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お宝ゲット

 屋敷での昼下がり。


 リビングのソファーでくつろぎながら魔導書を読み。テーブルの上に本が積み上げられてて、その横にアマンダさんが用意してくれたジュースとお菓子がある。


 お菓子はアマンダさん手作りのポテチ。異世界にこういう食べ物はなかったけど、説明したら作ってくれた。


 アマンダさんすごい。


「うーん、ごくらく」


 ジュースにポテチという、マンガ読みのゴールデンパートナーで魔導書を読む。


 部屋は『リプレイス』で季節を春にしてあるので、かなり快適だ。


 魔導書を読む。


 一冊読み終えたので、次のを手に取った。


 魔法は覚えた、がそれすぐに試さないのは、続刊ものだったから。


 続刊ものは同じ魔法を強化する、過去にあった例だと魔法の矢を覚えて、続刊を覚えれば覚えるほど同時に射てる数が増えていった。


 一巻の時点で2本、二巻で3本、三巻で5本と、同時に射てる数が素数で上がっていって、全二十巻を読み終えた時点で71本の魔法の矢を同時に射てるようになった。


 そういう事もあって、図書館から持ち出して全十巻のこの魔導書(マンガ)を読破してから試そうと思った。


「あれ?」


 二巻であるはずの魔導書は二巻じゃなかった、まったく違う本だった。


 テーブルに置いた他の魔導書を手に取ってみる。


 読み終えた一巻、積み上げられた三巻四巻五巻六巻――。


 シリーズものは、二巻だけが抜けていた。


「くっ、これじゃ読めない」


 この世界に来てはじめて、マンガを読めない事態に落ちいってしまった。


 二巻をすっ飛ばして三巻を読むなんてあり得ない。


 うっかり三巻を読んでしまうと話の繋がらないもやもや感と、微妙なネタバレ感がおれを襲うだろう。


「仕方ない、二巻を取ってくるか」


 はあ、とため息をついた。


 にしても、なんでこんなものがまざったんだ? そもそもこれはなんだ?


 せっかく持ってきたし、単巻ものだったら返す前に先に読んでしまおうと思った。


 そう思ってページを開くが。


「むっ? これは」


「あれえ、それもしかして宝の地図?」


 いつの間に入ってきたのか、後ろからのぞき込んだナディアが言った。


 彼女が言った通り、それは宝の地図のようなものだった。


 少なくとも魔導書(マンガ)じゃない。なぜなら。


「ふむふむ、ルシオくん、これってラ・リネアっぽくない?」


 ナディアがすぐに読めてしまったから。


 この世界でおれ以外に魔導書をさくっと読める人間は未だかつて出会ったことはない。


 ナディアがさくっと読めるって事は魔導書じゃないって事だ。


 ただの宝の地図、ってことか。


「宝の地図かあ。わくわくするねルシオくん!」


「そうだな」


「ちょっと探してくる!」


 宝の地図が書かれた本をひったくって、ナディアは外に飛び出していった。


 相変わらずアクティブな行動派だな。


「ココー、ちょっと来てー、探しものにいくよー」


 部屋の外から聞こえてくるナディアの大声。犬耳っ娘のココを連れてくみたいだ。


 行動派の上に結構頭脳派なのかもしれない。


 さて、どうしたもんかな。


「ただいま……」


「はや!」


 しょんぼりして、肩を落とした様子で戻ってきたナディア。


「どうした」


「ここ」


「ココ?」


 ココがどうしたんだ?


