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備忘録 笛吹きペテン師

作者: 西田啓佑


 MMT理論にしろ、民間銀行引き受けの国債発行による景気浮揚にしろ、欠陥理論である。

 理由はなぜか?


 これらの理論は、すべて実験室内での仮定でしかない。そう断ずる事のできる最大の要因は国際的な枠組み、単純化すれば外交を無視しているからだ。


 しかも、この国際的な枠組みは、国家間外交だけではない。このような通常の外交なら、窓口が存在し、そこに交渉を仕掛ければ対策可能である。では、それが国家に依存しない組織ならばどうだろう?


 答えは、攻略不能である。


 世の中には、攻略不能な組織はいくらでもある。あのトランプですら、ファーウェイ問題の時に中国資本とそれに連なる勢力と対立し、敗北した。


 そして、世の中にはそれよりももっと明確で、国際インフラを人質にできる組織が存在する。BIS規制を敷いているBIS(Bank for International Settlements=国際決済銀行)だ。


 この組織の最大に厄介な点は、あくまで中間協力を行っているだけ。という建前がある点である。別に、各国の中央銀行を統制しているわけではないのだ。世界銀行やIMFと同じだ。というか、これらのいくつもある国際組織の軒先を借りて、中央銀行と経済を媒介として各国に内政干渉を行うことのできる体制を構築、維持している「民意に依らない集団」が存在している。という点が、最大に厄介な点なのだ。

 ノリとしては、政治的な責任のない学者が、学説や仮説を盾に政治に介入するのと同じである。

 わかりやすく言えば、竹中平蔵や高橋洋一といえば、想像しやすいだろうか?

 世の中には、そういう連中が掃いて捨てるほどいる。


 さて、信用創造を乱用して消費税を廃止すればよいと考える勢力が、とある男を中心に、民衆を扇動して政界に殴り込みを掛けている。


 私自身は、信用創造を用い財政拡大による福祉や経済の充実は、経済の正道なので大いにやるべきだと思う。この文章のネタ本である「円の支配者」の論旨もそこから大きくは外れない。


 しかし、それを行えばどんなリスクが発生し、誰を敵に回し、誰と競わねばならぬか?それぐらいは説明すべきなのだ。くだんの政治家は意志の共有が必要だという。ならば、その意思を持つための覚悟が必要になる。それを持つかどうか判断するには、明確なリスクの説明が必要なのだ。


 さて、ここまでの文章で、非常に簡単かつ大雑把ながら、国際金融秩序を無視した経済・外交政策を行おうとすれば大きな反発とリスクを招くことは理解できたと思う。私の言葉が信用できないならば、今に至るブレグジットの混乱や、アジア通貨危機を調べればよい。なお、ギリシャ危機はあくまでもEUの地方自治体同然のギリシャでの出来事なので、これよりも凶悪な話であるが、大筋で当てはまらない。ただ、経済を盾にされた内政干渉という構図ではよりエスカレートしたモノだろうと推察できる。


 ちなみに、くだんの政治家はギリシャ危機に大いに関心があるらしい。そういう意味では、自分たちの政策が誰を敵に回すことになるのか、明確に理解していると見てよい。

 問題は、それを黙っていることだ。ポピュリズムではなく、民主主義だというのなら、そこは述べるべきだ。


閑話休題



 さて、ではここらが本題である。


 「預金準備率が決まっているのなら、いくらまでのお金が消費税廃止に使えるのか、計算してきたんですよね?貴方。それ、わかんなければ議論進まないいじゃないですか」


 という、完全にこっちの議論の趣旨を無視した暴論をぶつけてきたペテン師に対する反論を兼ねて、預金準備率の内訳について書いてみようと思う。


  なお、このセリフを聞いたとき、この政治家、割とマジで破滅すればいいのにと思った。完全に、数字を持ってない人間に対するマウント取りである。民衆の政治参入を謳う人間が、専門知識・行政情報を持たない人間の政治参加お断りを実践したわけだ。


 それはともかく。

 資料は日銀が発表しているものと、BIS規制の内訳としてwikiに公表されているデータを用いたいと思う。

 ちなみに、wikiの資料元は

”藤田勉 野崎浩成 『バーゼルIIIは日本の金融機関をどう変えるか』 日本経済新聞出版社 2011年 P 250”

 と、なるそうである。


 wikiコピペを避けるために、箇条書きによるTierの解説は避けたいと思う。詳しくは「国際決済銀行= https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%B1%BA%E6%B8%88%E9%8A%80%E8%A1%8C#cite_note-26 」こちらのリンクをご覧いただきたい。

 

 そして、

 日経新聞= https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46864880S9A700C1EA2000/ によると、消費税による税収は17.7兆円。億単位で書くと、177,000億円


 準備預金残高見込みは日々変動しているが、東京短資株式会社のヒストリカルデータでは、18/01/04日で3,267,000億円、18/12/28日で3,385,000億円。


 そして、2019年11月29日の時点での超過準備金が3,525,400億円。ほとんど超過金なので、消費税廃止の財源に国債使うの余裕に見える。まあ、そこは同意する。


