意しましょう」

「ははは、完全に趣味ッスね、陛下ったら」

「……勘弁していただきたい」


 和やかに会話する3人の隣で、残らず食い尽くされる間諜たち。

 そのことを気にとめるのは、肉として見ているウェアウルフ達しかいない。

 彼らは間諜を残らず平らげながら「戦場に出ればこれをもっと食べられる、その時が楽しみだ」と笑うのだった。

 


 その頃、北部では……。


「肉は食わないのか?」

「はい……私、お肉は苦手で」


 ベンティスカの宿で食事を取りながら、ワルトとルーチェは笑い合う。

 互いの食事は、栄養バランスが良いワルトと、肉がなく野菜に偏ったルーチェで対照的だ。

 ルーチェは元々、貧しい村に育ったこともあって孤児になる前から全然肉を食べたことがなかった。

 孤児になり教会に隷属するようになってからもそれは同じで、味のしないスープを飲みながら過ごしていたのだ。

 神父がワインとステーキを食べる姿を、羨ましいと眺めていた日々は今も忘れられない。

 それをきっかけに、ルーチェは肉へ強い憧れを抱くようになったのだが……。


「それで山賊になってから意気揚々と肉を食べたら、予想外の脂っこさにうえってなって……苦手になっちゃったんです」

「なるほどな……だが偏りがあるのはいただけない、卵も食べると良い、それで補える……そうだ、エッグサラダを奢ろう」


 読書家らしく、豊富な知識で食事バランスの補い方を教えるワルト。

 その指導を聞きながら、ルーチェはうんうんと頷く。

 だが……ドアが開いた音が聞こえた瞬間、顔をしかめた。

 クリムゾンフレアとピーヌスが入ってきたのだ。


「こちらで自慢の料理をお出ししましょう、お待ちください」

「うむ、ありがとう」


 一礼し、席に着くクリムゾンフレア達。

 どうやら交渉は上手く進んでいるらしい。

 それがルーチェには気に入らなかった。

 正直に言えば彼女も刺してやりたい。

 しかしここでそれをすればワルトの迷惑になるだろう、一番の願いであるラドロを殺すことは達成した、ならこれ以上わがままを言うほど子供ではないのだ。


「偉いぞ、ルーチェ」

「……もう、頭撫でないでください、私これでも25なんですよ」

「……一つ下だったのか、小柄だからてっきり……」


 ルーチェは孤児時代の栄養失調により禄に背が伸びなかったので、未だに背が小さい。

 対して強くなるべく特訓と栄養管理にこだわってきたワルトはそれなりの高身長だ。

 これでは年齢差があると思うのもしょうがないだろう。


「……あっ、あの二人……」

「……む」


 談笑する二人にピーヌスが気付き、クリムゾンフレアの顔が強ばる。

 謝罪をしようかと思ったのだが……。

 しかし、自分が謝罪したところでルーチェには火に油を注ぐような結果にしかならないだろう。

 そう考えて、黙り込む。

 そこへ食事が運ばれてきた。


「さあどうぞ」

「ああ、ありがとう」


 ステーキ、パン、野菜スープのシンプルなメニュー。

 それを口に運び、クリムゾンフレア達は笑みを浮かべる。

 最近忙しいせいか味が薄く感じていたが、久々にちゃんと味を感じられた気がする。

 とても美味しい料理だ……。


「凄く美味しいね、クリムちゃん……」

「ああ、なんというか……ほっこりするな」


 スープを飲みながら話す二人に、町長も安堵してスープを飲む。

 だが顔をしかめると、悶え始めた。


「……!? どうした、毒か!?」


 クリムゾンフレアの問いに、視線が集中する。

 だが……。


「しょ、しょっぱい……! 厨房! おい!」


 叫びながら、奥へ入っていく町長。

 その様子に、周囲は「なんだ」と食事へ戻る。

 一方クリムゾンフレア達は訝しげだ。


「そんなにしょっぱかったか?」

「そうでもないわよね、別の鍋で作ってたのかしら」


 首をかしげる二人。

 そこへ一人の男がやって来た、厨房のコックらしい。

 彼は青い顔をしている。


「すみません! 最近開発された魔術による圧縮塩というものがございまして……それを解体魔法を使わずに入れたことで、実に二倍の塩が……!」

「に、二倍……?」

「何卒お許しを! どうか山賊を滅ぼしたようにこの街を滅ぼすことだけは……」

「ああ、別に大丈夫だ……我々は飽くまで北部を平定したいだけ、山賊などの他者を害する者でなければ危害を加えるつもりはない……あと普通に美味しいぞ?」


