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ドラゴンナイト

「こんにちは、こちらルシオ・マルティンさんの家でしょうか」


 玄関先で一人の女の子が立っている。


 女子高生くらいの歳で、可愛いタイプの女の子。


 おれの家を訪ねてきた客だ。


「うん、そうだよー」


 おれはいつもの子供(コ○ン)モードで返事をした。


「おねえさん、だれ?」


「わたしの名前はイネスって言います。あの……ルシオさんはいらっしゃいませんか?」


「ぼくがそのルシオだよ?」


「…………えええええ!」


 イネスは盛大にビックリした、半身でのけぞる位大げさに驚いた。


「き、きみ……今年で何歳?」


「八歳だよ」


「そんな……まだこんな子供だったなんて……」


 今度はがっくりした。喜怒哀楽の激しい女の子だな。


「うーん、こんな子供で大丈夫なのかな。子供だし、もしかして親ばかならぬじいさんバカかもしれないよね。でも他に心当たりはないし、とにかく話すだけ話してみようかな」


 なんかぶつぶつ言い始めた。丸聞こえだけど。


「あのね!」


「うん」


「ルシオさ――ルシオくんのおじいさんに紹介されてきたの」


「おじいさんに?」


「そう、ルシオくん、魔導書を読むのが得意なんだって」


 確かにマンガを読むのは得意だ。


「うん、得意だよ」


「本当? ルシオくんのおじいさんがいうには読むのに一日もかからないって言うけど、さすがに大げさに言ってるよね」


「うん、大げさに言ってるね」


「やっぱり……」


 イネスはがっくりとなった。


「一日なんていらないよ。ものによっては十分くらいでよめるから」


「……え?」


 イネスは固まった。


 ビックリした顔でおれを見つめてる。


「じょ、冗談だよね」


「ううん、本当だよ」


「じゃ、じゃあ……この魔導書、読んでみてくれる?」


 イリスは一冊の魔導書を取り出した。


 なんのつもりなのかわからないけど、魔導書を――新しい魔法をくれるって言うのなら断る理由はない。


「いいよー。立って読むのはつらいから、中に入って読んでいい?」


「うん」


 イリスを連れて、家の中に入った。


 リビングにした部屋に入って、座る。


 おれは魔導書を開いて、読み出した。


 シルビアが部屋に入ってくる。


「お茶です、どうぞ」


「あ、ありがとうございます。あなたは?」


「ルシオ様のお嫁さんです」


「えええええ!? もう結婚したの、ルシオくん」


「はい。あっ! もう一人ルシオ様のお嫁さんいるけど、今日は用事があって出かけてます」


「二人も!? まだ八歳なのに?」


「うん」


「はあ……」


 イリスはおれをじっと見つめた。


 見つめられると何となく読みつらいな。


「あの、どうしてこの魔導書を読んでほしいのですか?」


 シルビアがまた話しかけた。イリスはシルビアの方を向いた。


 ナイスシルビア。


「それ、わたしのおばあちゃんの魔導書なの。おばあちゃんが唯一覚えてる魔法で、子供のころ、その魔法であやしてもらってたの」


「そうだったんですか」


「想い出の魔法で、誰かにもう一度使ってもらいたくて。それでおばあちゃんの知りあいである、ルシオくんのおじいさんに相談したの。おじいさんはいっぱい魔導書を集めてるので有名な人だから」


 イリスとシルビアの会話で大体の事情がわかった。


 丁度そこで、魔導書(マンガ)を読みおえた。


「おわったよ」


「え? うそ! まだ三十分もたってないよ?」


「うん、読みやすい魔導書だったから」


「本当に読めたの?」


「魔導書を読めたかどうかで嘘はつけないよ。だって読めなかったら魔法使えないんだから」


「あっ、そっか」


 納得するイリス。


 そう、魔導書を読めたらその魔導書の魔法が使えるようになるから、嘘のつきようがない。


「魔法を使ってみる?」


「う、うん! お願い」


「じゃあ外に出ようか」


 おれたちは外に出た。シルビアが話しかけてきた。


「ルシオ様、どうして外に出るの?」


「すぐにわかるよ」


 おれはそう言って、シルビアからちょっと距離をとった。その必要があったからだ。


「トランスフォーム・ドラゴン」


 魔法を使った。おれの体が変化していく。


 みるみるうちに、おれは巨大なドラゴンになった。


 二本足で立って、背中に翼を持つ、五メートルくらいのドラゴンだ。


 そう、イリスのおばあちゃんの魔導書は、ドラゴンに変身する魔法だ。


「……おばあちゃん」


 イリスが感動した様子でおれを見上げた。


 おれをみて自分のおばあちゃんの事を思いだしてるのか。


「おねえさん、おねえさんのおばあちゃんはどんな風にしたの?」


「あっ、わたしを背中に乗せて、空を飛んでくれた」


「そっか」


 おれは爪でイリスを摘まんで、自分の背中に乗せた。


「じゃあ、いくよ。シルビア、留守番よろしく」


「はい、行ってらっしゃいませルシオ様」


 可愛らしい嫁に見送られて、おれじゃ翼を羽ばたかせて、空に飛び上がった。


「わあ……」


 イリスを乗せて、大空を飛び回った。


「あの時と同じ景色だ……」


「おねえさんのおばあちゃんはよくこうしたの?」


「うん、いつも背中に乗せてくれた。わたしがぐずると、いつも」


「そっか」


「ありがとうルシオくん」


「ううん、お役に立ててぼくも嬉しいよ」


「本当にありがとう」


 もう一回お礼を言ってくるイリス。


 そのイリスを乗せて、空をしばらく飛んで回った。


 かなり感謝されたし、可愛い女の子を乗せて空を飛び回れるという貴重で楽しい体験ができた。

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