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転生先は箱庭ゲーム!? 龍の女帝はただ生きていたい  作者: 光陽亭 暁ユウ
第二部 黄昏の章 ―― 夏秋戦争の幕開け ――
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第三十二話 殺意、悪意、敵意

 逃げ去るクリム達、一方で後を追うマルガリタ。

 彼らは市民を押しのけ、市街地を走り抜けていく。

 貴族が文句を言おうと、お構いなしだ。

 そんな中、マルガリタは腰に収めている剣を抜いた。


「スペルビア! 先ほどの爆発はお前達の仕業なのか!? 故国に何故!」

「こんな国、故国でもなんでもねぇってことよ! 俺らはなぁ、不当に殺されかけてんだ! てめぇもこんな腐った国に忠誠を誓うのはやめたらどうでぇ!」


 ケラススの言葉に、マルガリタは顔を真っ赤にする。

 故国への侮辱が気に食わないのだろう。

 その様子を見ながら、ラクエウスは舌打ちをした。


「よほどご立派ですのねえ、マルガリタ卿は!」

「何……!?」

「忠義を誓う騎士、そんな自分に酔っていらっしゃる! だから盲信ができるんですわ!」

「お前に……何が分かるんだ! 貴族社会から落伍しテロリストに堕ちたお前らに!!」


 叫びながら、マルガリタが剣を振るおうとする、だが……。

 その瞬間、足に矢が刺さって転倒した。

 鋭い一撃だ……だが奇跡的に動脈からは外れているようだ。


「チッ……! 胸狙いが大きく外した……ソヌス! 馬車を速く走らせすぎッス!」

「うるせえ! アタイだって必死なんだよ!」


 胸狙い、殺意のこもった言葉。

 それを発した声はマルガリタにとって知った声だった。

 馬車の座席から矢を放ったガットネーロだ。


「……何故、ガットネーロ……」


 マルガリタが問うが、返答はない。

 一応の無力化はできたからか……ガットネーロは御者を代わり、龍人二人を除いた全員が乗ったのを見て馬を走らせる。

 王都の街道を走り、騎士達を撥ねて走る馬車……。

 それに向けて手を伸ばしながら、マルガリタは震えていた。


「まさか、そういうことなのか……? あのテロリスト達に協力するために、最初からスパイ目的で近付いたのか……? ガットネーロ……ガットネーロ……ガット……ネェロオオオォォォォ……!!!」


 涙を流し、叫ぶマルガリタ。

 その誤解を解ける者はいない。

 周りの人々も彼女を敬遠して近寄る様子は無いようだ。

 だがそんな中……マキャベルが傍らに駆け寄った。


「大丈夫!? マルガリタくん!」

「うるさい、放っておいてくれ! ちくしょう、ガットネーロ……! あんなに気にかけてやったのに……! 見向きもせず! 殺してやる、殺して……!」


 普段の間延びした様子もどこかへ消え、本気で心配をするマキャベル。

 だがマルガリタはそんな彼女の手をはねのけた。

 その目にはガットネーロしか映っていないようだ。

 流石のマキャベルもそれに気付き、ショックを受けたような顔をする。

 そして、ローブを握りしめながら歯ぎしりした。


(私を……見てよ……酷いよ……)


