表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/120

ゴキブリ大戦争

「きゃああああ!」


 台所からシルビアの悲鳴が聞こえてきた。


 ナディアと慌てて台所に駆け込んだ。


 シルビアが隅っこで縮こまってるのが見えた。


「シルヴィ!? どうしたの?」


 ナディアが聞く。シルビアが小さくなって震えながら、台所の反対側を指す。


 そこを見た、別に何もないように見えた。


「あっ、ゴキブリだ」


「きゃああああああ!」


 ナディアが言って、シルビアがまた悲鳴を上げた。


 よく見ると、確かにそこに一匹のゴキブリがいた。


 なるほど、これが悲鳴の原因か。


 シルビアに近寄って、聞く。


「シルビア。シルビアはゴ――アレが苦手なのか?」


 コクコクコク。


 まともに返事する余裕すらないみたいで、シルビアはゴキブリがいる方向に背中を向けて、ぷるぷる震えていた。


 女の子だしな、あの黒光りするヤツが苦手なのは仕方ないことだ。


 一方でナディアはまったく平気みたいだった。


「おのれぇ、シルヴィをこんなに怯えさせるなんて……ええい!」


 ナディアは近くにある竹箒をとって、振りかぶってゴキブリに飛びついていった。


 大上段からの振り下ろし、竹箒がうなりを上げて床にたたきつけられる。


 が、あたらない。


 ゴキブリはズザザザとはって逃げた。


「この! この! あたれぇ!」


 ブンブンと竹箒を振り回して約一分、ちょこまかと逃げるゴキブリをようやく退治した。


 ペチャンコになったゴキブリを摘まんで、家の外に放り捨てた。


「シルヴィ」


「ナディアちゃん……」


「もう大丈夫、ちゃんと退治したから」


「ナディアちゃん!」


 シルビアはナディアに抱きついた。


 涙目で、感激しきった様子で。


 ゴキブリを殺ってくれたのだから、シルビアからすれば紛れもない救世主なんだろう。


「しかし、良くないなこれ。ゴキブリって1匹見たら100匹はいると思え、っていうからな」


「え……」


 ビシッ! って固まる音が聞こえたような気がした。


 シルビアがおれを見る、絶望に満ちた顔になる……やべえ。


「……うふ」


「シルヴィ?」


「うふ、うふふふふ。ああ……星がきれい」


「シルヴィ!? どうしたのシルヴィ、大丈夫」


「ねえ、ここから出して? 出して下さいよ、ねえ」


「シルヴィ!?」


 あまりのショックでお花畑に行ってしまったシルビア。


 まずい。


「スリープ!」


「……きゅう」


 シルビアに眠りの魔法をかけた。すぐに効いて、シルビアは眠りについた。


「ルシオくん?」


「しばらく寝ててもらった方がいいだろ」


「そうだね」


 床で寝てしまったシルビアをベッドに運んで、寝かせて、それから台所に戻ってきた。


「ねえ、さっき言った事って本当? 1匹見たら100匹はいるって思えって」


「結構常識だぞ」


「そんな、どうしよう……本当に100匹もいたらシルヴィが持たない」


「退治するしかないな」


「でも、どこにいるのかもわからないよ」


「あそこ」


 部屋の隅っこを指さした。


 さっきゴキブリをみかけた所で、部屋の角に小さな穴がある。


 ちょうどゴキブリが通れそうな位の穴だ。


「あそこから巣に繋がってると思う」


「そっか」


「あそこから入って、巣に行ってまとめて殲滅しよう」


「入って? どういう事なの?」


「スモール」


 自分自身に魔法をかけた。


 体が徐々に小さくなって、ゴキブリの穴が通れそうな位小さくなった。


 相対的に巨大になって――巨人に見えるナディアに言う。


「これで中にはいって、巣を見つけ出して殲滅してくる」


「あたしも行く!」


「ナディアも?」


「うん! シルヴィちゃんを怖がらせたゴキブリを許せない」


「……わかった。スモール」


 ナディアにも魔法をかけて、同じサイズにした。


 持ってる竹箒も小さくなる。


 おれはちょっと考えて、違う魔法をかけた。


「フレイムエンチャント」


 竹箒が赤く光り出した。


「わわ、これなに?」


「炎の力を付与した。それで戦えるはずだ」


「――! ありがとう! ルシオくん!」


 ナディアは盛大に感激した。


 竹箒をブンブンふってみる。


「うん! いける!」


 と、自信たっぷりにいった。


 おれたちは穴の中に入った。


 普段とは違う、見慣れない建物の内側。


 借りぐらしの小人になったような気分だ。


 そんな気分に浸ってる間もなく、早速ゴキブリとエンカウントした。


「でたな、化け物め。覚悟!!!」


 炎の竹箒を振りかぶって、ゴキブリに突っ込んでいくナディア。


 スモールで小さくなった分、ゴキブリはセントバーナードとか、あの辺の大型犬くらいのサイズがある。


 ぶっちゃけちょっときもい。


 でもナディアは怖がることなく突っ込んでいった。


「フレイムレーザー」


 魔法で援護射撃した。


 炎の竹箒と炎の魔法。同時攻撃でゴキブリを黒焦げの真っ二つにする。


「よし! どんどん行こうルシオくん!」


 盛大に意気込むナディアと一緒にゴキブリ退治した。


 ナディアには言ってないけど、念の為にビルドアップとかスピードアップとか、強化魔法をかけて、安全にゴキブリ退治した。


 小さくなって家を隅々から探索したおかげで、ゴキブリを家の中から完全に追い出す事ができた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