表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生先は箱庭ゲーム!? 龍の女帝はただ生きていたい  作者: 光陽亭 暁ユウ
第一部 午刻の章 ―― 龍になった少女 ――
21/157

第二十話 遺跡の底へ

「あ、ピーヌスさんだ、でもまだ全裸ッスね」

「確かに全裸だ、服は買わなかったのか?」


 意気揚々と遺跡へ向かうその途中……。

 ガットネーロとルーヴに指をさされ、ピーヌスは咄嗟に胸を隠した。

 どうやら二人は祭りを楽しんでいる最中らしい。

 手には祭りで売られているスパイスワインや串焼きを持っている。


「全裸言うな! 意識しちゃって恥ずかしくなるじゃない!」

「その……私達の分のお金じゃローブを買うには足りなくて」

「そうか……貸そうか、アタシの分の金も」

「良いわよ、私達これから発掘を手伝うの」


 発掘を手伝う、そう聞いてルーヴとガットネーロは顔を見合わせる。

 そして、もう一度クリム達に視線を向けた。

 まるで「その体で発掘なんていう精密作業ができんのか」と言わんばかりだ。

 露骨に失礼な態度に、ピーヌスのみならずクリムも少しムッとしてしまう。


「行きましょ、クリムちゃん!」

「はい、ピーヌスちゃん!」


 二人は顔を見合わせ、腕を組んで歩き出す。

 その露骨すぎるすね方に、ルーヴとガットネーロは肩をすくめるのだった。

 二人も何だかんだで、まだ14と17の子供だということなのだろう。

 この年頃は、一度すねると意地になってしまうものなのだ。


「どうしましょ、追うッスか?」

「まあ……遅ければ迎えに行くくらいでいいだろう」


 スパイスワインを煽り、息を吐くルーヴ。

 その隣で、ガットネーロも「そッスね」と言いながらワインを一杯飲むのだった。



「そういえば、発掘員詰め所ってどっちなのかしら」

「あ、確かに私達知りませんね」

「どうしようかしら、このまま行ったら盗掘になっちゃうし……」


 遺跡を眺めながら、クリム達は目を細める。

 今更ながら詰め所の場所を知らないのだ。

 装具屋のようにわかりやすい看板があるならまだしも、詰め所にそんなものはない。

 果たしてもっと奥なのか、村の入り口側なのか……。

 迷いに迷い、二人は立ち往生してしまう。

 当然、大きな図体でそんなことをしていれば見事に邪魔なのだが。

 邪魔ということは、目立つということだ。

 そんな彼女達に、一人の男が近付いてきた。


「おお、こんなところにいたか!」

「え?」

「話にあった、発掘仕事を手伝ってくれる協力者だろう?」


 協力者……そう言いながら男は腕を組む。

 当然二人には覚えがない話だ。

 いったい何のことだというのだろうか。

 二人は思わず首をかしげてしまう。


「異種族で、翼のある二人組! まさにお前らだ!」

「え、いや、知らないけど……」

「おっ? ケラススの姉さんはあとで二人に伝えておくって言ってたが……」


 ケラスス、そう聞いて二人は顔を見合わせる。

 もしかすると、ケラススがこの事態を見越して話を通してくれていたのかもしれない。

 だとすれば、このままついていって良いだろう。

 そう考え、二人はうなずき合う。

 そして男の方に向き直った。


「なるほど、ケラススさんならたぶん私達だと思います」

「そうね、たぶんだけれど」

「おう、ならさっそく来てくれ!」


 男に連れられ、二人は遺跡の方へと進んでいく。

 ルージュ村の墓所や龍の墓と同じ1000年前の様式だ。

 もう見慣れたといっても過言ではないが……。

 だが、様式に関しては見慣れても、その大きさが見慣れない。

 兎にも角にも広いのだ。


「す、凄い……!」

「おっと、広いのは横にだけじゃないぞ、縦にも長いんだよここは」


 縦に長い……そう、つまりこの遺跡は最下部から広大な地下に繋がっているのだ。

 その広さときたら、地下都市と言って相違ないレベルだろう。


「だがな……今日ようやく地下都市を見つけたはいいんだが、どうも地下都市の地面と天井が離れすぎてるんだよ」

「地面と天井が?」

「おう、で……この遺跡の最下部は天井に繋がっている」


 男はそう言うと、頭を掻いて肩をすくめた。

 そこまで言われれば、発掘に関しては素人の二人でも何故翼が必要か分かる。

 ようは翼がないと降りられないのだ。