 ルージュ村近くの洞窟に移り住んで数年。

 付き合いはガットネーロより有るはずだった。

 なのに、マルガリタはガットネーロしか見ていない。

 屈辱だった。

 大好きなのに、無理矢理連れ出されても従ったのに。

 なのに目に入ってすらいない。

 今にも叫び出したいくらいの、耐えがたい屈辱……。

 しかしそれを外にさらけ出すこともできず、マキャベルはただ無言でマルガリタを見つめる。

 あの女さえいなければ、そう思いながら。

 そんな中、マルガリタは自分が大事なものに目を向けなかったことに終ぞ気付かないままだった。



 馬車がニライカナイに着く頃には、完全にブラエド兵を撒いたらしい。

 クリム達からの敵影がないという報告を受け、ルーヴは息を吐いた。

 今回の経験は流石に堪えた……そうとしか言いようがない。


「その……告発はどうなったんスか?」

「……最悪だった、クレフティス家の罪を告発したら……国家機密を知っているから、抹殺しろと……王まで腐っているとは、な……」


 ルーヴはそう言うと、馬車を降りる。

 ルージュ村に事の報告と避難勧告をしに行こうと思ったのだ。

 だがそんな彼女に、町長が近寄ってきた。


「おお、ルーヴ殿」

「……ん? 町長さん」

「お父上が、これをと」


 父から、そう言って町長が渡したのは手紙だ。

 急いで中を読むと……そこにはこう書かれていた。

 旧交のあるウロボロス殿より、避難を促された……サーペンタインに民共々、持てるだけの財を持って移住する。

 どうやら父はこの先何が起こるか聞いていたらしい。

 何より驚きなのはウロボロスと旧交があること、またその仲は彼女手ずから連絡するほど重要視されているものという事なのだが……。

 何はともあれ、ルーヴは手紙をポケットにしまい、息を吐いた。

 そんな彼女の隣では、着地したクリムがニライカナイの町長に一部始終を説明している。

 旅先でブラエドのクレフティス家が散々罪を犯したこと、ユウリィの家族も殺されたこと、そしてそれを告発したら自分達も殺されそうになったこと……。

 その話を、ユウリィは黙って聞いている。


「そういえば……女だったんだな、リィ……いや、ユウリィか」

「……生物学的には、でもボクは……自分を男だと思っています、だからいつも男の服装をして、男として振る舞って、そんなボクを周囲は奇異の目で見て……外では一人ぼっちでした、理解者は両親とユウェル様くらい、だったな……」

「だがユウェル王子は……婚約者なんだろう?」

「ええ、でも生まれる前に決まった婚姻でしたから、いずれ解消しようと約束してくださいました」


 第一王子、ユウェル・トゥルボー・ブラエド、26歳。

 厳格で真面目だが、とても人間味のある男と評判の人物だ。

 彼との約束に想いを馳せながら、ユウリィは目を細める。

 彼ならば、話を聞いてくれるだろうかという淡い期待があるのだが……。

 しかし、彼の父が真実を偽れば、彼はそちらを信じるだろう。

 ならば助力は期待できない、それどころか……。


「今後……戦いになるんだろうか」

「かもしれませんね……」


 もしかすると、彼と戦場で殺し合うことになるかもしれない。

 愛ではないが、強い友情を感じていたユウリィは少し震えてしまう。

 そんな彼女の頬を、ウルスが優しく舐めた。


「ん……慰めてくれるんだね、ありがとうウルスちゃん……」


 ウルスを抱きしめ、目を細めるユウリィ。

 そんな二人を見ながら、ケラススは頭をかいた。


「言葉も教えられてねぇから、慰めるのも苦労するだろうに……頑張るよ、ウルスは……へへ、実家のクソさがやんなるぜ……」

「ケラススさん、あなたの家は……」

「おう、生家はクレフティス家だ、っても……研究機関にゃ関わりはないし、継承権もない下の方の娘さ、だが実家や国がクソなのは分かってた」


 そう言うと、ケラススはラクエウスとプラケンタを見つめる。

 ラクエウスは恥ずかしそうに……プラケンタはウインクをしながら、二人の方へ歩いてきた。


「うーん、わたしよく知らないんだけどね、北方の方にミノタウロスの国があって、そこから物心つく前に誘拐されてきたんだって」

「それでわたくしの家で遊び相手兼料理人をしていましたの……でも、わたくしの家も10年戦争で取り潰しになり、一時期はそれこそ道ばたの虫を食べて食いつないでましたわ」


