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転生先は箱庭ゲーム!? 龍の女帝はただ生きていたい  作者: 光陽亭 暁ユウ
第一部 午刻の章 ―― 龍になった少女 ――
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第二十九話 虚無と憎悪と自己満足

 猫又之国は穏やかな国風を持つ国だ。

 しかし、全てがそうとはいかない。

 物事にはどうしてもピンからキリが存在するのだ。

 ガットネーロ……いや、トコロザワ・ソラはどちらかと言えば、そんな社会におけるキリの方の生まれだった。


「お父さん」

「ああ、ソラ……おはよう」


 父は傭兵、母は主婦。

 そんな小さな家の生まれ。

 裕福ではないが、それなりに幸せな家。

 だがソラは幼い頃から体に一つの問題を抱えていた。

 無痛症。

 ようは痛みがなく汗もかかないという病気だ。

 この病気の何が問題かは単純、身体の異常に気がつかない。

 痛みは体の警鐘という役割を持っている。

 怪我をすれば何故痛いのか、それはここに異常が起きているよと報せるためだ。

 それにより人は怪我にいち早く気づき、適切な対処を行える。

 ではその痛みがなければ……?

 怪我は放置され、時に壊死や炎症といった悪化の一途を辿る。

 病気もまた、発見が遅れて大事に……といったことが起きるのだ。

 そんな体質もあって、怪我の治療などには金がかかることが多く一家は常に金がなかった。


「ごめんね、私の体のせいで」


 両親への罪悪感からだろうか。

 ソラはうつむきがちで、表情も乏しい。

 どちらかというと感情の起伏に欠けた子に育っていった。

 常に暗い気持ちで、物静かで、泣かない笑わない……そんな少女に。

 それでも父母は、そんなソラを優しく抱きしめてくれた。

 体の痛みはなくとも心の痛みは感じるソラに、それは救いだったはずだ。

 だが……。

 ある日のことだった。


「MIA……とは……?」

「作戦行動時行方不明、ということです……言いたくはありませんが、状況からして貴女のご主人はどこかへ……」


 いつも通りに仕事に出かけた父が、いずこかへ消えたのだ。

 敵前逃亡、ミッシングインアクション……。

 そこからソラの幸せは崩れ去った。


「アンタのせいだ!」

「……!!」


 母はその日から、ソラに強く当たるようになったのだ。

 父が逃げたのはお前のせいだ、その無表情気味が悪い。

 罵詈雑言の数々と共に、浴びせられる拳。

 そして母は言った、殴られても表情を変えないお前は普通ではないと。

 だがソラは泣けなかった。

 こうやって言われるのも自分のせいならば、泣くのは筋違いだろう。

 そう考えてこらえたのだ。

 だが……それが逆に母の癪に障ったらしい。


「涙も流せない奴なんて、私の子供じゃない」


 母はそう言い、ソラを部屋に閉じ込めた。

 そして次にドアが開いた日……。

 出迎えたのは母ではなかった。

 ギャング。

 そう名乗る人物。

 ソラは売られたのだ……金のために。


「なんで……?」

「さあな、知らんよ」


 ギャングは淡泊に言い、ソラを突き放す。

 そこから数日、ソラは悲しくて悲しくて……しかし泣けなかった。

 急転直下の人生に、もはや涙を流すことすらできない。

 そんな中、ギャングはソラにこう告げた。


「お前の母は、お前を虚無だと言った」

「虚無……?」

「そうだ、お前は痛みも何も感じない虚無で、不幸を呼ぶ存在だと」


 黒猫族のように不幸を呼ぶ、そして心は虚無。

 そう評されて与えられた名がガットネーロ・ヌッラというコードネームだ。

 痛みを感じぬ虚無の黒猫。

 であればいい暗殺者になるだろうと。


(ああ、そうか……私は虚無だったんだ……)


