表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/120

フランケンシュタイン

 朝起きて、キッチンにやってきた。


「おはようございます旦那様」


「あっ、おはようルシオ様」


 キッチンの中にいるシルビアとアマンダがおれを出迎える。


 二人は一緒になって料理をしてるみたいだ。


「朝ご飯を作ってるの?」


「ううん。ルシオ様のお弁当を作ってるんです」


「弁当?」


「はい。今日はルシオ様、図書館に行くんですよね」


「そのつもりだ」


「そのお弁当を作ってました」


「へえ、どんな弁当なんだ?」


「あっ、だめっ」


 のぞき込もうとしたところに、シルビアが慌てて弁当を隠そうとした。


 慌ててやったせいで手が滑って、中身を台の上にぶちまけてしまった。


「あっ……」


 落ち込むシルビア。ぶちまけてしまったものをシュンとした顔で見つめる。


 おれのせいだな。


「大丈夫です、奥様」


 一方で、アマンダさんはいつも通り冷静に振る舞った。


「もうワンセット分の材料がございます。今から作り直しましょう」


「うん。ごめんなさいルシオ様。後でお届けしますから」


「こっちこそ悪い、出来るまで部屋で待ってる」


「はい!」


 笑顔で頷くシルビア。


 おれはアマンダさんが弁当の具を拾い集めるのをちらっとみて、キッチンを後にした。


 拾い集めていた具材から推察するに、キャラ弁――しかもおれの姿をしたキャラ弁みたいだ。


 それは見られるの恥ずかしいな。


 一方で、アマンダさんはそれを拾い集めて弁当箱に詰め直したが。


「まるで福笑いだな」


 とおれは思った。


「福笑いって何?」


 廊下でばったり出会ったナディアがきいてきた。


「福笑いをしらないのか?」


「しらない」


「そうか」


 おれは少し考えた。


 どうせシルビアの弁当を待つんだから。


「すこし遊ぶか?」


「うん! 何して遊ぶ? 蟻の穴に水を流す?」


「んな小学生男子みたいなことじゃないよ」


 ナディアを連れてリビングにやってきた。


 ナディアと一緒にソファーに座って、魔法をつかう。


「『モンタージュボディ』」


 魔法の光が空中に浮かぶ。


「これをどうするの」


「見てて。顔はアマンダさん、体は大人のベロニカ、服装は……兄さんだ」


 魔法の光に触れて、目を閉じてパーツ単位で想像・指定をした。


 光が明滅する。強くなったり弱くなったりを繰り返して、やがて収束する。


 そこに、一体の人形が現われた。


 指定通りの見た目だ。


 顔は鉄面皮のアマンダさん、体はグラマーな大人ベロニカ、着てる服はまるでクジャクを連想させるイサークのもの。


「きゃははははは、なにそれ、おもしろーい」


「そういう魔法だ。今みたいな要領でやってみろ」


 『モンタージュボディ』を唱え直して、人形を魔法の光に戻す。


 ナディアは同じようにそれに触って、目を閉じてぶつぶつつぶやいた。


 しばらくして、それができあがる。


「なんだこれは」


「普通のルシオくんの体に、ルシオくんドラゴンの羽、そして覇王ルシオくんの顔」


「お、おう」


 ナディアが作り出したものを――不覚にちょっとかっこいいと思ってしまった。


 体のサイズこそおれのままで子供だけど、背中に力強さを象徴するドラゴンの羽、顔はいつだったかナディアがシルビアと一緒に妄想していた「すごいおれ」。


 ぶっちゃけ、結構かっこいい。


「ルシオくん素敵……」


「『モンタージュボディ』」


 自分でもかっこいいと思ったが、目の前でうっとりされると恥ずかしい。


 おれは魔法を唱えて人形を魔法の光に戻した。


「えー、どうして消すの?」


「いいから。他のを作ってみろ」


「ちぇ。そうだね……ねえねえルシオくん、これってもっと細かい事出来ない?」


「細かい事って?」


「例えばさ……ってやって見ればいいじゃん」


 ナディアはそう行って、また人形を作った。


 出てきたのは一人の美少女だった。


 どこかで見た事あるようなないような、そんな美少女。


「なんだこれは」


「シルヴィの目にあたしの鼻、それにベロちゃんの口」


「ああ、お前達のパーツを顔に限定して組み替えたのか」


 人形を見る、いわれるとわかる、確かに嫁達のパーツだ。


 本当にモンタージュ写真みたいだな。


「ルシオくんもう一回」


「『モンタージュボディ』」


「これに……こうやって」


「その顔をドラゴンのボディにくっつけるのはやめろ」


 クソコラか。


「もう一回もう一回」


「はいはい。『モンタージュボディ』」


「今度は……こうだ! おじいちゃんと王様をくっつけてみた」


「縦にわってくっつけるな! アシュラ男爵か」


「もう一回!」


 ナディアと一緒に魔法で遊んだ。


「ねえねえ、これって一緒に作れないの?」


「うん? 一緒にって?」


「例えばあたしが目と口をきめて、ルシオくんが眉毛と鼻きめる。そんな感じの」


「できるぞ」


「本当! じゃあやって見ようよ」


「『モンタージュボディ』」


 魔法の光を二人で触った。


 目を閉じる。


「髪型……決めた。次ルシオくん」


「眉毛決めた……でいいのか? 次ナディア」


「それでオッケー。じゃあ目はこの人!」


「どんな見た目になってるのやら……鼻はこっちで」


「ミミだけばらすね……ココちゃん!」


「ケモミミになった! やばい、目とのアンバランスさが既にもうヤバイ」


 一つずつ言い合いながらナディアと合成で遊ぶ。


 何ができあがるのか楽しみにしながら。


 やがて。


「ふう、出来た……ぷっ」


「おいおいおいおい」


「あは、あははははは。これまずいでしょ。こんなの外に出したらつかまっちゃうよ」


「それよりもショックで気絶死すると思う」


「あははは、そうかも」


 できあがったのは……もう名状しがたい生き物だ。


 ギリギリ人型を保っているが、下手すれば人には見えない。


 まさにフランケンシュタイン、あれを数十倍やばくした感じだ。


 手一つとっても、指三本が嫁のもので、残り二本がココとマミだ。


 チョイスにヤバイ素材はないけど、もうヤバさしかない。


「ちょっとこれ見せてくる!」


 ナディアは人形を抱えてリビングから飛び出した。


 キッチンの方からシルビアの悲鳴が聞こえた。


 まったくもう。


「……『モンタージュボディ』」


 一人になったリビングの中でもう一回魔法を使った。


 魔法の光に念じる。


 シルビア。


 ナディア。


 ベロニカ。


 嫁達の姿を念じながらパーツを選ぶ。


 ある意味三人が合体した、美しい人形ができあがった。


 それを……おれは……。


 思わず、見とれてしまったのだった。







 ……が。


「ルシオくんがすっごい美女に浮気してる!」


 戻ってきたナディアに説明するのがすごく難しかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