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決戦! 神ルシオ対悪魔ルシオ

「ルシオくん、なんかヒマだよ」


 屋敷のなか、ナディアがそんなことを言い出した。


 外は雨が降っている。三日連続の雨で、活動的なナディアが屋敷からまともに出られなくてあきあきしてるようだ。


「なんか楽しいことない?」


「またG退治でもやるか? それとも蟻ダンジョンの探検とか」


「それ飽きた、なんか新しいものとかない?」


「あたらしいものか」


「そうそう、雨の日にやるようなのがいいな」


「雨の日か……」


 おれは考えた。


 さて、昔は雨の日どうしてたんだっけな。


 この世界に転生する前、現代日本にいた頃の事を思い出す。


「雨の日はゲームやってたな、主に」


「ゲーム?」


「格ゲーとか、狩りゲーとかやってたな」


「へー? それってルシオくんの魔法で出来るの?」


 ナディアは目を輝かせて聞いてきた。


 期待の目だ。まったく、そんな目をされたら応えたくなるだろうが。


「出来るぞ。そうだな、そこのティーカップを取ってくれ」


 丸テーブルの上にあるものをさした。


 アマンダさんが入れてくれた、飲み終わったティーカップのセットだ」


「はい! これで何をするの?」


「みてな。『エニシングリモコン』」


 魔法を使うと、ゲームのコントローラーっぽい形のリモコンとアンテナが出てきた。


 リモコンとアンテナ、二つ一組の2セットだ。


 そのアンテナをティーカップとソーサーにそれぞれ突き立てた。


 そしてリモコンの一つを持って、スティックとボタンをおす。


 ティーカップが動いた。


「おお!」


「こんな感じで、アンテナをさしたものを操作できるようにする魔法だ。でもって」


 もう一個のリモコンも手にとって操作した。


 するとソーサーも動いた。


 ティーカップとソーサーを操作して、バトらせた。


 ティーカップがソーサーを吹っ飛ばして、勝利の決めポーズとばかりにぐるぐる回る。


「こんな感じだ」


「おもしろーい!」


「やってみるか?」


「うん!」


 ナディアにリモコンを一つ渡した。


「こんな感じかな!」


 ナディアは早速慣れた様子でリモコンを操作する。


 ソーサーが戻ってきて、今度はティーカップを吹っ飛ばした。


「あはは、ルシオくんよわーい」


「いったな」


 おれとナディアがリアル格闘ゲームで楽しんだ。


「旦那様」


 アマンダさんが静かに入ってきた。


「どうした」


「国王陛下と大旦那様がお見えになりました」


「王様とおじいさんが?」


「どうしたんだろ」


 ナディアがリモコンを置いて首をかしげた。


「プレゼントを持ってきたとのことです。是非旦那様に――」


「ルシオやー」


「余の千呪公はいずこかー」


 アマンダさんの報告を遮って、おじいちゃんズの声と足音がどんどん近づいてくる。


「おお、ここにいたのか」


「会いたかったぞ余の千呪公よ」


 相変わらずのおじいさんと国王のコンビ。


 部屋に入って、おれの顔を見た瞬間顔がデレデレになった。


「こんにちは。おじいちゃん、それに王様」


 子供モードで二人に話しかける。


 二人はさらに目尻が下がる。


「うんうん、元気にしとったかルシオや」


「なにか不自由はしてないか? なんかあったらいつでも余にいうのだぞ」


「大丈夫。毎日楽しく過ごしてるよ。それよりも今日はどうしたの? 一緒に来たの?」


「そうじゃ、今日はルシオに見せたいものがあるのじゃ」


「ルカめがどうしてもと言って。余はさほど興味はないのだが、勝負に逃げたと思われるのはシャクでな」


「ふん、そんな事を言えるのも今のうちだけじゃ」


 現われるやいなや、いつも通りエスカレートしてパチパチ火花を散らす二人。


「ごめんなさい、何をいってるのかわからないよ」


「これじゃ!」


「これだ!」


 おじいちゃんズは同時にぬいぐるみを取り出した。


 二人とも、自分にそっくりのぬいぐるみだ。


「えっと、これは?」


「わしのぬいぐるみだ」


「それは見てわかるよ?」


「余が夜なべして作ったものだ。どうだ似てるであろう」


「うん、ものすごくよく似てる」


 国王のだけじゃなくて、おじいさんのもそうだった。


 ちょっと特徴的なぬいぐるみだけど、二人にそっくりのぬいぐるみだ。


「ルシオや。わしのとエイブのと、どっちにするのじゃ」


「余のを受け取ってくれるよな」


 ……え? どういうこと。


 なんというかじいさん二人に「あたしとあの女どっちを選ぶのよ!」って迫られてる様な気分になった。


 いや気分じゃない、完全にそう言う場面だ。


「えっと……選ばなきゃダメ?」


「そうじゃ!」


「選んでくれい!」


 二人がおれに迫る。


 なんというか、どうすればいいんだ?