「ここだったんだよ、宝の地図がさしてるところって」


 ああ、そういう。


 ていうかこの屋敷を指してたのか。


 ナディアから地図を受け取る。


 集中して読んでみた、確かにこの屋敷を指してる。


「この屋敷の下に埋まってるっぽいな。というかもうないんじゃないのか、これって」


「うん。屋敷だったらもうない。ココがゆってた」


「……普段から庭を掘り返してでもしてたんだろうか」


 犬だからな、ココ。


「うー、残念、宝探しをしたかったのに」


「……するか? 宝探し」


「え?」


 驚くナディア、何を言ってるのかわからないって顔をした。


     ☆


 ナディアと一緒に屋敷の庭に出た。


「『ドリームサーチ』」


 魔法を唱えると、目の前に一枚の地図が現われた。


 端っこがぼろぼろで、いかにもな地図だ。


「これは?」


「宝の地図だ」


「宝の地図? これって、うち?」


 ナディアは地図と屋敷を交互に見比べた。


「ああ」


「うちに宝があるの?」


「ああ。探してみろ」


「うん!」


 ナディアは屋敷の中に飛び込んでいった。


 それを見送った後、アマンダさんが外から帰ってきた。


「お待たせしました旦那様」


「どうだった?」


「受け取って参りました」


 アマンダさんが魔導書を渡してくれた。


 ついさっきまで読んでいたシリーズ物の魔導書、そして今使った魔法の魔導書の、その第二巻だ。


「ありがとうアマンダさん」


「恐縮です」


 おれはそこで魔導書を開いて読み始めた。


 しばらくするとアマンダさんが椅子と机と、ジュースとポテチとシリーズ全作を持ってきてくれた。


 パラソルも建ててくれた。


「ありがとうアマンダさん」


「ごゆっくりどうぞ」


 至れり尽くせりの中、マンガを読む。


 二巻を読み終えた所でパタパタ足音がした。


 ナディアが屋敷の中からもどってきたのだ。


「ルシオくん!」


「どうだった?」


「タンスの裏にこれを見つけた!」


 そういってナディアが差し出したのは一枚の銀貨だった。


「これがお宝?」


「そう。今読んでる魔導書の魔法、『ドリームサーチ』。宝物のありかをさがして宝の地図にしてくれる魔法だ」


「すっごーい。そんなのもあるんだ」


「あるんだな」


 おれも驚いてる。


「でもでも、銀貨一枚じゃお宝っていうには寂しいね。なんていうかさ、宝の地図ってのはもっとこう、わくわくするものがいいよね!」


「じゃあ次ぎ行ってみるか?。二巻読み終えたばっかだ。魔法も強化されてるはず」


「うん! やってやって!」


 わくわくするナディア。八重歯がちょっとかわいい。


「『ドリームサーチ』」


 レベル二を使った。出てきた宝の地図は更に古ぼけて見えた。


「どれどれ……あっ、これラ・リネアだ」


「町全体にひろがったのか」


「ちょっと行ってくるね!」


 風の如く去っていくナディア。


 おれは三巻を読んだ。


 読み終えたのとほぼ同時にナディアがまた戻ってきた。


「ルシオくん! 今度はこれ!」


「サイフか」


「中に銀貨が二枚はいってたよ」


「ちょっと微妙だな。三巻もいっとく?」


「うん! なんかすっごく楽しい」


 ナディアは大いに喜んだ。


 魔法の効果は微妙だが、かわいい嫁が喜んでるんだからいっか。


 おれがマンガを読んで、ナディアが地図で宝探しをした。


 巻数を重ねるごとに宝の地図がどんどん古くなり、見つけてくる宝の価値も徐々に上がっていったが、そっちは雀の涙ていどだった。


 九巻の時点で見つけてきたのが安物のブローチ(アマンダさんの鑑定で銀貨10枚)ってあたりでいろいろアレだ。


 価値はアレだし、魔法の効果としては微妙だけど。


「ナディアが喜んでるからいいか」


 夕日の中、庭でおれはナディアの動画を見てそう思った。


 ナディアが戻ってくるたびにこっそり『クリエイトデリュージョン』でとってた彼女の姿だ。


 まるで子供のように大はしゃぎする姿はすごくかわいい。


 ……いやまあ八歳の子供、幼女妻だけど。


「ルシオくーん」


 それを眺めてるとナディアが戻ってきた。


 手に何かを持ってる。


「こんなのを見つけたよ」


 テンションが今までのと同じ、ま、そんなもんだ。


 戻ってきて、おれの前に立つナディアに聞く。


「どんなんだ?」


「これ。魔導書」


「へえ、一気に価値が上がったな。どれどれ……」


 受け取り、何気なしにめくろうとしたおれの動きがとまった。


「どったの?」


「これは……いやまさか」


「なになに、どうしたのルシオくん」


「この表紙、見た事ある」


「よんだ事のある魔導書? じゃあ外れだね」


「いや……大当たりだ」


「え?」


「これ……古代魔法の魔導書だぞ」


 いきなりの超大当たりに、不意を突かれたおれは思いっきり驚いた。

長くなったのでちょっと前後編チックに。

次回、古代魔法二つ目です。どんなものなのか――頑張って書きます。

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