 生い立ちを語るラクエウスとプラケンタ。

 それに聞き入るユウリィの隣で、ケラススは拳をパンとならした。

 怒りに燃えている……といった顔だ。


「10年戦争だって元は上流貴族が地方領主から搾取するために始めた内戦だ、それで領主達は国外に助けを呼び……戦争は複数国を巻き込むものになった」

「取り潰しっていうのも実はそういうことですの、わたくしの家は本当に片田舎を治める家で……格好の餌だったのでしょうね」

「ま……そんなわけで、腐った国になんていられるかと俺らは飛び出したのさ」


 伸びをし、過去に想いを馳せるケラスス。

 彼女はそのまま目を細めると、首を左右に振った。


「しかし……腐敗しているのは上流貴族で、王族は手をこまねく無能ってぇのがあの国に住まうもんの持つイメージだったが……実際は違うようだな」

「ですわね、まさか国王もグルとは……王子王女も怪しいものですわ」


 ため息をついて腕を組むラクエウス。

 しかし、ユウリィは浮かない顔だ。

 その顔をプラケンタが心配そうに覗き込む。


「大丈夫、何か気になる?」

「いえ、その……ユウェル様はじめ、ご子息ご息女の方々は加担しているとは思えなくて……」

「あいつらが白か黒かはさておいて……不当に殺されかけての反撃とはいえ、今や俺らはテロリストってぇ扱いだろうな、ならいずれ追っ手として来るかもしれん」

「ま……緊急事態とはいえ、兵士も結構馬車で轢き潰したッスからね、というかもしかすると市民も轢き潰したかもしれないッス」


 ガットネーロの冷静な分析に、ユウリィは「戦いは免れない、か……」と呟く。

 その声を聞きながら、クリムは内心肝が冷えるのを感じていた。

 5年後の戦争での敗死を恐れていたというのに……まさか5年もせずこうなるとは。

 正直、思いもしていなかった。

 だが確かに自分は本来の歴史とは全く異なる道を歩んでいるのだ。

 ならばこうなるのも想像しておくべきだったのかもしれない。

 まあ、何はともあれ……今は町長への説明を済ませる方が先だろう。


「こういうわけなので……我々はこのまま、街を突っ切らせていただきます」

「ふむ……なるほど、大変な経験をされましたな……我々はご武運を祈ることしかできませんが……しばらくしたら、またお越しください、この街は中立ですからな……ブラエドも自国外ではおおっぴらな蛮行などできますまい」

「……ありがとうございます」


 握手を交わし、クリムは笑みを浮かべる。

 先ほどまで荒んでいた気持ちが、少しだけ救われた気がした……。

 だが、そんなクリムの元へ、ピーヌスが降りてくる。

 そして、焦った様子で叫んだ。


「大変!!! 軍が、ルージュ村の森に火を!」

「……! 隠れていると踏んだか……! 幸い、父達はサーペンタインに逃げたらしいが……ウロボロス様は、これを予期して父に……?」


 留守中とはいえ、大事にしていた文化の詰まった村だ、それを焼かれるのは胸糞が悪いのだろう。

 ルーヴは歯ぎしりをしながら顔をしかめる。

 そんな彼女の肩を、ガットネーロが叩いた。


「とにかく今は逃げるッスよ、街に迷惑をかけないためにも東へ」

「だな……全員乗れ! 馬車を出すぞ!」


 ケラススの号令に従い、全員で馬車に乗り込む。

 今回は飛行により逃亡方向がバレないようにクリム達も馬車の中だ。

 かなり狭いが、こればかりはしょうがない。


 息を潜め、クリム達は見つからないよう祈りつつ、馬車の天幕を少しだけ開いて外をうかがう。

 その時だ、街の入り口から話し声が聞こえてきた。

 騎士達と町長が話しているらしい。


「この街に、王殺しを狙ったテロリストが訪れた可能性がある、建物を一つ残らず調べさせて貰おう」

「ほう、それはどのような方ですか?」

「山賊を退治したという者達だ」


 騎士を率いているのは、足を治癒術で治したであろうマルガリタだ。

 だが町長は首を左右に振る。

 しらばっくれるつもりなのだ。


「彼らはそちらへ向かったっきりですよ、北へでも行ったのでは?」

「……」


 そんな彼を、マルガリタは黙って見つめる。

 そして……。


「これより、強制捜査をする!」


 宣言と共に、その剣を町長に刺した。

 それを見た瞬間、クリムは血の気が引くのを感じ……。

 同時に、体の奥から何かが湧き上がってくるのを感じた。

 ラント村の時と同じ、いや……それ以上の……。


「あの、やろう……!」

「待て、雇い主様……! 絶対に出るなよ、軍の数相手じゃお前がどれだけ強かろうとまだ敵わん……! 山賊になった下っ端連中とは違うんだ! やつらはまだ騎士団に残っているだけの力がある! 今はまだ、耐えるんだよ……!」


