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転生

5月14日、GAノベル様から書籍版が発売されます!


挿絵(By みてみん)


よろしくお願いします!

 目を覚ますと、全然知らない場所にいた。


 どうやらおれはベッドの上に寝てるけど、寝てる場所がまったく知らない場所。


 一人暮らしのかび臭い安アパートでも、実家で物置に化しているおれの部屋でもない。


 広くて天井が高くて、やたら広いベッドが置かれてる部屋だ。


 なんでここで寝てるんだ?


 記憶をたどる、寝る前の記憶を。


 たしか本屋にマンガを買いに行って、その帰り道で突っ込んできたトラックにはねられて――ってはねられて!?


 おれは慌てて体を確認した。起き上がってベタベタ触った。


 特に怪我はない、ないのだが。


 体がおかしい。


 張りのある肌に、プニっとした短い手足。


 まるで子供、それも幼稚園くらいの子供って感じだ。


 手を動かしてみた。動く。


 足をバタバタしてみた、バタバタする。


 グワシッ! は指が短すぎでできない。


 とりあえずやろうとした通りに体は動く。


 ってことは、このガキの姿がおれなのか?


 どういう事だ?


 最後の記憶が交通事故、目が覚めたら子供の体になってる。


 これってもしかして……異世界転生?


「おはようございます、お坊ちゃま」


「え?」


 声の方向を向いた。メイドが見えた。


 ロングスカートにエプロン、萌え系じゃなくてちゃんとしたメイドだ。


 メイドはおれの方に近づいてきて、ぺこりと頭を下げて、言った。


「おはようございます」


「お、おはよう?」


「失礼いたします」


 メイドが服を脱がそうとしてきた。


「ちょ、ちょっと?」


「どうなさいましたか?」


「どうなさいましたかって……何をするんだ」


「なにって、いつも通りお坊ちゃまのお着替えを手伝わせて頂くのですが。なにかまずかったでしょうか。あっ、もしかしておねしょ――」


「そんなことはしてない!」


 ヤバイ濡れ衣を着せられそうになったから、かぶってたシーツをぱっと広げた。


「でしたら、問題はないですよね」


「……うーん」


 訳わからないうちに、とりあえずメイドに着替えさせられた。


 髪をくしですかされて、パジャマを脱がされて別の服に着替えさせられた。


 貴族っぽい服だ。


「失礼いたします」


 同じ事をいって、メイドが部屋から出て行った。


 やっぱり訳がわからなかった。


 状況をもっと把握するために、おれは部屋を出た。


 廊下を歩き回って、きょろきょろあれこれを見る。


 いた場所は建物の二階だったので、階段から一階におりた。


 一階も見て回る。どうやらちょっとした屋敷みたいだ。


 一人のおじいさんを見つけた。じいさんと目が合った。


「ちゃんと起きれたのかルシオ、感心感心」


 おじいさんはおれの頭を撫でた。


 ルシオ……ってのはおれの名前か?


「えっと……」


「どうした、まだ眠いのか?」


「そうじゃないけど……ルシオって?」


「自分の名前を忘れたのかルシオ。やっぱりまだ寝ぼけてるようじゃな」


 どうやら本当におれの名前らしかった。


 おじいさんは愉快そうに笑う。


「ねえねえ、おじいさんはだれ?」


 おじいさんに聞いた。コ○ンばりの子供モードを意識して。


「じいちゃんの顔をわすれたのか、んん?」


 おじいさんはやっぱり楽しそうに言って、更におれの頭を撫でた。


 このおじいさんがルシオの祖父ってことなんだな。


「どうやら本当に寝ぼけてるようじゃな。朝ご飯食べたら二度寝するといい。じいちゃんは書庫で本を読んでるから、昼くらいに遊ぼう」


「本?」


「本は好きか?」


 おじいさんが聞いてきたけど、どう答えていいのかわからない。


 だって、プロフィールの趣味欄に「読書」って書きながら、読んだものが全部マンガだから。


 マンガは大好きだけど、「書庫」って所にマンガはないよな。


「よし、じいちゃんの書庫を案内してやろう」


 じいさんはおれを抱き上げ、歩き出した。


 そしてある部屋に入る。


「おお」


 部屋の中は本棚ばかりで、本がぎっしりだ。


 おじいさんはおれを下ろした。


「どうだ、すごいじゃろ。おじいちゃんが生涯かけてあつめた魔導書の数々じゃ。個人でこれほど集めてるのはなかなかないぞ」


「まどうしょ?」


 聞き慣れない言葉が出た。


「うむ、魔法やスキルなどを記載した書物の事をいうのじゃ。読みほどけば魔法などを覚えられる魔法の書物、二重の意味でな。この部屋だけでこの屋敷の数個分の値打ちはあるのじゃ」


「そうなんだー」


 またよく分からないけど、その魔導書ってのはものすごく高価なもので、読めば魔法とかスキルとかが使える様になるのか。


「すごいね」


「おじいちゃんは読みかけのヤツを読んでるから、ルシオも興味を持ったら好きなのを読んでいいぞ」


 そう言って、おじいさんは部屋の一冊の本をとって、部屋の真ん中にあるロッキングチェアに座った。


 それを開いて、うんうん唸る。


 よっぽど難しいのか、ページを全然めくれてない。


 魔導書ってのがどんな本なのか気になって、近づいて、チェアをよじ登ってのぞき込んだ。


「え? マンガ?」


 おじいさんがうーんうーん唸りながら読んでいたのは、普通にマンガだった。

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