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姫を助けた報酬

 そういえば。


「ココー、いるかココ?」


 おれは振り向き、洞窟の外に向かって叫んだ。


 バタバタと足音が聞こえる。外に置いてきたココが入ってきた。


「はいぃ、ココここいますぅ」


「あれ、頼む」


 ルビーを指していった。


 ココも女の子だ。あられもない姿のお姫様をどうにかするにはココに任せた方がいい。


 ここは少し考えて、困った顔をして頷いた。


「わかりましたぁ」


 そう言ってルビーの元に向かった。


 おれは背中を向けて、見ないようにした。


 しばらくして、ザッ、ザッという音が聞こえた。


 なんの音だ?


 ちらっと肩越しに見る、ココが地面を掘ってるのが見えた。


「ココ? なにしてるんだお前は」


「はい、穴を掘ってますぅ」


「穴? なんで穴なんて掘ってるんだ?」


「穴を掘らないと埋められないですよぉ?」


「埋めるな埋めるな!」


 おれは大声を出した。


「埋めないんですかぁ?」


「埋めるな! 服を直せって意味だ」


「……あぁ」


 ココはポン、と手を叩く。


 本当に埋めるつもりだったのか、こいつ。


 また背中を向く。今度はちゃんと衣擦れの音が聞こえたから、ほっとした。


「おわりましたぁ」


「ん」


 振り向く。ルビーの格好がちゃんとしていた。


 それに近づき、魔法を掛けた。


「フロート」


 ルビーの体が浮かび上がった。


 寝そべった体勢のまま浮かび上がる。


 後ろからそっと押した、まるで氷の上をすべるように、ルビーの体が宙を浮いていく。


「わあ、すごいぃ」


「ココがやるか?」


「うん!」


 大喜びで頷くココ。


 おれはそこを譲った。ココがおれがいた場所に立って、ルビーをツンツン突っつく。


 ルビーがホバーして滑っていく。


 とりあえず街に連れて行こうと思った。


「う……ん」


 洞窟を出る前に、ルビーが目を覚ました。


 上から顔をのぞき込む。


「起きた?」


「ここ……は、ひゃ!」


 目があったルビーが悲鳴を上げつつ、両手でドン! とおれを突き飛ばしてきた。


 体は大人のルビー、体だけは子供のおれ。


 普通なら、おれが突き飛ばされるところだが。


「ひゃあああ!」


 飛んでいったのはルビーだった。


 フロートの魔法で空中を浮いてる彼女は、おれを突き飛ばした反動ですっ飛んでいく。かなりの勢いで洞窟の中に逆戻りした。


 どーん、ドサッ。


 どこかとぶつかって、それから地面に落ちる音がした。


「きゃあああああ!」


 その直後に悲鳴が聞こえた。何事かと思って中に入ってみると、ルビーは地面に転がってる盗賊の死体に悲鳴を上げていた。


 ほとんどが黒焦げだけど、一部――例えば頭の半分だけ焼け残ってるのが残ってる。


 悲鳴をあげて当然な光景だ。


「こ、これは……一体どういうこと」


「おれがたおした」


 子供モードだと逆に面倒臭いから、普通に話した。


「そ、そなたが?」


「ああ」


「そんな……まだ子供ではないか、それを――」


「ブレイズニードル」


 魔法を使った。


 ルビーの横にある岩めがけて、炎の針が三方向から貫く。


 突き刺し、燃え上がる岩。ルビーはそれとおれを交互に見比べた。


「こ、これは……炎の上級魔法。そなたがこれを使ったというのか?」


 上級魔法だったのか? 何となく威力が高いから使ってたけど知らなかった。


「もう一度使って見ようか?」


「……いや、もう十分じゃ」


 ルビーはかなりの勢いで落ち着きを取り戻した。


 ちょっと驚く位、急速に落ち着いた。


「礼を言う。わらわはルビー・サボイア。サボイア王国第一王女である」


「しってる。助ける前に盗賊との会話を聞いた」


「そうか。しかし何故、そなたのような子供がここに?」


「アドリアーノって男から聞いた」


「むっ」


 ルビーの眉がひくついた。表情に不愉快な色がよぎった。


「あいつが逃げたしたのは覚えてるのか」


「目の前で逃げ出された。信用に値する男だと思っていた己の不明さが恥ずかしいわ」


「そうか。まあそこはどうでもいい。とにかくそんな経緯で、おれが助けに来た」


「助かったのじゃ。このお礼は必ずする。ルビー・サボイアの名にかけて」


 ルビーがまっすぐおれを、力強い目でおれをみつめて、宣言した。


 王族とか貴族とかってのはこういう風に自分の名前にかけて、ってのが好きみたいだな。


 まっ、その分お礼が期待出来るってもんか。


「そなたは魔導書を読み解いた魔法使いなのだな」


「ああ。1000くらいだな、使えるの」


「1000だと!?」


 ルビーに驚かれた。


「そんなにか」


 おれは黙って魔法をつかった。


 ファイヤボール、ファイヤレーザー。


 アイシクルにダイヤモンドダスト。


 ビッグにスモール、ウインドカッターにドレスアップ。


 法則はない、思いついたものを片っ端から使っていく。


 魔法をどんどん使っていって、ルビーがどんどん驚愕してく。


 100を越えた辺りから開いた口がふさがらなくなったので、やめといた。


「まあ、こんなもんだ」


「す、すごい……」


 驚くルビー……今度はなかなか戻らなかった。


 たっぷり一分以上間抜け面(それでも結構綺麗だけど)を晒した後、咳払いをして、無理矢理表情を戻した。


「そなたは、どこかに属しているのか」


「属して? いや別にどこにも?」


 どういう意味かはわからないけど、組織っぽいものはどこにも入ってないから、きっぱり否定した。


「ならば、宮廷魔術師――」


「それはいやだ」


 おれはきっぱり断った。


 本当はそんなにいやじゃないけど、この流れだとアドリアーノを思い出すから微妙にいやだった。


「むぅ」


 ルビーは迷った。それ以外の何でお礼をすれば良いのか悩んでる表情だ。


 仕方ないから、おれの方から提案した。


「なあ、サボイア王国って、魔導書をどれくらい持ってる」


「魔導書か? 正確な数はしらないが、数万は――」


「それを全部見せてくれ」


 言った後、自分でも興奮してきた。


 数万の魔導書――数万の魔法。


 興奮、してきた。


「そんな事でよいのか?」


 ルビーはあっさり了承してきた。

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