 母が自分を評した言葉を聞き、急速に心が冷めていくのを感じていた。

 痛みを感じないのは虚無だから、涙が出ないのも虚無だから。

 家族への罪悪感も、いい娘であろうとしていたのも、ただのトレースにすぎなかったんだ。

 そう考えるようになったガットネーロは、心を閉ざして誰も信用しなくなった。

 同時に利己的に、自分のために他者の望む自分を演じるようにもなったのだ。

 そんな状態になったガットネーロは、文句一つ言わず殺しの技術を磨いていった。

 乗馬、弓術、白兵、隠密、そして潜入のための給仕技術など……。

 そうして一年の訓練期間が過ぎ、もうすぐ実戦に投入されるとなったある日だ。


「動くな、衛兵隊だ!」


 突如としてなだれ込む衛兵……。

 王城にギャングの本拠地が報告され、摘発されたのだ。

 だが次々に構成員が捕縛されていく中、何故かガットネーロは拘束されなかった。

 衛兵隊は何故か、ガットネーロが訓練終了間近だと知っていたのだ。

 孤児の保護、という名目で連れて行かれるガットネーロ。

 その姿を見ながらギャングのボスは「そうか、あのアマ最初からこれが目的で……」と呟いていたが、ガットネーロには全く聞こえていなかったようだ。


「お前、名前は?」

「……ソラとか、ガットネーロ・ヌッラとか……」


 保護されたガットネーロは、シライ大臣を名乗る男に引き合わされた。

 20代半ばほどの若い男だ。

 彼に名前を聞かれ、二つの名を名乗るガットネーロ。

 そんな彼女に、大臣は眉一つ動かさない。


「お前は保護観察の身となった」

「そう」

「ふん、しかしだ……お前の持つ技術を殺すのは惜しい」


 技術、というのは暗殺の訓練で培った技術のことだろう。

 それを活かすために、王城で働けというのだ。

 給仕を装い、女王のシークレットサービスとしての護衛、また裏での謀反者の始末などを行う。

 それ以外に暗殺者として技術を培ったガットネーロが生きていく道はないと。

 だがガットネーロは首を縦にも横にも振らない。

 もはや自分も含め、人の生死に興味を無くしていたガットネーロは、このまま死のうがどうでも良いと思っていた。

 だが大臣はこう告げる。


「生きる機会があるならば生きようとするのが普通だ、だからお前もそうするといい」

「……そう」


 普通、ガットネーロには縁遠い言葉だ。

 だが……普通ではないと母に言われたことをふと思い出す。

 そしてこうも思った、普通ではないから母に捨てられたのなら、普通になれれば愛されるのだろうか?

 なんとなく、そうなんとなく……試してみたいと思った。

 故に、ガットネーロは大臣の申し出を呑み、表は四女シライ・ソラとして……裏ではエージェントのガットネーロ・ヌッラとして生きるようになったのだ。


「ただ、給仕として活動する以上……その暗さは直せよ」

「わかった……ううん、分かったッスよ……これでいいッスか?」


 ギャング時代に見た下っ端の口調をトレースし、本来の自分を隠し……。

 しかしそんなある日のことだ。

 何がきっかけだったのかは知らないが、ガットネーロの父が家族を捨てて逃げたことが女王に知られてしまった。

 もしかすると、流石に降って湧いた養女を給仕に勧められるなどというのは怪しすぎて、給仕の素養を見出して採用したものの身辺調査をした、ということなのかもしれない。

 何はともあれ女王はガットネーロの家族に何があったのかを察し、こう言った。


「そのような過去を持ち、父に文句の一つ言いたいとは思わないのですか?」


 父に文句を言いたい。

 そう思ったことはなかった。

 だが女王の真剣な様子に、ガットネーロはこうも考える。


(ああ、そうか……こういう生い立ちなら、文句を言うために追うのが普通か……)


