12話
「…………暑い 」
本日、日本各地では記録的な猛暑が観測されたらしい、黄昏坂も例に漏れず灼熱地獄真っ只中である。
蝉も根を上げる炎天下のもと、僕はというと縁側に寝転び空を仰いでいた。
……絶賛夏バテ中だ。
「助けてイグサさーん……あついよー…… 」
「ふふっ、見事にだれていますね」
「イグサさんは暑くないの? 」
「…………あれ?……イグサさん? 」
そう問いかけるも返事は無かった。どうしたんだろうと彼女が居た方を仰ぎ見るが姿は見えない。
「……?どこ行ったんだろ」
「よお、マコト君。今日は暑いな! 」
イグサさんを探してキョロキョロしていると声をかけられた。この人は僕の隣に住んでいる畑山さん、挨拶回りをした時に干し柿をくれたおじさんだ。
成る程……人が来たから隠れたのか。
「ほんとに暑いですよね。ところで畑山さん何か用事ですか? 」
「ほら、これ。思いのほか多くできたんでな、食え」
そう言って大きなビニール袋を渡された。中を見てみるとキュウリがギッシリと詰まっている、思いのほか多くってレベルじゃないぞ……これ。
「こ、こんなに沢山もらって良いんですか⁉︎ 」
「ん?ああ、いっつもこれぐらいはあるから遠慮せんでいい。なんでか知らんが黄昏坂の田畑は米にしても野菜にしてもよう採れるでな」
「へぇ……不思議ですね」
「いっぺん何処かの偉い学者さんが調べにきたども分からんで帰ったわ。土も普通、水も普通……まぁワシらにしたら多く採れるんに越したことはないからな、ここら辺じゃそれが普通だ」
(妖怪だ……絶対に妖怪の仕業だ)
「それと……ほら、これも」
「えっと、釣り竿? 」
「若いもんがこげんなとこ来て暇しとると思ってな、釣りでも行ってこい 」
「何から何まですみません…… 」
「かまわんかまわん、それじゃあマコト君のばあちゃんにもよろしゅう言っといてくれ」
「ええ、どうもありがとうございました」
畑山さんの第一印象は"The・田舎のおじさん"って感じだったからとっつきにくい人なのかなと思ったけど実際話してみると普通にいい人だった。
今度お礼に何かしよう。
「あ、もう出てきて大丈夫ですよ?……イグサさーん? 」
「川釣りですか、丁度涼めて良いかもしれませんね」
「ぅおッ⁉︎……ビックリした」
気付けば僕の隣に座っていた、心臓に悪い。
「そ、そうですね。ところでここら辺の田畑がいいのって」
「"泥田坊"が毎晩せっせと耕してますから」
「やっぱりな……それにしても良い妖怪ですね」
「普通、泥田坊といえば一つの田畑にしか憑かないんですが……
あのお爺ちゃん少々お節介焼きでして。これはダメあれはダメと文句を言いながらも結局、全ての田畑を耕してしまうんです」
「メチャクチャ良い妖怪ですね」




