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未来予想図

 ナディアがわくわくしてる横で、宝探しで見つかった魔導書を読んだ。


 SFチックなマンガだ。未来の自分の声を一方的に聞ける主人公が、それを予知能力として使いこなしていく話だ。


 パタンと魔導書を閉じる。


「読めた?」


「うん」


「どういう魔法なの?」


「実際に使って見せた方が早いだろ。『フォレッシー』」


 魔法を唱えた。


 目の前に映像が映し出された。


 シルビアが転んでるのか、スカートがめくれ、パンツが見えてる映像だ。


「ルシオくんのエッチ!」


 ナディアに背中をはたかれた。


「なにこれ、なんでシルヴィのパンツなの?」


「いやこれは」


 焦った、ナディアが珍しく怒ってるからだ。


 どういいわけ――説明しようかと悩んでると。


「こういうのが見たいんならシルヴィに言えばいいのに。魔法を使って偽物を見るなんてシルヴィかわいそう!」


「そういう意味なの!?」


 流石にそれは想像出来なかった。


 見るなら本人のを見ろ、魔法で出したのを見るのは本人がかわいそう。


 その発想はなかったわ。


「そうじゃなくて、これはな――」


「ルシオさまー」


 屋敷の中からシルビアが出てきた。


 つけてるエプロンで手を拭きながら、小走りでばたばたやってくる。


 ふと、長いスカートを踏んづけて――すっころんだ。


 ドンガラガッシャン! ってSEがつきそうなくらい見事なコケっぷりだ。


 それでスカートがめくり、パンツが見えた。


 さっきの映像そのままだ。


「シルヴィ大丈夫?」


「あいたたた、だ、大丈夫」


「もう、気をつけなよ。庭は走っちゃだめなんだからね」


 いや庭は走っていいだろ。


 というかナディアはそれに気づいてない。今のシルビアがさっきの映像そのままだって事に。


 古代魔法、予知の能力。


 魔法を唱えると、ちょっとした未来の映像を映し出すことが出来るみたいだ。


 『タイムシフト』の方が強力だと思うんだが、これが古代魔法である以上、何か差があるんだろうな。


「ルシオ様」


 考え込んでると、シルビアがそばにやってきた。


 何故か顔を赤らめている。


「どうしたシルビア」


「あ、あの……ナディアちゃんから聞きました」


「ナディアから?」


 シルビアの背後のナディアを見る。イケイケゴーゴー、とばかりにジャスチャーではやしたててる。


 なんなんだ?


 もう一度シルビアを見る。


 ますます赤面して、ぷるぷるふるえてる。


 やがて――。


「え、えい!」


 かけ声をして、スカートを裾を持ち上げた。


 さっき見たパンツが見えた。


「ちょ、ちょっとシルビア! 何してんの」


「な、ナディアちゃんが言ったんです。ルシオ様がさみしさのあまりに魔法で作ったわたしのパンツを見てるって」


「だー! それはちがう!」


「ち、違うんですか? でも魔法でパンツが見えたって」


「あれは予知の魔法! シルビアさっきコケてただろ? それを予知しただけだ、それのついでにパンツが見えただけ!」


「そ、そうだったんですね」


 シルビアはほっとして、それから恨めしい目でナディアをみた。


 ナディアは「なになにどうしたの?」って近づいてきて、親友のシルビアにぽかぽか叩かれた。


 しばらくして、落ち着いた二人。


 ナディアにも魔法の事を説明して、納得させた。


「そっか、そういうことかー。うん、確かにパンツは一緒だった」


「体勢が一緒だったって言ってくれ」


「ねえねえルシオくん、それってちょっと先しか見えないの?」


「どうだろ。やってみる」


 念じて、『フォレッシー』をもう一度使う。


 映像が生まれる、棺桶の中にガイコツがある映像だ。


「きゃああああ!」


「なにこれなにこれ」


 シルビアは悲鳴をあげて、ナディアは楽しそうに食いついた。


「えっと……ああ、三百年後のおれだ」


 魔法を使ったのはおれだから、何となく理解する。


「えー、ルシオくん死んでるの?」


「ナディアちゃん、そりゃあ死ぬよ、三百年後だもん」


「そっか。なんかルシオくんだったら三百年くらい生きてる気がしたから」


「人間だから百年くらいで死なせてくれ」


「未来過ぎてつまんない、もっと他に出来ないの?」


「調整してみるか……『フォレッシー』」


 ヒゲを蓄えた、ロマンスグレーのじいさんが映し出された。


 マントをなびかせて軍隊を率いてる。威風堂々として、おれの目からも格好良く見える。


「なんじゃこりゃ」


「うーん」


「……」


 シルビアとナディアがじっと見つめる。


 おれも考える、何となく理解した――。


「ルシオ様だわ」


「うん、ルシオくんだね」


「……よく分かったな」


 そう、それは未来のおれだ。


 大体六十年後くらいのおれ、何をしてるのかはわからんが。


「すっごいな、ルシオくんかっこいいな」


「こういうルシオ様も素敵……」


「もっと、ねえもっとルシオくん」


「『フォレッシー』」


 今よりもうちょっと年を取った、国王とおじいさんが日本家屋の縁側で碁をうっていた。


 ……どういう光景だ?


「やっぱり仲いいよね、この二人」


「そうだね」


「『フォレッシー』」


 今度はアマンダさんだ。


 いつも通り鉄面皮でメイド姿のアマンダさん――が墓の手入れをしてる。


「アマンダさんだ、変わってないからちょっと後のことかな」


「かもね」


 ……墓の名前に「ルシオ・マルティン」って書いてあった。なんでおれの墓参りしてるアマンダさんの姿が変わってないんだ?


 怖いから考えない事にした。


「『フォレッシー』」


 今度はイサークの姿が映し出された。


 寒空の下、物乞い姿で凍えるイサーク。


 ちょっとかわいそうにも思える。


 そうやって新しい魔法を使って、色んな未来をだして、二人と観賞して、わいわいやった。


「『フォレッシー』」


 そこに映し出されたのはベロニカ。


 草原に一人佇んでちょっと寂しげにしてたが、おれたちがそこにやってきた。


 おれとシルビアとナディア。


 草原にシートを広げて、バスケットから弁当を出してピクニック。


「そういえばベロちゃんいないじゃん」


「散歩にいくっていってましたね、そういえば」


「……ねえルシオくん、これってもしかして」


「ああ、三十分くらいあとの未来だ」


「やっぱり」


 シルビアとナディアは互いを見て、頷く。


「超特急で準備してくるよ」


「ちょっと待っててねルシオ様」


「ああ」


 頷くおれ、二人が屋敷の中に戻っていくのを見送る。


 未来映像の中では、寂しげだったベロニカが満面の笑顔になった。

アマンダさん何者!? って書いてから思わず突っ込みました、作者が。


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