0 銀陽の目覚め
うへー、お読みいただき光栄です、、、
-そこは、ヴェータの神殿からさらに奥に進んだ深い森。
また誰かが呼んでいる。
やわらかい日が私の頬を撫でる。
緑の匂いがする、風の音が聞こえる。
この森は良い、実に素晴らしい。
眠るのには最適なんじゃあないだろうか。
煩いモノも、厄介事も寄ってこない。
たまに呼び掛けてくる奴に答えてやればいいだけだ。
緑深き聖域の森の奥深くに佇む古龍の骸。
古龍の骸を基に築き上げた城の塔のてっぺんは雲を突き抜け、容赦なく吹き付ける冷たい風をごうごうと受けている。
銀陽の魔女、ジルの部屋はその塔の最上階にあった。
んー、まだ眠たい。
もう少し。
此処よりもっと遠い所が、私の最初の記憶だ。
幼いころ、あの人と暮らしていた頃からよく見ていた夢。
きっとそこが私の生まれた場所なのだろうと、なんだかよく分からないけれどそんな気がしていた。
暗くて何も見えない、だけどなんだか暖かいもので溢れていて‐
どうやらそれは、私の心の臓からも溢れ出でいるようでなんだか不思議な感じだった。
そのことに気付くのはあの人の元に来てからなのだが-
嗚呼、久しぶりに目を覚ましたせいか考え込んでしまったな。
風を浴びよう。
指を一振り魔法で窓を開けて、窓枠にもたれる。
遥か彼方の空の終わりを見ながら思う、アルカナは本当に美しい。
ふと、耳をすませば風に乗って祈る声が聞こえた。
あの人の一族が建てた神殿の古木にたまに訪れる、老いた人間の魔法使いであった。
彼はよく「銀陽の魔女」に話しかけていて、寝ている間も彼の祈りは聞こえていた。
同時にジルは彼の魔力が年々弱くなっていくのを感じ取っていた。
「もう、いいのに。」
そう呟きながら人差し指で花の文様を描き空中に放つ。
銀色の文様が空気の中に染み込んでゆく。
もう慣れたものだ。
これはあの人から習った、とても大切な古い魔法だ。
銀陽の魔女は微笑みながら夕日に染まる空の彼方を見つめていた。
✱
そうして日が沈みかけた頃、
『ジル様ー。』
ぱたぱたぱた。
部屋の窓に魔獣が近付いてくる。
兎のような姿をした子が羽を動かしながらこちらに。
たしか側近の使い魔だったような。
かわいい。うん。
『ジル様~、起きてますかー?ちょっとー、流石に起きて欲しいですー。もう手に負えませんー。』
「…ん、起きてる。どした?」
こてんと着地し、ベッドの側で主の声を発生する使い魔。
『ああ!よかった!あ、いえすみません。ええとですね、ジル様がお休みになられてからもう100年経ちましたでしょうー?ですから、もうここと外の均衡が崩れ始めているんですー。流石に我々の手には負えなくなってしまったのでー。それとそれと、神殿によく人間の魔法使いが来てましてですねー』
「ああ、それなら知っているよ。」
こくこくと、頷くうさぎちゃん。
『何かあったんでしょうかー?』
「いや、気にすることないよ。あーそれと、私夜には塔から降りるから。」
『かしこまりましたー!』
溢れだす言葉を紡ぎ終えたうさぎちゃんは未だに口をぱくぱくさせていた。
そして大人しくなるうさぎちゃん。
ジルは指を一振りして空中から菜っ葉を出し、うさぎちゃんに与える。
うさぎちゃんは菜っ葉を受け取り、耳を動かしてジルに礼を伝えるとまた窓から帰っていった。
指をひと振り窓を閉め、黒いシャツに赤いタイを巻いて黒いローブを羽織る。
ローブに広がる銀色の髪はジル自身もすごく気に入っていた。
術に使うと効果抜群なのだ!
そうしてジルはすうーと息を吸い、転移の術をかけた。
ありがたき、、、




