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赫銀伝記-炎氷の天狐-  作者: IOPOQ
魔女の城
12/22

10 子狐と銀陽の朝



子狐が目を覚ましてから1週間が経った。


冬の朝のピリッとした冷たい空気がジルをベッドに留まらせる。

思わず身を縮こませて寝返りを打つと、隣で寝ている子狐の炎色の耳がぴくっと動いた。


「ん…ジル様…」

「すまない、起こしたか。」


ジルは子狐を抱き寄せて頭を撫でてやる。

撫でながら魔力も注いでやる。


「…ジル様は今日もぽかぽかですねえー。」


ぐるぐるぐる。

ルグランは嬉しそうに言って喉を鳴らした。

ジルが天井に手を翳すと遮蔽が解かれ、朝の光が部屋に差し込んでくる。


「気分はどうだ?」

「はい!もう元気いっぱいです!」

「それは良かった。私は支度をしてくるから少し待っていろ。」

「わかりましたー!」


目が覚めてから1週間。

最初は立つことすら出来なくて困った。

ずっと寝てたから仕方がないことなんだって。

僕はジル様が調合した色んな薬を飲んだり、ジル様に治癒をかけてもらったりして一昨日やっと歩けるようになった。


そして今日はー!


僕はぴょこっとベッドから飛び降りて窓の外を眺めた。

遠くに見える山まで全部が雪!!!

早く外に出て遊びたいなあ。


「行こうかルグラン。」


黒いローブに黒いシャツ。

いつも通り全身真っ黒のジル様が僕を呼んだ。

黒に包まれたジル様の美しさはこの世の何も適わないと思う。


「はい!」


ジル様が僕を抱き上げて転移をする。

まだ自分で歩いちゃダメなんだって。

僕はもう元気なのにな。


転移した先は執務室だった。


「プロム。」

「はい、お早うございますジル様。」


ジル様がひと声かけると影が伸びてそこからプロムさんが現れた。

僕を抱いたままのジル様に深く一礼する。

プロムさんは呼ぶといつも直ぐに来るから、きっとジル様のことをずーっと見てるに違いないと僕は思っている。


僕を床に降ろして、椅子に腰掛けながらプロムさんに言った。


「ルグランの朝食をここへ。私はいつも通り。」

「畏まりました。ケラーに持たせましょう。」


ジル様達は基本ご飯を食べない。

お城の人達も、食べないで生きていけるんだって。

長く生きていると食事は遊びか、もしくは嗜好品になるんだって。

でもジル様は僕と一緒にご飯を食べてくれる。


嗜好って何だろ?

僕はお腹空くんだけどなあ。


「さあ、食べようか。いただきます。」

「いただきます。」


ジル様はメイドのケラーさんが淹れた紅茶を飲みながら乾燥した野苺の実を食べている。

ティーカップ片手に朝の報告書を読むジル様もすごくきれいだ。

そう思いながらケラーさんが持ってきてくれたお肉にガツガツとかぶりつく。


「ケラーひゃん、んぐ、いつも、ありがとうござい、んぐ、ます。」

「まあルグラン様、お礼を言うのは結構なんですが食べながら話をするのはお行儀が悪いですわ。礼は受け取りました、次からはきちんと飲み込んでからその可愛いお口を開いてくださいね。」

「…はい。」


ジル様がこちらを見てにこにこしていた。

なんだかちょっと恥ずかしいな。


「ルグラン、食べ終わったら城の中を案内してやる。外にも出てみようか。」

「やっふぁあ!」

「…ルグラン様。」

「…あ」


ケラーがトレーを持ったまま、やれやれといった顔をした。











「おはようございますージルさ…」


執務室に足を踏み入れた魔女の側近、ドルキスは動きを止めた。

ドルキスの視線の先には朝食を食べ終え、子狐を膝に抱くジルが腰掛けている。


なんだあれは。


確かにあの子狐、今日から塔の外に出るとは聞いていたけど。

ジルさまが…ジルさまが可愛らしい狐子のミルクで汚れた口を拭って…ああ天使だ…。

これはもう我慢ならない。

ジルさまが…あんな風に…きっと僕にも!!


「ジルさまあああ!!!」

「おいドルキス落ち着…」


主に向かって飛びあがったドルキスは、翼を大きく変化させて子狐を抱く主を覆う。

天使にとって翼で相手を覆う行動は本来、番にしか行わないものであった。


「ジル様、ぼく…いや、俺にはやはり貴女しかいない!その子狐諸共、貴女は俺が必ず幸せにー!」

「はあ…ドルキス、いつもの可愛い感じはどうした。素が出ているぞ。頼む、離してくれ。」


いつでも無表情な彼とは思えない笑顔だ。

ああ怖い。

ジルは腕の中のルグランを庇いながらドルキスから抜け出そうとして、すかさず転移をかける。

己の中から主がいなくなったドルキスは、悲しそうな顔をして両手で空をにぎにぎした。


「…ジルさま、ひどいですー。逃げちゃうなんてー。」

「そんなの、私じゃなくても逃げると思うのだがな。」


ドルキスの口調はいつも通りに戻っていた。

そして、笑顔で腕の中の子狐に言う。


「何度か見かけたことはあるけどー、ちゃんと自己紹介してなかったよねー。ぼくはドルキス。ジル様の側近の1人だよー。見ての通り天使なんだー。生まれも育ちも下界だけどねー。ジルさまや君みたいな可愛いものが大好きー。ぼくのことはにいさまーとかって呼んでねー?」

「あ、あの、ルグランです。よろしくお願いします、ドルキスにいさま。」


ふふふと笑ってルグランを撫でている。


「そのくらいでいいか?今日は今から城の中を案内してやるんだ。」


ドルキスは名残惜しそうに手を離した。

分かるぞ、その気持ち。


「そうでしたかー。ぼくもご一緒したいけど無理ですねー。そうそう、レピダがジルさまに用事があるとかで。研究室で作業中だと思いますんでー、行ってみてくださいー。」

「分かった。」


そうして僕とジル様は執務室を後にした。






ドルキスくん書くのすっごい楽しいです。(^q^)

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