 ケラススに促され、クリムは何とか堪えようとする。

 だが、目の前で宿の店主が、斡旋をしてくれた人が、衛兵が、知った顔が蹂躙されていく。

 死が溢れていく、それを止められない。

 嫌だ、そんなのは嫌だ。

 そう思ったとき、クリムの中で何かが切れた。


「う、うう……あああぁぁぁぁぁ、おおおおぉぉぉおぉ、あああああぁぁぁ!!!!!」


 叫びながらクリムは飛び、一番近場にいた兵士を掴んで地面に叩きつける、そしてその顔面を力任せに殴った。

 歯が飛び血がしぶきとなるが、クリムは止まらない。

 殴り、殴り、殴り、殴り、相手の顔が原形をとどめなくなっていく。

 頭が割れ、脳がはみ出、ピクリとも動かなくなるが……それでも殴るのをやめない。

 それを見ながら騎士達は呆気にとられていたが、すぐにハッとなると号令を飛ばした。


「いたぞ、テロリストだ!!!」


 声と共に、夢中で兵士を殴るクリムに剣が向けられる。

 だが次の瞬間、兵士の頭にハチェットが突き刺さった。

 そしてそれに気付いた兵士にも、剣が刺さる。

 ルーヴとケラススだ。


「馬鹿野郎!」

「……!」


 ビンタされ、クリムは我に返る。

 その横で毒のブレスがもう一人居た兵士に飛んでいった。

 これで近くにいた兵士は全員……。

 だが、奥にいるこちらに気付いた兵士が向かってくる。


「ここで死ぬつもりか!?」

「でも、でもやつらは!」

「腹が立つだろうな、憎いだろうな! だがな、それに任せてここで死ぬことは許さん! 憎いならば、それを今は押し込めろ! 奴らを皆殺しできるだけの力を得るまでは!」

「ぐ……!」

「ただ死ぬだけなんて許さんぞ雇い主様よ……! 憎いなら、今は堪えるんだ……! 無駄死になんてするな……いいな!」


 クリムを二人がかりで無理矢理引きずり、馬車に放り込みながら諭すケラスス。

 その後ろで剣を振り上げようとしていた兵士に、ナイフが刺さった。

 クルテルによる攻撃だ。


「チ……わずらわせるわね」

「すまねぇな、クルテル」

「お姉様には怒ってない」


 クルテルはクリムを睨み付ける。

 その視線にクリムはばつの悪さを感じてうつむいた。


「くそっ、もっと早く動け! この駄馬が! 馬刺しになりたいか!?」


 怒鳴るガットネーロ。

 その叱咤に応えるように馬が速さを増す。

 しかし騎士達との間は段々と縮まっていくようだ。

 積載重量の差がある以上、こうなるのは避けられない。

 ブレスで数を減らしているが……いかんせん人数が減らないようだ。


「行け! テロリストを殺せ!」


 マルガリタの号令に従い、多くの騎士がキケロ大橋に突入する。

 だがその時だった。


「今だ、魔道士隊……やれ!!」

「応!!」


 クリム達の進行方向から声がする。

 そして……クリム達の後ろから、派手な爆発音が聞こえた。


「うっ、ああぁ!?」


 馬が怯えて猛ダッシュすることに、ガットネーロが悲鳴を上げる。

 だが悲鳴を上げたのは彼女だけではない。


「う、うわあああああ!!!」

 