 それが普通なら、そうすべきなのかもしれない。

 ガットネーロはそう考え、養父に相談をした。

 父の後を追ってみたい……と。

 意外にも養父は怒った様子も無く、静かに話を聞いている。

 そして……。


「分かった、好きにしろ、ただし帰ってきたとき王城にお前の場所があると思うな」


 そう言って、ガットネーロを送り出したのだ。

 どういう意図があったのかは分からない。

 養父なりの若干の親心で送り出したのか、技術が期待外れで見限ったのか、はたまたもっと別の理由か。

 何にせよ、これが傭兵ガットネーロの始まりだ。

 そのままガットネーロは、特に当てもなく西へ西へと旅を続けた。

 猫又之国より東は完全に未開の地、傭兵が活動するならそちらではなく西方だと踏んだのだ。

 そうして流れていくうちに……ブラエドにつき、そこで10年戦争にて王国側で雇われる。

 そこで出会ったのが、マルガリタ・セバスだ。


「ガットネーロ! 後退しろ、あとは私が!」

「了解ッスよ」


 お節介焼きで人情に厚い、貴族らしからぬ貴族の女騎士。

 ブラエドでは偏見を持たれている人間以外の種族にも平等に接する高潔な人物。

 しかし、セバス家はかつて彼女の父が敵前逃亡の末に死んだらしく、尊敬という意味を持つ家名とは裏腹に軽視されている。

 もしかすると彼女は、そんな自分とガットネーロを重ねていたのかもしれない。

 それとも他に意図ないし欲があったのか……まあ何はともあれ、彼女はガットネーロに優しかった。

 だからだろうか、こんな女に腹の探り合いなどできっこないだろう……。

 そう考えたガットネーロは、自分の生い立ちを断片的に彼女に話したりもした。

 自分のことのように怒ってくれた彼女を、ガットネーロは今でも忘れてはいない。

 記憶に残る変人として、だが……。

 まあ何はともあれ、そんなガットネーロはある日マルガリタにこう言われた。


「でも……そんな辛い故郷だって、お前には大事な場所だろう? いざとなったら、一度は帰るんだぞ、異邦の地で死ぬよりは百倍良いさ」

(……そうか、そうするのが普通か……)


 彼女の言葉を受け入れたガットネーロは、戦争が終わり仕事がなくなった後……一路故郷を目指すことに決める。

 しかし金もないうえに飢えている彼女が一人で帰郷するのはあまり好ましくないだろう。

 それ故に、ガットネーロは人の良さそうな集団にわざとぶつかった。

 そこからは知っての通りである。


 

「許せん……」


 ガットネーロの生い立ちを聞いたルーヴは、静かに拳を握りしめる。

 全てを話したわけではないが、母にギャングに売られたことなどは話した。

 ルーヴは今回も、自分のことのように怒っている。

 それはガットネーロからすると、どこかで見た反応で……なおかつ、新鮮でもあるようだ。


「なんでそこまで怒ってくれるんスか?」

「我慢がならないからだ! お前の母に、文句を言いに行くぞ!」


 ルーヴはそう言いながら、王城を飛び出していく。

 昔の家の場所を教えたことに関して、失策だったかもしれないとガットネーロは眉をひそめるが、もう遅い。

 ルーヴは一気に走って行ってしまった。

 追いかけるべきかどうすべきか……。

 正直、迷ってしまう。

 だが……自分の蒔いた種だ、放置しては怒られるに違いない。

 そう考え、ガットネーロは渋々後を追うのだった。

 怒りも愛着も、もう無いというのに……何故彼女はこうも怒るのか。

 それを理解できないままに……。


 その頃、ルーヴはかつてガットネーロが……いや、トコロザワ・ソラが暮らしていた家に到着していた。

 トコロザワという表札を確認し、意を決してドアをノックする。

 そして……。


「はい、どちら様ですか……?」

「……!」


 応対に出てきた、やつれた三毛猫獣人の女性にルーヴは言葉を失った。

 部屋の中は荒れ放題で、とてもではないが娘を売った金で裕福している女とは思えない。


「……ガットネ……いや、ソラの旅仲間で、今は姉妹をさせていただいている者だ」

「……! あの子の……ここへ来たということは、私の所業を聞いたのでしょう、どうぞ中へ……」


 驚愕しつつも、穏やかに中へと案内する母……。

 その姿に、ルーヴは握り拳をほどいてしまう。

 どうしても、この女がガットネーロの言う酷いことをした母とは思えないのだ。


「あなたは……真意が分からない、どういう意図があって……あの子に酷いことをしたんだ」

「それは……夫が逃げたきっかけに遡ります」


 女性はそう言うと、自らの痩せ細った腕を指さした。

 ガリガリで、毛並みはボロボロ……とてもではないがガットネーロの母とは思えない。

 座布団に座り込んだ脚など、もう折れてしまいそうだ。

 