 ここから一生懸命調べた数字が意味のなくなる話をする。

 俺に数字の提示を求めたあのペテン師政治家は割と真面目に破滅すればよいと思う。


 もしも、消費税の財源を全額、日銀の公表している準備預金残高に国債を引受させて賄うとしたら、超過金に限ったとしてもだいたい20年分も引受させるまでは、準備預金は枯渇しないわけである。もちろん、これは純粋な支出ではなく資産なので問題ないかもしれない。

 ただ、国債発行は当然ながら消費税以外にも存在し、その金額は風説によっては100兆円だそうである。調べるの面倒くさい。合計120兆円だろうか?これを毎年発行し続ける事になるわけだ。ただ、国債は毎年発行されると同時に、当然償還もされるので、その収支がプラマイゼロに近しいと仮定すれば最大20年。国債の発行と償還のバランスが悪化すればそれより短い。という言い方になると思う。

 ただ、結構ぎりぎりの家計で、ちゃんと収支確認して生活している人間ならわかると思うが、借金の増える瞬間というのは一気に増える。徐々には増えない。超過金に手を付けること前提の政策とか、バカ丸出しと言われても文句は言えないだろう。


 誰かの借金は誰かの収入なのだろうが、借金はそのままリスクなのだ。このリスクは告知したうえで受け入れを合意形成する必要はある。


 ちなみに、国債でほかの金融商品を購入できるという話は聞いたことがないので、それができない以上、準備預金の本来の目的である、預金引き出しに対する準備金という役割は果たせないだろう。

 

 そう、準備預金はそもそも余剰資金やM資金的なへそくりではない。本来は預金に対する準備のためにプールするお金なのだ。この事は、バーゼル1の規制が発効された1993年はバブル崩壊期の終わりごろとしても記憶されている年に、日本が実体験して学んだ教訓だったはずである。

 あのバカ政治家はそんなことも知らないだろうが。


 「誰かの借金は誰かの収入」というのは、債権が「不良債権としてカウントされない」間の話である。ぶっちゃけ、このカウントするしないは完全に金融屋や財務官僚の胸先三寸と政策の行方に左右される不安定なものである。

 くだんの政治家の大好きな、反原発の例で挙げればわかりやすいだろうか?

 電力会社の帳簿においては原発事業に利用されてきた施設はすべて資産として計上されている。もしも、反原発が達成され原子力発電が違法もしくは廃止となれば、これらの施設は解体を視野に入れた不良債権になる。解体費用も新たに負債として計上されるだろう。莫大な不良債権であり、新たな経済崩壊の引き金にもなるかもしれない。消費税廃止どころのインパクトではないだろう。


 私は、それでも原発は廃止して原子力発電という政策は撤回する必要があると思う。


 とはいえ、それを実施できるかどうかも、銀行の準備預金がしっかり積み立てられているかどうか?にかかっている。あのバカとそれと共犯関係にある経済学者どもは、銀行にカネが積みあがっている。だからカネを出せばよいと言う。


 事はそんなに単純な話ではない。


 バブル崩壊は、運が悪かったから起きたのではない。


 明確な理由がある。


 それは「円の支配者」に書かれているので、詳細はそちらを読んで欲しいが、かいつまんで書けば以下のようになる。


 地価の高騰と経済の過熱により景気が加速するも、過度なインフレによる経済混乱を避けるために、三重野日銀主導で、総量規制と金融引き締めが行われ、地価の下落とともに土地を担保とした債権(銀行の資産)が一気に不良債権化した。


 この不良債権による破綻回避と債権回収、経営再建が、日本の20年以上に及ぶデフレと、ペテン師が言う地獄のスタート地点である。


 もう一度書く

 「誰かの借金は誰かの収入」

 だから、借金は問題ない。というのは「借金が不良債権化しない」という妄想の産物である。国債ならリスクゼロだから不良債権化しないだろ?

 というのも、バカの理屈である。

 確かに、国民国家一国の国内で見れば、その理屈は正しい。

 さて、ここで問題になるのは、誰がバブル崩壊の引き金を引いたか?

 である。その答えはもう一度書くが、「円の支配者」に書いてある。

 三重野日銀であろうか?

 地価高騰と所得格差に苦しんだ国民の民意だろうか?


