表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/120

わたしのために争わないで!

「ルシオや、いるかのう」


 声に呼ばれて、おれは玄関にでた。


 そこにおじいさんがいた。


 実家にいるはずのおじいさんが何故かそこにいた。


「あれれー、どうしたのおじいちゃん」


「上がってよいか」


「もちろんだよ」


 おじいさんを上げて、リビングに通した。


「お客様ですか――あっ、おじいさま」


 シルビアが顔を見せた。


「お客様だとおもったらおじいさまだったんですね」


「客としてもてなしてくれてもよいぞ。ここはルシオの屋敷、わしは文字どおりの客じゃからな」


「えっと……」


 シルビアはちょっと困った顔でおれをみた。


「じゃあシルビア、お客様用に、一番美味しいお茶と一番美味しいお菓子をだして」


「はい、わかりました!」


 シルビアがリビングから出て行った。


 おじいさんはリビングの中を見回した。


「ここがイサークが買った屋敷か」


「うん、そうだよ」


「……負担をかけてしまったようじゃな、ルシオに」


「そんなことないよ。丁度お屋敷がほしかったところだったし。家族も増えたし、丁度いい広さでたすかったよ」


 子供モードで答える。


 おじいさんは目を細めて、おれの頭を撫でた。


 転生した二年ちょっと前からおじいさんがよくするなで方だ。


「そうかそうか。ルシオはさすがだな」


「ありがとう」


「ルシオくん、お客さんだよ-」


 ドアがいきなり開いた。そこにナディアと、国王の姿があった。 

 国王はお忍びようの、質素な服を着ている。


「余の千呪公よ、遊びにきたぞ――むっ」


 国王は機嫌のいい顔で入ってきたけど、一瞬でむっとなった。


 おれをみて――いやおれを撫でてるおじいさんをみて不機嫌になった。


「余の千呪公よ、その老人はだれかな」


「え?」


「余の? ルシオや、こちらはどなたかな」


「えっと?」


 なんか変な雲行きになってきたぞ。


「……あたし、シルヴィの手伝いしてくるね」


 それをさっしたのかナディアが逃げ出した。


 ……あとでちょっとお仕置きしよう。


 今はそれよりも二人の事だ。


 おれの実のおじいさんと、王都にきてからお世話になってる国王。


 二人の老人が真っ向から向き合って、パチパチ火花を散らしている。


 ……なんで?


「何者なのかは知らぬが、余の千呪公になれなれしいぞ」


「余の? ルシオは誰のものでもないぞ。誰なのかはしらんがそちらこそ図々しいのではないか」


 火花が更に散った。


 どういうこと、ねえどういうこと?


 えっとこの場合、こういうのをおさめられる魔法って――そんなのあるか!

 そもそもどういう状況なのかもわからないのに魔法もくそも。


 とりあえずなんとかしようと思い、二人の間にはいった。


「王様、この人はぼくのおじいちゃん。普段は実家にいるんだけど、今日遊びにきてくれたんだ。おじいちゃん、この人は王様。ぼくが魔導図書館ですっごくお世話になった人なんだ」


「千呪公の祖父?」


「魔導図書館じゃと?」


 二人の眉が同時にぴくりと動いた。


 えっ、まさかこれも地雷?


 と思ったけど。


「失礼した。千呪公の祖父であったとはな。余はエイブラハム三世、この国の国王だ」


「こちらこそ失礼した。わしの名はルカ・マルティン。ルシオの実の祖父じゃ」


「あえて光栄だ、マルティン殿」


「こちらこそ光栄ですじゃ、陛下」


「エイブラハム、それかエイブでよい」


「ではわしの事もルカとお呼び下され」


 あれ? あれれれー?


 なんだか、二人が意気投合したぞ? どうなってるんだこれ。


     ☆


 針のむしろだ。


「ほう、つまりルシオは魔導書を読み解いて、古代魔法を再びこの地上に復活させたと」


「うむ、あれには驚いた。天気を操る古代魔法をまさかな。今となってはさすが千呪公といったところだが」


「そういうエピソードはわしにもあるのじゃ。しってるか、ルシオは魔導書の二度読みが趣味じゃ」


「二度読み?」


「そうじゃ、一度読んだ魔導書をもう一度、趣味で読むのじゃ」


「なんと! 魔導書をそのように読むとは」


「さすがルシオじゃ」


「うむ、さすが千呪公じゃ」


 リビングの中で、すっかり意気投合した二人の老人が仲良く話している。


 さっきまでの一触即発な雰囲気はない、が、これはこれでいたたまれない。


 盛り上がってる二人、間に入ってるおれは褒め殺しにされて、穴があったら入りたい気分だ。


「そういえば、千呪公にこれをつくってもらったぞ」


 国王はそう言って、おれが作ったアニメの宝石を取り出す。


 それを起動させて、壁にアニメを流す――持ち歩いてるのか!

「むっ。そうだ、わしはルシオからこんなものをもらったのじゃ。ルシオ、前にお前が買ってくれた魔導書、なんと読めたのじゃ」


「むっ」


 ……仲良くしてると思ったら、二人はまた火花を散らし出した。


 あれれれー、これ一体どうなってるの?


 この日、二人のおじいさんが意気投合したり火花を散らしたり。


 その繰り返しを何度もされて、おれは板挟みになって生きた心地がしなかった。

ジジイ・ミーツ・ジジイ。

ルシオラブな二人が遭遇した、というお話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