読み放題と食べ放題
この日は朝から魔導図書館にいた。
国王が作ってくれた読書スペース、ゆったりくつろいでられるソファーに寝っ転がって魔導書を読みふけった。
今日、異世界に転生してきて初めての経験をした。
続刊があったのだ!
マンガとして読めば、今までのは全部一巻完結のものだった。
読めばそれだけで魔法を覚えられるから、特に気にしてこなかったけど、ちゃんと続刊ものもあった。
今読んでるのはバトルものだ。
四人の仲間が武闘大会に出場して、熱いバトルを繰り広げてどんどん勝ち進んでいくものだ。
リングの外の人間ドラマも面白くで、ついつい読んでしまう。
そして今、三巻を読み終えた。
「終わりましたかぁ?」
「ああ」
「じゃあ、次の持ってきますねぇ」
一緒に図書館に来た、おれが読んでる間はずっとそばで忠犬のようにじっと座っていた犬耳の少女、ココ。
彼女はおれから魔導書を受け取って、元の本棚に戻していった。
さっきからこうしていた、読んだ本を戻して、新しい本を持ってくる。
すごく楽ちんだ。
「こんなに楽して魔法をおぼえていいのかなあ」
そんなつぶやきが口に出てしまうほど楽ちんだった。
読めば魔法を覚えるのは今までと一緒だけど、それから更に自分で取りにいったり戻したりする手間がなくなった。
ぶっちゃけ……元いた世界だと、寝床のまわりにマンガが散乱してたんだよなあ。
寝る前に読んでたのがそのままで、次の日も戻さないで新しいの持ってくるからどんどん散らかっていくんだよな。
それを考えるとちょっとココにお礼を言いたくなった。
「はい、どうぞぉ」
きっちり四巻を持って戻ってきたココ。
異世界の人間はないよう読めないけど、表紙は読めるんだよなあ。
まあそれはともかく、おれは魔導書を受け取って、お礼を言った。
「ありがとう」
「どういたしましてぇ」
「お礼をしてやる。おまえ、骨はすきか?」
「ほね、ですか?」
「ああ骨だ」
「大好きですけどぉ……」
それがどうしたんだ、って言う顔をする。
思った通りだ。
ココは水をかぶると、もう一つの人格・体であるマミに変身する。
マミは猫耳の美少女で、獲物をとって見せびらかしに来るなど、ネコそのままの性質を持ってる。
だからココも犬っぽいのかなと思って聞いた。
まあ、ずっとおれのそばにじっといて、本を取り替えてくるところで既に忠犬そのものだけど。
「ちょっとまってな」
魔法を頭のなかで探して、やり方をシミュレート擦る。
一つは古いもの、もう一つはせっかくだから今覚えてるこの続刊ものの魔法でいいか。
「サーモンズスケルトン」
「わわ!」
驚き、おれの後ろに隠れるココ。
魔法が魔法陣をつくって、そこからガイコツが出てきた。
そのガイコツに向かって次の魔法を放つ。
「ソウルアロー」
魔法の矢がガイコツを貫き、バラバラにした。
ソウルアロー、今読んでるこのマンガで覚えた攻撃魔法だ。
ちなみに一巻読破したところで2本、二巻読んだときに3本、三巻を読み終えた今の時点で5本が同時に出た。
なんか法則がありそう。次の巻を読んだらまた試そう。
それよりも今は骨だ。
ココに向かって、言った。
「ほら、骨だぞ」
「いいんですかぁ?」
「ああ、たんと食えー」
「ありがとうございますぅ」
ココは大喜びで骨に飛びついた。
人型だった、バラバラになった骨を一本ずつかじっていった。
一生懸命かじる姿が愛らしくて、口からのぞく犬歯が可愛かった。
それをちょっと眺めてから、おれは四巻を開いた。
相変わらずのんびりまったりしてマンガを読む。
ガジガジガジ、ペラ。
ガジガジガジ、ペラ。
二人が作り出す音がいい感じにリズムを作った。
「読めた」
「ちょっと待ってください」
魔導書を受け取って、走って行って、五巻を持ってきた。
その間おれはソウルアローを試した。今度は7本でた。
この法則――知ってるぞ。
次は7本で、その次が11本、そして13本――の順かもしれない。
まあ読んでいけばわかる事だ。
「お待たせしました」
「ありがとう」
魔導書を受け取って、頭を撫でてやった。
まだ骨が残ってるから、召還はやめておいた。
そうして、魔導書をひたすら読み続けた。
一日中ココと図書館にこもった結果、全20巻のシリーズを読破して、同時に71本の矢を撃てるようになった。
ココは骨の食べ放題でお腹がパンパンになった。