 それ故に、翼がある種族に発掘協力者としてお呼びがかかった。

 分かりやすい話だ。


「分かったわ、じゃあ私達はその地下都市に降りて中を探れば良いのね」

「おう、頼めるか?」


 男の言葉にうなずき、二人は中に入っていく。

 地下都市への入り口は、遺跡の中に掘り進められた穴を降りていけば見えてくるらしい。

 迷うことは無さそうだ、そう安堵しながらクリムは穴の中を進んでいくのだった。


 数分後……。


 遺跡の入り口には、一組の女達が来ていた。

 人型で二足歩行をする鳥……そんな見た目を持つ種族、鳥人の女達だ。

 年上と思しきタカと、年下と思しきコマドリ。

 そんな見た目の二人組が、遺跡へと飛んでくる。

 彼女らは着地すると、作業員の一人に話しかけた。


「遺跡発掘への手伝いが必要と聞いたんだけど」

「ん? 変だな……親方がさっき、手伝いの人を連れて行ってたぞ?」

「はあ? んなわけねーだろ、アタイらが手伝いって話だぞ」


 作業員の男はどうやら、クリム達が案内されるのを見ていたらしい。

 だが当然女達の側としてはそんなことはあり得ない話だ。

 年上と思しきタカは翼を組み、不機嫌そうな顔をした。

 そんな彼女の隣で、コマドリが首を左右に振る。


「……めんどくさい、別にさ、誰か行ったならいいじゃん……帰って寝よ」

「チッ……ここまで歩いてくる時間で何度練習ができたと思ってるんだ、そしてまだ寝るのは許さんぞ、帰ったら練習の続きだ!」


 怒鳴りながら翼を振るうタカの鳥人、そんな彼女に辟易するコマドリの鳥人。

 去って行く二人の後ろ姿を見つめながら、作業員は首をかしげる。

 そして遺跡を見やると「何か起きやしないよな」と息を吐くのだった。



「えーと、これが地下都市かしら……」

「そうみたいですね……大分深いなあ……」


 火を投げても禄に見えないくらい深い穴……。

 その中に、地下都市は存在する。

 恐らく作業員の中に夜目が利く種族の者がいたから、都市があると分かったのだろう。

 でなければただの穴としか思わない深さだ。


「大丈夫、怖くない?」

「え、ええ……」


 息を呑み、意を決して降り始めるクリム。

 その右隣でピーヌスも降下し始める。

 正直に言えばかなり怖いのだが、これが与えられた仕事ならばやらないわけにはいかない。

 そう考えながら、暗い穴をひたすら降りていく……。


(底が全然見えない……まるで大きな口だ)


 いつ底に辿り着くのか、そう考えながら三十分ほど降りていく……。

 ゆっくり、ゆっくりと……。

 下は何も無いのではないか、上に戻れないのではないかと内心不安を抱きながら……。

 そんな中、ピーヌスが突如クリムに抱きついた。


「ひあっ……!? な、何を……?」


 思わず変な声を上げてしまうクリム。

 そんな彼女に、ピーヌスは恥ずかしそうに目を細めた。


「ご、ごめんなさい、ちょっとバランスが崩れちゃったわ」

「な、なんだ……ビックリした……」


 ほっと息を吐くクリム。

 そのまま、再度二人は降下を開始する。

 そして、十分程たった後……。

 ふとクリムの左肩にまた何かが触れた。


「わわ、またバランス崩れちゃいましたか?」

「……」


 問いかけるクリム、だが答えはない。

 そのまま先ほどピーヌスがいた方向を向こうとするが。

 しかしその時、クリムは思った。

先ほどピーヌスがいたのは、右側ではなかったかと。

 では……今左側にいるのは、いったい……?


「……あの、私の左側……何が……」

「……それは、その……」


 クリムの問いに、明確な答えはない。

 ピーヌスはいったい何を見ているのか。

 恐怖のあまりクリムは動きを止めてしまう。

 そして、意を決するように後ろを見て……。


「これ、は……!?」


 肩に掛かっていた、干からびた蛇の抜け殻に声にならない悲鳴を上げるのだった。

 白い蛇の抜け殻……それも異常に大きなもの。

 果たして、上からいたずらに投げられたのか、それともどこかにかかっていたのか。

 明確なことは何一つ分からない、何故ここにあるのかも分からない。

 そんな謎の物体にクリムはパニックを起こし、ここまでの慎重さはどこやら、一気に底へと飛んでいくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