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告白後の不本意な出会い 2

「おい、お前」


 再び鞄をとりに教室へ戻る亜貴の後ろを、先程の男子がついてくる。亜貴は歩みを止めて男子の方を向いた。自分でも眉間に皺が寄っているのがわかる。


「お前っていうのやめてくれない? あんたなんかにお前なんて言われたくない」


「お前も俺のことあんたって呼んでんじゃねぇか」


 視線が交差する。百六十九センチの亜貴が見上げるような感じだ。焔はそれよりももう少しだけ高かったな、と思って亜貴はちょっとうるっとしそうになった。いや、してしまった。


「な、お前泣いてんのか?!」


 亜貴は慌ててふいと視線をそらした。人気のない廊下を再び歩き出す。


「別に! 泣いてなんかいないわよ」


「そんなにお前って言われるの嫌だったのか?」


「!」


 甚だしい勘違いに、亜貴は思わずふいた。


「?? お前忙しい奴だな」


 なんだか急に馬鹿らしくなってきて、亜貴はもう一度男子の方を振り返った。


「お前じゃなくて、高城亜貴よ。あなたは?」


「樋口刻ひぐちこく。刻でいい」


「そう。え? 樋口?」


「ああ。樋口だけど、なんだよ?」


 つくづくいやな日だなと亜貴は思った。振られた日に偶然焔と同じ苗字の男子と付き合うことになるなんて。


「別になんでもない。私のことも亜貴でいい」


「おう。じゃあ、亜貴」


「何よ?」


「何年生だ?」


「二年。二年一組」


「ふーん、俺と同じ二年か。俺は二年四組」


「そう。じゃあ一応よろしく」


「ああ。それで?」


 刻の問いを測り兼ねて、亜貴は首をかしげる。


「何? それでって」


「だから、そのぉ」


 刻は言いにくそうにそっぽを向く。


「何よ?」


「付き合うって何するんだ?」


「……」


 言われて亜貴は絶句した。高校二年の男子とは思えない質問だ。だが、今まで異性と付き合ったことのない亜貴もそう問われるとうまく答えられなかった。


「なんだよ?」


「そ、そうね。一緒に帰ったり、お弁当食べたり、勉強したりするんじゃない?」


 亜貴は今まで読んだ少女漫画の知識を総動員して答えた。


「そ、そんな恥ずかしいことすんのか?」


 刻の言う通り、確かに恥ずかしい。気まずい空気が流れる。


「嫌なら……」


「男に二言はない。勝負だからな」


「そう……」


「で、亜貴は今日これからどうするんだ?」


「私は今日はもう帰る」


 長居して焔と会ったら気まずい。


「ふーん」


「刻は部活は何か入ってるの?」


「俺? 弓道部に入ってる」


「え? あんたが?」


「亜貴って、さっきからほんと失礼なやつだな」


「まあ、確かに姿勢はいいわね。


じゃあ、この後部活に行くんでしょ?」


「ああ」


「今日はこれでさよならね」


 ちょっとほっとして亜貴は言った。早く学校を出たい。


「見て行っても構わねぇけど?」


「そうね、またの機会にそうさせてもらうわ」


「ふーん」


「じゃあ、部活頑張って」


「お、おう。じゃあな」


 亜貴はひらひらと形だけ手を振ると教室入り、鞄をとって教室を出た。なんだか疲れていた。焔の困ったような笑顔と、刻が振った女子の泣き笑いが脳裏に浮かぶ。自分のしたことが果たして良かったことなのか、考えるともやもやした。早く家に帰って一人になりたい。


 亜貴は家路を急いだ。

高いテンションからぐっと下がってしまいましたが、ほのぼのした小説を目標にしておりますので、しばらくお付き合いくださいませ。

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