 崩れた橋から堕ちていく騎士達。

 彼らはコキュートス大河の激流に飲まれ、消えていく。

 それだけではない……。

 辛うじて橋に掴まっていたものには更なる災禍が待っていた。


「ひっ、な、なんだよあれ……」


 大河の激流から、何かが出てくる……。

 それは、大蛇だ。

 橋ほどの大きさを持つ大蛇が、兵士達を見つめている。

 その鱗には橋の破片が挟まっており、不機嫌そうだ。


「ひっ、俺達じゃない、俺達じゃないんだあああああぁぁぁ!!!!」


 叫びながら食われていく兵士達。

 コキュートス大河に住まう伝説の蛇が目を覚ましたのだ。

 その圧倒的暴力の前に、騎士達が飲み込まれていく。

 惨劇、そう言うしかない様子を見ながら、マルガリタは膝をついた。


「なんだよこれ……なんだよこれええぇぇぇっ!!!」


 部下は全滅、生きているのは自分だけ。

 そんな状況にマルガリタは叫び声を上げる。

 自業自得ではあるが、あまりにも残酷なことだ。

 その声を聞き、ニライカナイ市民達は石を手に取る。

 そして我先にとマルガリタに石を投げ始めた。


「待ってください! お願い! 待って!」


 マキャベルが叫びながら盾になるが、お構いなしだ。

 血を流し、それでも献身的にマルガリタを守るマキャベル。

 だが……マルガリタは大河の対岸しか見ていなかった。


「許さない、許さない……! 許さない、あああああぁぁぁぁ!!!!」


 叫び、頭を振り、半狂乱になりながらブラエドへ走り出すマルガリタ。

 その後ろを、マキャベルは「何故私を見てくれないの」と涙を流しながら追いかけていた。


 


「どうどう……よし」


 なんとか馬を落ち着かせ、馬車を止めることができたようだ。

 これでようやく人心地つける……。

 そう思ったのだが……まだそうは行かないらしい。


「とうとう、この時が来ましたね、仕掛けさせた爆弾が役に立って良かった……」

「この声は、ウロボロス様……?」


 馬車の中の一行へ声をかける者がいた、ウロボロスだ。

 彼女は微笑みながら、馬車へと向かってくる。

 そして、静かに一礼した。


「今日この時までは、未来を読むことができました……ですがここからは未来を正確に読めない世界が始まる」

「読めない世界、それって……」

「そう……アカシックレコードに大きな乱れが生じる時代、戦乱の世が来るのです、よく覚えていましたね、ピーヌス」


 胸に手を当て、ピーヌスは一礼する。

 そんな彼女へと微笑むウロボロス……。

 二人を、クリム達は見比べていた。


「……え、何か特別な関係なのか?」

「まあ、ね……それでウロボロス様、もはや予言は……」

「ええ、曖昧にしか……ですが、これより向かうべき場所はお伝えできます」


 ウロボロスはそう言うと、西を指さした。

 テルメ村や猫又之国の方向だ。


「テルメ近郊の山岳……そこにある遺跡まで共に向かいましょう」

「あの遺跡に……?」

「はい、そこでカシャとガルムが待っています」

「……何? 父が? そういえば貴女は知り合いだと……」

「ええ、マーナが生きていた頃は三人で語らったものです」


 ガルム、そしてマーナというのは、どうやらルーヴの父母の名らしい。

 猫又之国の女王の名と共に彼らの名が出たことにルーヴは驚くが……。

 ここで止まっているわけにもいかない。

 一行は再度馬車で移動しだす。

 その荷台で揺れに身を任せながら……クリムは握り拳を作っていた。

 憎い、ただブラエドが憎くて仕方がない……。

 あふれ出す怒りが心を焦がしてしまいそうになる。

 その衝動から逃れる術が、今はどこにも見当たらなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ああ、悪い予感が当たってしまった! マルガリタとマキャベルが悲惨な未来に進んでる!?(;▽;) ウロボロス様の予言も確実では無くなり、緊迫感が出て来ましたね! クリムの更なるパワーアップ…
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