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おじいちゃんズ

「ルシオや」


「余の千呪公よ」


 その日、おじいさんと国王が一緒にやってきた。


 玄関に並んだ二人を見て驚くおれ。


「おじいちゃん、それに王様。どうしたのいきなり?」


「遊びに来ちゃったのじゃ。のうエイブや」


「うむ、ルカに誘われてきちゃったのだ」


 ものすごくフランクに会話する二人。


 相変わらず意気投合してる。


 だが……来ちゃったって。


 おじいさんは良いけど、国王はまずいんじゃないのか?


 大臣がまた泣くぞ。


「大丈夫だ、余の千呪公よ」


 どきっとした。


 まるで心を読んだかのように国王がいった。


「今回の余に抜かりはない。ちゃんと他のものにはバレないように、認識を変える魔法で変えてもらってる。今の余は知ってる人間以外にはただの老人にしか見えないはずだ」


「へえ、そういう魔法もあるんだ」


 おれはまだ覚えてないけど、まああっても何の不思議もない。


 それ以上の魔法をおれはいくつも覚えてるしな。


 まあ、そういうことならいっか。


「じゃあ、上がって」


 おれは二人を屋敷に招き入れて、リビングに通した。


 そこにベロニカがいた。


 ソファでくつろいでて、シルビアが入れた紅茶を飲んでる。


 それを見たおじいちゃんズが一斉に首をかしげた。


「うむ? ルシオや、あの娘はどちら様なのじゃ?」


「えっと、ぼくの友達です」


「ほう、余の千呪公の友達」


「なかなか可愛らしい娘ではないか」


「うむ、余の千呪公とお似合いだ」


 いやいや。


 いきなりお似合いって。


 そりゃ見た目の年齢はそうかもしれないけどさ。


 おれがそんなことを思っていると、国王はベロニカに近づき、話しかけた。


「初めまして。お嬢ちゃんの名前を伺ってもよろしいかな」


「はじめまして。ベロニカ・アモール・ゲルニカですわ。そちらは?」


「エイブラハム三世である」


 ちょっとちょっと、何二人とも本当の名前名乗ってんの?


 当然、空気が固まる。


「わしはルカ・マルティンじゃ」


 おじいさんの自己紹介なんてだれも聞いちゃいない。


「ふむ、余はそなたと同じ名前の娘を一人知っておる。このような幼い娘ではなかったが」


「あたくしも似たような名前の方を存じ上げていますわ。このような変哲のない老人ではありませんでしたが」


 いや二人とも本人だから。


 国王と、前女王。


 ものの見方によってはこれ、サミットのようなもんだぞ。


 二人はしばしの間見つめ――いやにらみあった。


 やがて、二人はにらみ合ったままおれに話しかけてきた。


「そういえば余の千呪公よ。最近困ったことなどないか?」


 国王がやたらとお忍びで他の国に行くことに困ってます。


「ねえルシオ。今日はどこに遊びにいくの?」


 遊びに行ける様な状況じゃないです。


 答えないでいると、二人の間にますます火花がちった。


 魔法でどうにかなりそうにない状況に、おれは困り果ててしまった。


     ☆


 表の馬車から荷物がどんどん屋敷の中に運び入れられる。


 その大半が魔導書だ。


 国王がおれに読ませるために、王立魔道図書館から持ってきた魔導書だ。


 荷物の量から推測して、ざっと一千冊。それも表紙を見る限りまだ読んでないものばかりだ。


 これは正直ありがたい。


「ありがとうございます、王様」


「いやいやなんの。余の千呪公のためだ、このくらいどうということはない」


「でも次は前もって知らせてくれると嬉しいな。いきなり来るとびっくりしちゃうから」


「だって、余の千呪公の驚く顔がみたかったんだもん」


 だもんって……。


「おねがい、王様」


 まっすぐ見つめて、上目遣いでおねだりをする。


「むむむ、わかった。そこまで言われたら仕方ない。次は先に使いの者をよこしてから来ることにしよう。


「ありがとう王様!」


 お礼を言うと、国王はジーンと感動した。


「ルシオや」


 今度はおじいさんが話しかけてきた。


「どうしたの?」


「これをみるのじゃ――『アイシクル』」


 じいさんは手をかざした。


 魔法を使って、氷柱をだした。


 ちょっと驚いた。


「おじいちゃん、新しい魔法覚えたんだ?」


「うむ、ルシオが薦めてくれた魔導書、あれが読めたのじゃ」


「すごい」


「ルシオのおかげじゃ。のうルシオや、次の魔導書をすすめてくれんかのう」


「そうだね、じゃあ次はブラストストーンがオススメかな? あれも結構読みやすかったと思う。おじいちゃんのところにあったはずだよ」


「うむ、帰ったらすぐに読むのじゃ」


 えびす顔で頷くおじいさん。


 そこに国王が割り込んできた。


「余の千呪公よ。生活で困ったことはないか?」


「生活、ううん大丈夫だよ?」


「そうか。公爵の通常俸給に加えて出張手形を五割で上乗せしたが、足りないときはいつでもいうのだぞ」


「五割?」


 ちょっとまって、それってかなりの額だぞ。


「たりないよな、慣れない地で出費も多かろう。余もそう言ったのだが大臣がうるさくてな」


 いやいやいや。


 ありがとう大臣、よく止めてくれた。


「そうだ、余の千呪公は妻が二人いたな。よし、帰ったら家族手当もつけさせるとしよう」


「やめて王様。そんなにいらないよ。今までのお給金でも充分過ぎる位だよ」


 というか王国の公爵はかなりもらう。元々の額でも使用人を百人雇っても全然足りてしまうくらいだ。


 そこから更に上乗せするとなるとちょっと恐ろしい。


 だから慌てて止めた。


「そうか……」


「そうじゃぞエイブ、金の問題ではない。ルシオや、わしはアマンダをここによこそうと考えているのだがどう思う」


「アマンダさん?」


「そうじゃ。ルシオは嫁の二人と悠々自適に暮らしたいのじゃろ? ならばルシオの事をよく知っているメイドに身の回りの事をやってもらった方がいいと思ったのじゃ」


「それは、うん、そうかも」


 実家暮らししてた頃のことを思い出す、アマンダがいると助かるのは確かだ。


 彼女がいると、その分シルビアとナディアと遊べる。おじいさんの言うとおりだ。


「じゃあ……お願いできるかな」


「うむ、帰ったらすぐにアマンダをこっちによこす」


「ありがとうおじいちゃん」


「ふふん」


 おじいさん自慢げに鼻を鳴らした、国王はぐぬぬってなった。


 あぁ……これは失敗したかもしれない。


「余の千呪公よ。メイドなら宮殿にもたくさんおるぞ。余の方からも一人スーパーメイドを派遣しよう」


 やっぱり張り合いだした。


 おじいさんと国王。二人は仲がいい分すぐに張り合い出すんだよな。


 しかも後腐れのない張り合いをするから、とめるのも難しいし、困る。


「そうだな、百人くらいいれば良かろう」


「ルシオや、子供の頃食べてた干しガキはいらんか? 今度山ほど送ってやろう」


 本当、困る。


 困るけど、何故か嬉しかった。


 だって、張り合う二人は生き生きしてるからだ。

久しぶりのおじいちゃんたち。

この二人は出すとちょっと面白いから、ついつい出してあげたくなっちゃう。

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