 と、おれが迷ってると。


「あ、ぬいぐるみの方がよく動くね」


 ナディアはリモコンを取って、おじいさんのぬいぐるみを操作した。


 おじいさんそっくりの手作りぬいぐるみが真上にジャンプしてアッパーカットを放つ。


「こっちすごく動くね。ティーカップより動かしやすいかも」


 今度はもう一つのリモコンを取って、国王のぬいぐるみも動かした。


「むっ、それはなんじゃルシオよ」


「えっと、『エニシングリモコン』っていって、なんでもリモコンで操作できる魔法なんだ」


「さっきこれでルシオくんと遊んでたんだよ」


 ナディアはそう言って二体のぬいぐるみを同時に操作する。


 おじいさんのぬいぐるみが国王のぬいぐるみを殴り飛ばした。


「ほう……」


「これはいい……」


 キュピーン! という擬音が聞こえそうなくらい二人の目が光った。


「ナディアよ、それを渡すのじゃ」


「そっちは余が預かろう」


 おじいちゃんズが半ば強奪の勢いでリモコンをナディアから取り上げた。


「なるほど、こう動かすのじゃな」


「流石余の千呪公。相変わらずいい仕事をする」


 いや別に仕事はしてない。


 リモコンで自分のぬいぐるみを一通り動かして操作した。


 そして、向き合う。


 ぬいぐるみも向き合う。


「恨みっこなしじゃな」


「うむ、格好のロケーションだ」


「「勝った方が受け取ってもらう」」


 なんかものすごい勢いで二人はぬいぐるみを操作して戦いだした。


 おじいさんのぬいぐるみと国王のぬいぐるみは激闘を繰り広げた。


「ほえー、すごいねルシオくん」


 おれは頷き、同意した。


 やがて、二人のぬいぐるみは同時にぼろぼろになって、操作不能になって地面に転がった。


 引き分け――痛み分けか。


「ふ、ふふふ。やるではないかルカよ」


「おまえもじゃ、エイブよ」


「仕方がない、こうなれば余の秘密兵器をだそう」


 秘密兵器?


「見よ! これが余が作った千呪公のぬいぐるみ、その名も『世の全てを司る千呪の王』だ」


 国王はバーン、って集中線がつくほどの勢いでぬいぐるみを取り出した。


 黒をベースにした、マントを羽織ったおれっぽい――魔王とか吸血鬼とか連想させる格好だ。


「わあ、かっこいい」


 ナディアは純粋に喜んだ。かっこいいけど……うーん。


「エイブよ、お前はそこがいかんのじゃ。ルシオの前にそんな仰々しく長ったらしい名前はいらんのじゃ」


 おっ?


「むっ」


「ルシオのイメージはこう――『聖人ルシオ』じゃ!」


 こちらもばーん! って感じでぬいぐるみを取り出した。


 こっちも顔はおれで、全身は白をベースにした、神とか天使とかあっちのイメージのぬいぐるみだ。


「すっごーい、こっちもルシオくんにそっくり」


 ナディアはますますはしゃいだ。……いやいや。


 というかなんだ? 今度はおれの人形を取り出したぞ二人は。


「どうやら決着をつけねばならんようじゃな」


「そのようだ。いくぞ!」


 おじいちゃんズはリモコンでおれそっくりのぬいぐるみを操作する。


 今度はドラ○ンボールの様な超人バトルになった。


 空を飛んで、超スピードで殴り合って、技をだしあう超バトル。


「ぬうううん! ゴッド・ルシオ・バスター!」


「甘いわ! 千呪公アルティメットブリザード!」


 おじいちゃんズはノリノリで、自分達の中にあるおれのイメージを具現化させる勢いでぬいぐるみを戦わせた。


「おじいちゃんたち、いつも通りだね」


 にこりと笑うナディア、おれはちょっと苦笑いしたが、それに同意した。

おじいちゃんズ好きな方ってどれくらいいるのか気になります。

わたしは結構好きです、この二人の孫バカ加減に。ついついセットで出してあげたくなっちゃいます^^;

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