表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/120

小遣い稼ぎ

 結果から言うと、ディスティレーションはちゃんとお金になった。


 近くのアイセン、カルチ、キブの三つの村に言った。


 話をして、売り込みをして、洗濯とかにしか使えないって水源に魔法をかけて、実際に飲んで見せた。


 それがすごく喜ばれた。一週間に一回浄化に行くという約束で金をもらった。


 次に何が金になるのかを考えた。


 最後の村、キブから屋敷に戻る帰り道で歩きながら、考える。


 すっと横からシルビアが手を伸ばして、おれのおでこをハンカチを拭いてくれた。


 また、汗が出てたみたいだ。


「暑いな」


「はい」


「シルビアは大丈夫なの?」


「わたしは大丈夫です」


 そうは言うけど、シルビアも額に豆粒大の汗がにじんでる。


 季節は夏に近い。そろそろ暑くなってきてる上に、二人で歩きっぱなしだ。


 そりゃ汗も出る。そして気づいたら喉も渇いてる。


「冷たい飲み物がほしいよな。氷でキンキンに冷やしたジュースとか」


「氷は高級品だから」


「うん?」


 足を止めた、シルビアを見た。


「どうしたんですか?」


「いまなんて? 氷は高級品?」


「はい」


「どういう事?」


「えっと、昔お父さんから聞いた話だけど。夏に氷が食べられるのは、地下のすごーく深いところを掘って、冬の氷を保管して、食べたい時に取り出すって方法しかないの。それができるのはすごいお金持ちか、王様とかだけだって。後は大きい街のこーきょーじぎょーだけだって」


 公共事業か。


 でもそっか、そういえば冷蔵庫とかないのか。


 つまり……氷も金になるって事か。


 おれは今まで覚えた魔法を一つずつ思い出して、使えそうなものがないか探した。


     ☆


 屋敷に戻って、リビングに飲める水と包丁、そしてシロップを用意した。


「セルシウスゼロ」


 まず魔法で水を凍らせた。水はすぐに氷になった。


 その氷を包丁で削った。こっちは肉体労働だったから、ちょっと苦労した。


 削り出した氷に、甘いシロップをかけてみた。


 かき氷のできあがりだ。


「ほら、食べてみて」


「いいの?」


「ああ」


シルビアはかき氷を受け取って、一口すくって、口の中に入れた。


「あまい、冷たい。くぅ……」


 最初はうれしがったけど、すぐに目が×みたいになった。


 きーんときたな。


「大丈夫か」


「う、うん……ちょっと頭」


「かき氷を一気に食べるとそうなるんだよ」


 笑って、シルビアからかき氷を受け取って、自分でも食べてみた。


 美味しかった。シロップに色がついてないから面白さはなかったけど、味は問題なかった。


 これは、金になる。


     ☆


 メイドから台車を借りて、必要な道具一式を乗せて、アイセンの村にきた。


 村の広場で道具を広げて、水を浄化して、凍らせて、かき氷にした。


 一人の農作業者が通り掛かったので、呼び止めた。


「ねーねーおじさん、かき氷食べていかない?」


 子供モードで、愛想を振りまいてみた。


「かき氷?」


「うん! こう、氷を削って、シロップをかけた食べ物なんだ」


「氷を!? それは美味しそうだ。……でも高いよね」


「200セタでいいですよ」


 セタというのはこの世界の通貨の単位で、200は小さい茶碗いっぱいのスープ麺の値段くらいだ。


 つまりかなりリーズナブルな値段設定だ。


「安い! その値段で氷を売っていいの?」


「魔法で作った氷だからね」


「キミが作ったの?」


「うん!」


「そっか、魔法で作ったのか。じゃあ一つもらおうかな」


 男は200セタを出した。シルビアがそれを受け取って、おれがかき氷を作って渡した。


「あまい、それに冷たい。はあ……熱い日に冷たいものを食べるのってこんなに気持ち良かったんだ」


「だよねー。よかったらみんなにも紹介してよ。これからお水を綺麗にしに来る度にここで売ってるから」


「うん? ああキミが水を浄化してくれるっていうルシオくんか」


「うん! これからよろしくね」


「おう、よろしく」


 男はおれの頭を撫でた。


「でもキミすごいね、その歳で商売してるのは」


 おれはシルビアの手を取って、指輪を見せた。


「お嫁さんできたからね」


 男は一瞬きょとんとして、それから大笑いした。


「そりゃそうだ、お嫁さんできたら稼がないといけないよな。男の子……いや男だもんな」


「うん!」


「よし、おじさんにまかせろ。キミのこの……かき氷だっけ? を村中に宣伝しとくよ」


「ありがとうおじちゃん」


「ありがとうございます!」


 おれが礼を言って、シルビアも礼を言った。


 これでもう少し、稼げそうだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