 クリムゾンフレアの言葉に、コックはほっとし……そして、訝しげな顔をした。

 普通に美味しい、という発言が気にかかるようだ。


「あ、あの……失礼ながら、その料理は同じ鍋で作ったものでして……そちらも、塩分はかなり高くなっているはずですが……ステーキソースも同じく……」


 コックはそう言うが、クリムゾンフレア達には信じがたい。

 こんなにも美味しいのに、何を言っているのだろうか……。

 そう考えていると、隣にワルトが歩いてきた。


「本で読んだ知識だが……お前達龍は本来食事を必要としないのだろう」

「ああ、その通りだが」

「だから不要な存在である味覚が鈍く、味を上手く感じないのではないか?」


 ワルトの言葉に、クリムゾンフレア達は目を見開く。

 そう言われて心当たりがあるかと言われれば、答えはYESだ。

 クリムゾンフレアもピーヌスも、自らが龍に近付くにつれて味を段々感じなくなっていった。

 分かりやすい例ではテルメ村での食事だろう。

 あの時ピーヌスは、母のいつも通りの料理を「味が薄い」と言ったのだ。


「だからあの時……」


 呟くピーヌスに、当たりだったことを確信してワルトは自分の席へ戻る。

 一方、クリムゾンフレアはショックを受けていたものの……気を取り直して息を吐く。


「とりあえず……気にしなくていい、我々にとって食事は飽くまで趣味、栄養バランスを考える必要も無いからな、これでちょうどいいくらいだ」

「は、はい……!」


 健康体になって、魅力に気付いた食事。

 それを真っ当に味わえなくなったのは残念でしかない。

 だがそれを表に出したところでどうにもならないのだ。

 クリムゾンフレアは、静かに首を振り気にしていないと振る舞うことにした。


「で、では……会談の続きを……」

「うむ……行おうか」


 笑顔を作り、食事をしながら会談を続けていく。

 といっても……既に話すべき事は大体話したのだが。


「再度説明させて頂くと、ブラエドの作り出そうとしている文明は、やがて世界を滅ぼす……1000年前の滅びと同じ事が起きるのだ」

「それを避けるべく、北部にも協力を仰ぎたいということなのですね」

「そうだ、対価としてはここら一帯の賊を無力化すること、我が国の全力を以てこの街を守ること、そして滅びを避けることそれ自体を提示しよう」


 クリムゾンフレアの提案に、町長は少し考え込む。

 そして静かにあごひげをさすった。


「ふむ……しかし、この地域にある街や村落はここだけではありません、山賊砦もまたあちらだけでは……」

「無論全ての集落に交渉を行い、全ての賊にしかるべき対処をするつもりだ」


 迷い無く、きっぱり言い切るクリムゾンフレア。

 その様子に、町長は納得がいったように頷く。

 この人ならきっと誓いを違える事は無いのだろう、と解釈したのだ。


「分かりました、あなた方に協力いたしましょう」

「ありがとう、貴君に心からの感謝を」


 握手をし、町長と見つめ合うクリムゾンフレア。

 ここからは、互いに本気の見せ合いだ。

 クリムゾンフレアは北部平定に全力を尽くし、町長は物資援助や周辺地域への伝達に全力を尽くす。

 そうして互いへの義理立てをしっかりとするのだ。


「では、今日はこれで……宿には皆様のお部屋をご用意しておりますので、ぜひ一泊」

「ああ、ありがとう」


 取り決めを終え、一礼して去って行く町長。

 その背を見送り、クリムゾンフレア達も食事を終えて軍の待つ場所へ戻っていく。

 そうして静かになった宿で、ルーチェは静かに息を吐いた。


「やっと行った……」

「そうだな……そういえばルーチェ、お前はこれからどうする?」

「!」


 ワルトに問いかけられ、ルーチェはびくりと跳ね上がる。

 とうとうこの質問をされる時が来た。

 ルーチェは少し迷いながら……だが、ゆっくりと口を動かす。

 もごもごと、上手く声が出ないようだが……。

 しかし、しばらくすると息を吐きながら口を大きく開いた。


「そ、その……あなたの小屋で、一緒に暮らしたい!」

「……そうか」


 ルーチェの言葉が予想外だったのか、はたまた嬉しいのか、ワルトも珍しく顔を赤らめる。

 そして……「だが」と言いながら目を伏せた。


