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夏休みは妖怪と  作者: 森尾
カッパ相撲、大一番
17/19

17話




それからも二人の稽古は続いた。

短期間で強くならなければいけないということで、山人さんも決して手を緩めることなく……助六も必死に食らい付いていった。


助六のためにと心を鬼にする山人、それに応えるようメキメキと実力を付ける助六、釣りに飽きたのか笹舟を作って遊びだした稲ちゃん、竿を見つめる僕。


「ほんとに魚居るの? 」


「いますよぉ……稲は嘘つきません…………ん〜、ここをこうやって。出来た! 」


「…… 」


「マコトさん!立派な笹舟が出来ました! 」


「……うん」


「えへへっ。あ、競争しませんか⁉︎あそこの岩場まで先に流れ着いた方の勝ちです! 」


「……そうだね」


この子は僕の美術の成績を知らないのか?だからそんな無謀な提案を……

何を隠そうこの僕は、小中高と……常に美術だけは5段階中評価5の満点を維持してきたのだ!

作るという行為は、極めれば命を吹き込むも同義。元は笹といえども僕の手にかかれば難攻不落の戦艦へと生まれ変わる。

見せてやろうじゃないか……真のクラフトというものを!



「今日はここまで! 」


「押忍! 」


「しっかし……この短い間で、こうも上達するとはな」


「オイラ本当に強くなったの?今だって投げ飛ばされて…… 」


「そりゃあ儂が強すぎるだけだ!安心しろ、お前さんは以前とは比べ物にならないほど力を付けた。そうだな……もういっぺん小僧と相撲取ってみろ。そうすれば実感できるんじゃないか? 」


「う、うん!マコト兄ちゃん、オイラと相撲…… 」




"完成したぞッ!……船底を松ヤニでコーティングした事により強度が増し、船尾にヨモギを搭載することで浮力を得る、極め付けは水の抵抗を緩和するため船首に組み込んだどんぐり!まさに一分の隙もない。あぁ……自分の才能が恐ろしい。コレが僕の笹舟、いや……不沈艦(イモータリティバトルシップ)

舞台は整った、今こそ不死の名に相応しい働きを見せる時だ‼︎ "


"いもーたりなんとかはよく分かりませんが、えっと……はい!見た目はかっこいいです、見た目は…… "




「確かめるのは後でいいや」


「そうだな」


「ねえ、山人のオッチャン」


「どうした? 」


「マコト兄ちゃんはさ、なんでオイラを手伝ってくれるんだろ? 」


「お前さんの境遇に感じ入る所があるって言ってたからな、だからじゃないか? 」


「…… 」




"どんぐりがパージした!このままでは水流をモロに受けて……いや、まだ船首がやられただけ、本体に支障は……ッ⁉︎浸水している、だと⁉︎

し、しかしなぜ?……そうかヨモギか!本来浮力を担うはずだったヨモギが水を吸って全く機能していない、なんという誤算! "


"こうなるんじゃないかなって、稲にはなんとなく分かってました"


"あぁ、僕の不沈艦(イモータリティバトルシップ)が"


"……笹に松ヤニなんてつけたら沈みますよぉ "




「マコト兄ちゃん」


「さよなら、僕のイモシップ号……ん?どうしたの」


「オイラと相撲取っておくれよ」


「いいよ」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





僕は大の字になり天を仰いでいた、小川のせせらぎを横に青空を眺めるのも悪くない。


「ごめんよ……大丈夫かい? 」


「へいきへいき。いや〜助六強くなったね」


釣り、笹舟、相撲、全てにおいて大敗を期した。あぁ、僕のアイデンティティは何処へ……


「さっき山人のオッチャンから聞いたんだ、マコト兄ちゃんはオイラの境遇に感じ入ったから手助けしてくれたんだって……でもさ、たったそれだけのためにどうしてここまでしてくれるんだい?今日だってそうだ、差し入れって言って毎日キュウリをくれるし、それに山人のオッチャンを連れて来てくれたのだって」


「うーん」


「オイラの家、貧乏だから大したお返しも出来ないし…… 」


「あのさ、もしも僕が困ってたら助六は助けてくれる? 」


「も、もちろんだよ! 」


「……何もお返し出来なかったら? 」


「そんなのどうでもいいさ!……あ」


「どうでもいい、それは僕も同じだよ。お金や物が欲しいから手助けした訳じゃない、一言ありがとうって言ってくれたらそれだけでいい、だから気にする必要はないよ? 」


「うん……ありがとな、マコト兄ちゃん」


「あとキュウリの件は本当に気にしないで……正直、僕も助かってるんだ」


「?う、うん。あのさ、相撲大会にマコト兄ちゃんも来てくれないかな? 」


「それはいいんだけど……人間が行ってもいいの? 」


「多分平気だよ、昔はよく人間も見に来てたらしいから」


「へぇ、そうなのか…… 」


「オイラが生まれる前だからどれくらい昔か分かんないけど。でもいつの間にか来なくなってたんだってさ」


"いつの間にか来なくなった"

理由はなんとなく分かる、時代が移り変わるにつれ人は田舎から都心へと去って行く。

でもそれは仕方のない事だと思う。人は一人じゃ生きられない、だから人の集まる場所へと惹きつけられるのだ、そして……大切なものを忘れる。

きっと理由はそれだけじゃない。

森を切り開き、川を汚し、大地はアスファルトへと姿を変える、彼らと出会うきっかけを無意識の内に遠ざけていく。それだって仕方のない事、人が快適に暮らすためには仕方のない事なんだ。

妖怪は何も変わっていない、変わったのは人間……


「へへっ、オイラ頑張るから見ててくれよ? 」


「うん、必ず行くから…… 」


大会まで残すところあと僅か、やれる事は全てやった。

ここから先は助六次第だ。





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