「その毛並みは……」

「はい、お察しの通り私は病気を持っています、夫の負担になっていたのは私もなんです……夫は、それに耐えきれずに逃げた」

「だ、だが……それが彼女のこととどう関係するんだ!」


 もしかすると、病気のつらさから当たったのではないか。

 そう考えたルーヴは声を荒らげる。

 しかし、彼女は目を細めると笑みを浮かべた。


「私では彼女を育てきれなかったのです、ですから私は彼女をギャングに……育てれば輝く逸材として売りました、そしてその金で大臣に賄賂を……」

「賄賂……?」

「一年の訓練を行うという約束でしたから、その終了後、一人でも生きていく力を得たところで摘発を行って欲しいと」


 そう、ギャングのボスが言っていた「あのアマ」とは彼女のこと。

 彼女は娘に力を与えるだけ与えて、そのうえで手は汚させずに解放するためにマッチポンプを仕組んだのだ。

 結果、ガットネーロは一人でも生きていけるだけの力を得たうえで王城に勤めるようになった。

 もっとも、王城で汚れ仕事をしていたので、全て母の思惑通りとはいかなかったのだが……。


「だが……だが、なら何故あの子にキツく当たった!?」

「私は、病で長くありません、愛されたままなら……死ぬときあの子を苦しめる、あの子と離れなんとか生きていますが……きっと二人分の金を稼ぐために働けば、一年もせずにあの子の前で死んでいたでしょう」

「……苦し、める……」

「苦しませるくらいなら、憎まれて……あんな親死んで清々した、そう思われるのが一番だと思ったのです」


 彼女の言うことに、心当たりがないわけではない。

 ルーヴの母も病死だった。

 愛する彼女が死んだとき、ルーヴは三日三晩泣いたのだ。

 愛する人が亡くなる悲しさはよく分かる。

 だが、だからといって憎ませて苦しまなくするなんて……。

 そう考えるが……言葉が出てこない。

 何を言えばいいのか分からない。

 そう思っていると……突如、部屋のふすまが乱暴に開けられた。


「……」

「ガット……ネーロ……」

「ソラ……なの?」


 母の問いかけに、ガットネーロは厳しい目を向ける。

 その表情はいつもの張り付いた笑顔でも、それは剥がれたときの虚無でもない。

 今まで見たことのない、憎悪に満ちた顔だ。


「ふざけるな」

「……」

「ふざけるな! そんな言葉で、アンタは私に与えた痛みを正当化するのか!?」


 痛みを得た、そして感情を殺して生きるようになった。

 そのきっかけは、行き場のない痛みと憎悪から目を逸らすため……そういう面も有ったのだ。

 もしかしたら、憎みたくなかったのかもしれない。

 憎んでしまえば辛くなる。

 苦しみしか待っていない。

 しかし……もうそんなことはどうでも良かった。

 母の言葉を聞いた瞬間、ガットネーロは憎しみを抑えきれなくなったのだ。

 目を逸らしていた感情に、嫌でも向き合うことになってしまった。


「ソラ……」

「私はもう、そんな名前じゃない、ガットネーロって呼ばれてる、アンタが捨てたせいで得た名前だ」

「……」

「アンタの、アンタの自己満足で……どれだけ心を痛めたか……私の唯一感じる痛みを、どれだけ……でも、ずっと目を逸らして、なのにアンタはそうやって私の痛みをまたぶりかえさせて、私を苦しめるんだ!」


 自己満足、その言葉に母は目を逸らす。

 確かにそうだったのかもしれない。

 最期まで傍に居られたら、ソラは一時泣いても前を向けただろう。

 きっと心の痛みから目を逸らさず、真っ当に生きることができたはずだ。

 その可能性から目を背け、苦しめたくないからと言って嫌われようとする行いは、むしろ自らが残していく痛みから逃げるために行った行動かもしれない。

 そう考えると、自己満足呼ばわりは仕方がないことだろう。


「アンタなんか……死んじまえ!!!」

「ガットネーロ!!!」

「……」


 叫び、走り出すガットネーロ。

 その背にルーヴは手を伸ばし、泣きそうな顔で追いかけようとする。

 しかし、母が気になって足を止めた。

 確かに彼女の行動は自己満足に近い。

 だが、夫に逃げられ病で先が長くないと自覚した母が、冷静に行動などできるだろうか?