「オレは……すべきことがある」

「すべきこと……」

「お前も薄々感づいているのではないか? オレはブラエドが憎い、故郷を滅ぼした彼の国が……それ故、奴らが本気でブラエドを滅ぼすなら力を貸したい」


 ワルトの言葉に、ルーチェは目を細める。

 自分にとってクリムゾンフレアは親の仇。

 だがワルトは目的はどうあれ、それに力を貸したいのだ。

 ……正直、複雑な気持ちになってしまう。


「……そうですか」

「故に、すまんな……事を終えるまで一緒に暮らすことはできん」


 ワルトは静かに頭を下げる。

 そして……ルーチェは静かに目を閉じた。


「ワルトさん、顔を上げてください」

「ルーチェ……」

「気持ちはよく分かりました、あなたは仇討ちの機会を得た……あの時の私と同じ存在なんです」


 自分と同じ、かつてワルトが抱いた気持ちと同じものをルーチェも抱く。

 それが気恥ずかしくて頬を掻くワルトに向けて、ルーチェは目を開き……。

 そして静かに微笑んだ。


「じゃあ、次は私があなたに力を貸します」

「ルーチェ……良いのか、親の仇に与することになるぞ」

「そうですね、でも……私にはもうあなたしか居ないんですよ、だからあなたが戦場に出るなら隣で守りたいんです、もう喪わないために」


 手を握り「その為なら悪魔にでも力を貸す」と言い切るルーチェ。

 そんな彼女を愛おしく思い……ワルトは静かにキスをした。

 デザートに頼んでいたベリーソースの甘い味がする。

 そんな静かで優しいキスを。



 一方、クリムゾニア城では……。


「お帰り、ソラ……む、ケーキはどうした」

「義父さん、ふふん……独り占めしちゃったッスよ、美味しかったなベリーソースケーキ」

「何!? くっ……伝説のプラケンタ殿の作を一人で……!? 食べてみたかったというのに、明日は私も陛下も本国へ戻るのだぞ!?」


 ユウリィの部屋に戻ったガットネーロ達。

 その手に取りに行ったはずのケーキがないことをシライは訝しむ。

 そんな彼にガットネーロは飄々と返し……シライは激昂した。

 そして、ガットネーロに詰め寄る。


「で……本当は?」

「間諜が来て、始末したからケーキが血でベトベト、お子様には見せれたもんじゃないんで腹に入れて処理したッスよ」

「分かった、ご苦労」


 どうやら本気で怒っていたわけではなく、周囲に聞こえない程度の声で会話するために詰め寄ったらしい。

 そんな彼をユウリィはオロオロしながら見守るが、ガルムは肩に手を置くと「心配ない」と言わんばかりに首を振った。


「ルーヴ、トラブルは無かったかな?」

「ああ、父に心配をかけるまでもない」


 腕を組むルーヴ。

 その様子にガルムが安堵する横で……ユウリィは手を指さした。


「あれ、そこ……毛に赤いのが付着していますよ」

「ん……あ、ああ、ベリーソースがついてしまったか」

「へえ……ルーヴさんもつまみ食いするんですね、意外……」


 ユウリィの言葉に、このままではお菓子のつまみ食いをした食いしん坊ウェアウルフという不名誉な誤解が生まれると気付き、ルーヴは口を開く。

 だが……そもそもこの嘘は年若いユウリィにショックを与えないため、何が起きたか悟らせないようについたものだ。

 屈辱を堪えるために歯を食いしばり、ルーヴは静かに目を閉じる……。

 そんな一見微笑ましい光景を見つめるユウリィ。

 その傍らで、ウルスは彼らから明らかな血の臭いを感じ……しかしそれを言い表す言葉が見つからず、静かに振るえるしかなかった……。


「う……うー……こわ、い……」


 ガットネーロの口元から感じる血と甘味が混じったような臭い。

 それに一番の異常性を感じ、ウルスは震える。

 そんな彼女へ視線を送り、口の前で人差し指を立てながら……ガットネーロは笑う。

 舌舐めずりをし、光の無い瞳をうっすらと見せて……。

 本人は飽くまで可愛く笑って舌を出し、あざとく媚びて安心させるつもりなのだが……。

 だが、その笑顔は野生の勘を持つ者には隠しきれない異常性を感じさせる……。

 言うなれば、獲物を見つけた猛獣が笑みを浮かべているかのような感覚。

 もはや恐ろしいとしか言いようがない笑顔に、ウルスはますます震え上がるのだった。

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