 ちがう。冒頭に書いた

 BIS(Bank for International Settlements=国際決済銀行)

 である。

 ちなみに、アジア通貨危機はIMFだったりする。

 国家の束縛を逃れた金融屋と一部の人文学者、それらを支える富豪とでも言えばいいだろうか?彼らが引き金を引いたと言っていいだろう。動機はわからない。善意かもしれないし、積極的な内政干渉という悪意だったかもしれない。推測はできても確証はない。あくまもで本人たちの誠実な証言無しにはわからない事なのだ。


 ぶっちゃけ、今の日本の民間銀行と日銀が、そして企業が、とんでもない額の内部留保や準備預金を積み立てているのにも理由はあるのだ。

 ようは、次の経済危機に備えているのある。保身といえばそれまでだが、理不尽なリスクとジャッジにさらされる身としては本能的な行動と言える。

 それで景気対策や福祉がおざなりになるのだから、私のような人間からしたら厄介極まりない話ではある。


 なお、景気回復の手段は国債発行による消費税廃止というバカ丸出しの強引な手段のほかにもある。

 一つは、民間銀行の貸し出し増加だ。バブル崩壊前に取りやめた窓口指導でも復活させて、不良債権化覚悟で銀行にカネを貸しまくるように指示すればよいのである。もちろん、バブルまっしぐらなのは言うまでも出ないが、ここまでデフレが進んでいるのなら、問題ないかもしれない。

 預金準備率はあくまでも貸し出し額に対する準備金の比率である。貸出額が増えれば、法定準備金額も増える。そしてそれが増えれば、超過金を無理に国債にしなくとも超過金も法定準備にカウントされるようになるのである。

 そして、それが本来の正常な経済の仕組みである。


 とはいえ、有望な貸出先がないのに不良債権化をみこしてカネを貸し出せと、民間銀行に窓口指導するのは暴挙だろう。なので、有望な投資先がないのなら、結局は国債を発行し、公共事業で福祉やインフラを整備するしかなくなる。


 さて、そうなった場合、「日本政府の借金は日本国民の収入」になる。

 まさに、どっかのバカとその共犯者である日本の経済学者の言う「誰かの借金は誰かの収入」である。

 そして、この言葉の後には、当然ながら「借金が不良債権化しないかぎりは」という但し書きがつく。


 で、この本題の結論なのだが、それは「国民国家の政府の借金が不良債権であるかどうかを誰が判断するのか?」という話である。


 ここで、冒頭の結論に戻る。


 つまり、国家の借金のジャッジは外交と国際金融のやり取りによって行われるのである。

 よって、国際情勢や地政学を加味しない経済理論は「実験室内での仮説」でしかないのである。


 1988年のバーゼル1を使ったBISによる日本のバブル崩壊も、IMFによるアジア通貨危機も、こういう仕組みによって発生しているものである。

 当時の経営者か銀行屋はこのような引き金に対して「サッカーをしていると思ったら野球をさせられていた」みたいな感じの皮肉を言っていたと私は記憶している。もしかしたら、サッカーと野球が逆かもしれないが、もうよく覚えていない。


 くだんの笛吹ペテン師は、こういうリスクを一切説明することなく、日本国民をアベノミクスとは別方向の破滅に導こうとしている。アベノミクスも破滅への道だし、くだんのペテン師も結局は、破滅への道でしかない。


 重要なのは、自分の立ち位置とリスクの説明である。そのうえで、どこに向かうのか?

 それを説明できる政治家こそが求められている。


 ちなみに、私個人としては、信用創造による通貨発行権を中央銀行から政府に取り戻し、世界を敵に回してでもベーシックインカムと経済成長を実施するのが政治の正道だと思っている。


 ただ、やはり、それを行うならばそのリスクと、誰を敵に回すのかをしっかり説明して、国民の間で合意形成をしっかり行うのが、民主主義の正道だと思う。


 「誰かの借金は誰かの収入」である。しかし「借金が不良債権化」すればそれはただの負債である。返済されない借金はただの損失である。

 

 私は、消費税は廃止すべきだと思うし、それ以前に消費税のあるなしに関係なく、ベーシックインカムを実現すべきだと思う。

 しかし、これらの目的なしに、ただ「消費税を廃止して国債を発行すればよい」とうそぶくペテン師は、合法的な銀行強盗を狙う破落戸のようなものである。確かに、犯罪者ではない。しかし、ペテン師である。


 「誰かの借金は誰かの収入」である。しかし「借金が不良債権化」すればそれはただの負債である。

 そして、国の債権が不良債権かどうか決めるのは、外交の結果と国際金融取引の結果でしかない。経済学者のトンチ論文など便所紙以下の価値しかないのだ。

 

最後まで読んでいただいてありがとうございます


ちなみに、国の債権が不良債権化したらどうなるかって?


ベルサイユ体制下のドイツでも見ればいいと思うよ。

国のインフラが崩壊して生産力がなくなるような状態にならなければ、そんな事態にはならない。というのがあのバカの持論だけど。世の中に絶対なんてないよ。


国際社会が、日本に返済能力なし。ないしは、日本に価値無し。と判断すれば、途端に同じ状況になるだろうね。経済というのは、そういうものです。そういう理不尽なジャッジと戦う意思はみなさんにありますか?って話です


少なくとも、あのバカとその共犯の経済学者には無いだろうね



追記

 バブル崩壊の遠因の一つに、この時代の帳簿作成ルールが欧米と日本で違っていて、それを欧米に合わせる事で、いろんな影響が出たというのを覚えているのだが、うろ覚えなうえに、名前を憶えていないので調べようがなかったです。知っている人は、調べてみると面白いと思いますよ

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