 錯乱して軽率な行動に出てしまったことを、ルーヴはどうしても責められない。


「良いんです、これが私の罪に対する罰なのでしょう」

「……」

「私はもうあの子に必要ありませんから、貴女が傍に居てあげてください」

「……ああ、言われなくとも……あたしはあの子の姉だから……一生大事にするよ」


 一礼し、ルーヴはガットネーロを追う。

 その背中を、母は立ち上がりじっと見つめていた。


「なんなんだよ……ッ!」

「ガットネーロ……」


 追いついたルーヴに、ガットネーロは振り返って縋り付く。

 そして胸に顔を埋めると体を震わせ始めた。


「わけわかんなすぎて、泣けもしねえよ……!」

「……」


 どう言葉をかけていいか分からない。

 何も分からない、何が正解なのか。

 母の自己満足を知り、ガットネーロが憎悪を取り戻したのは自分のせいだ。

 だが……それがなければ、ガットネーロは生涯感情を出すことができないままだっただろう。

 ならばこの憎しみも怒りも、正解なのかもしれない。


「なあ、お姉ちゃん……私は、どうすればいい……?」

「……」


 問いかけるガットネーロ。

 そんな彼女に、ルーヴは……。


「……まだ何もしなくてもいい」


 ただ、優しく抱きしめてあげた。

 何もしなくてもいい、どうしようもなくていい、何が正しいか分からなくてもいい。

 怒りの行き場も、憎しみのやり場も、母の是非も……全ては分からないままだ。

 けれど、しょうがないことなのだろう。


「どうするか探していこう、どれもすぐ答えの出ることじゃないから……」

「探す……?」

「ああ、長い人生だし、一緒にさ……お姉ちゃんがずっと一緒だから」


 頭を撫でるルーヴに、ガットネーロも笑みを返す。

 そして二人は、見つめ合った。

 静かに、ただ静かに……。


「……ガットネーロ?」

「え……?」


 そんな二人に、後ろからかけられる声。

 振り返ると、そこにはマルガリタとマキャベルがいた。


「やっぱりガットネーロ! 心配してたけど、無事に着いていたんだな!」

「お、ルーヴくんいるじゃーん、おいーっす」


 子犬のように近寄ってくる二人に、ルーヴ達は顔を見合わせる。

 そして、すっかり真面目な雰囲気ではなくなったな……と笑うのだった。



 その頃、クリムとピーヌスは女王カシャと謁見し、自分達のことについて話していた。

 クリムは異世界から来たばかりと言うこと、そしてピーヌスは遺跡の中の龍玉と同化して龍になったこと……。

 国にとっての禁足地に無断に入られたことに関しては若干ムッとしていたが……。

 しかしその禁足地自体が二人を呼び、しかもそこに有る神の遺物とされるものが宿った以上文句は言えない。

 それどころか、カシャには二人が神に通じる者と、神を宿した現人神にすら思えてきた。


「なるほど……経緯は把握いたしました、改めて歓迎いたしましょう、龍人様」

「ご丁寧にどうもありがとうございます」


 互いに頭を下げ合う三人。

 そんな中、クリムは「怒られなくて良かった」と内心安堵する。

 もしこれで、犯罪にでもなったら大変だった。


「お二人は、今後はどうなさるつもりですか?」

「ここへはガットちゃん……ああ、ソラちゃんを送りに来た関係で来たので、特に今後の予定はまだありませんね」


 ピーヌスの説明を聞き、クリムはそういえば次の予定が無いんだなと考え込む。

 この国を見て回ったとして、次はどうするか……。

 東の更に奥、未開地だとされる場所に向かうも良し。

 ここから北上して北部の国家を巡るも良しだろう……。

 しかし西へ戻るのは選択肢にはない。

 何故ならブラエドとは関わりたくないからだ。

 5年後の戦争で敗死する運命、それを変えるべく関わらない。

 というのもあるし、これまでの旅路で良いイメージが無いというのもある。


(大概のトラブルがブラエド絡みだもんなあ……)


 いっそ、海を越えてしまうのも有りかもしれない。

 そんなことをクリムが考えていると……。

 ふと、良い匂いが漂ってきた。

 美味しそうな和食の香りだ。


「何はともあれ、こちらでお食事を用意させていただきました、よろしければ今宵は仲間の方共々お召し上がりください」

「よろしいのですか? ありがとうございます!」


 一礼し、食事に顔を輝かせるクリム。

 今後どうするかは食べてから考えよう。

 そう考え、クリムは次の目標という議題を明後日に放り出す。

 だがクリムは知る由もなかった……。

 新しい目標は自らそばに……しかも、クリムが最も望まないものが近付いてきていることを。

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