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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

目隠し姫と優しいミカーリオ

作者: 柊 風水
掲載日:2015/09/24

私の一日はミカーリオのデコピンで目を覚ます。


ミカーリオは律儀に毎日同じ時間に私を起こす。私は目が見えないのだが、何時も何時も同じ時間に遠くの教会の鐘が鳴るので大体分かる。

私は寝相が悪い為ミカーリオ特製のベッドは、ギーと重い音を出しながら開いた。そして、ミカーリオは心配性で着替えた後、顔を洗う為洗浄場に行く時や二人っきりの時は大体私を抱えて移動する。

そんな事をしなくても杖さえあれば動けるのにと何度も言ってもミカーリオは止めない。


朝食はミカーリオが担当する。

私は朝はあまり食欲がないから、クロワッサン二つにスープに飲み物があればお腹がいっぱい。ミカーリオはやっぱりオトコだからベーゴンエッグがあって、クロワッサンは三つにスープと一品だけ量が多い。ベーコンの香ばしい匂いにお腹の音がなる。その音が鳴るたびにミカーリオはちょっと笑って、ベーコンの切れ端を私に食べさせる。お腹がいっぱいなのにミカーリオが毎日くれるベーコンの切れ端だけは何故か食べられるから不思議だ。


朝食を食べ終わるとミカーリオは薪を割る。私はその間は部屋の中の掃除だ。でも、私は目が見えないから物を壊さない様に床の拭き掃除は出来るだけ雑巾で拭いて、床にあるゴミは持ってきた袋に捨てるだけの簡易な掃除だけど。普段使っている居間はあまり広くはないから拭き掃除は直ぐ終わる。床にあるゴミを拾い終わると私の掃除は終わるけど、ミカーリオの薪割りはまだ終わらない。ミカーリオの薪割りがすむまで私は自分で出来る掃除を見つける事にした。今日は机に散らかしてあった本を本棚に戻す事に成功した。ミカーリオはモノはあまり置かない主義だから本棚は直ぐに分かる。

ミカーリオが家に戻ると私が余程自慢した顔をしたのか、ちょっと呆れた様に笑って「良くやった」と頭を撫でた。……ミカーリオは私を子供扱いし過ぎな気がする。


昼食は私が担当する。

目が見えないけど、身体は覚えているようである程度は出来る。でも材料のこまかな量や焼き加減などはミカーリオの手伝いがいるけど。

今日はパンケーキ。私はフルーツや蜂蜜やクリームたっぷりの甘いパンケーキだけど、ミカーリオのはジャガイモやサーモン、ツナとコンビーフにマヨネーズがたっぷりかかっている食事系のパンケーキ。

偶に私も甘くないパンケーキを食べるけど、ミカーリオは甘いパンケーキは食べない。ミカーリオは甘いのは苦手みたいだ。枚数も私は五枚に対してミカーリオは十五枚と三倍の量で食べる。オトコノコは食べる量が多い様だ。


午後はミカーリオと一緒に街で買い物。ミカーリオと手をつないで街を歩くのが日常だ。ミカーリオの手はふわふわで私の手が隠れるぐらい大きな手だ。

街はいつ来ても賑やかで、いろんなお店が客寄せをする。ミカーリオが買い物をしようとお店によると必ず他の人が私を撫でたりほっぺをぷにぷにしたりした。特に姦し娘(ミカーリオ談)である三姉妹さん達は隙さえあればお化粧されたり髪を弄られたりしている。一瞬の出来事だからされるがままである。

でも、ミカーリオが見つけて一発怒鳴ると、三姉妹さんは蜘蛛の子を散らす様に逃げる。三姉妹さんが逃げるとミカーリオは化粧を落として弄られた髪を元に戻す。これがこの街で買い物する時の日常。


買い物が終わると家に戻ってミカーリオは森に行く。私は家でお留守番。

ミカーリオは森で薪を拾ったり狩りをしたりしている。一時間もあれば直ぐに戻ってくるだろう。

私はミカーリオが戻るまで家で点字の本を読んだり、音楽を流したりして時間を潰している。今日は街で買い物した時に買った点字の本を読んでいる。内容は人なざる者と少女の恋だ。クライマックスな所で突然――――


ドアが大きな音を出して開いた。

ミカーリオは乱暴にドアを開けない。こんな壊しそうな音を出すのは必然的に……

「コンナトコロニイマシタカ 」

無機質な機械的な人を不快にする声。

「オイタワシヤコノヨウナトコロニスンデイテサアモウダイジョウブデスヨイッショニシロヘカエリマショウ」

化け者達は私の手や肩に触れる。それが汚くて汚くて恐くって怖くって。ひたすら暴れた。

だけど化け者達は私を縄で縛って連れ去った。折角朝綺麗にした部屋を荒らして。

縛られても暴れていた私。そんな私の態度に化け者達は苛立っているようだ。乱暴に扱うせいで身体が痛い。

「メカゲバラノクセニアバレルナ 」

「オイ テイチョウニアツカエオウヒノゴメイレイダ 」

「ソレニシテモオウヒモヒトガワルイジブンガステタムスメヲリンゴクにトツガセルタメニツレモドスナンテ」

「リンゴクノオウハオンナズキデソウトウノスキモノトキクカラナジブンノムスメヲヤルツモリハナイダロウ」

「ワガオウヒナガラコワイナ」

化け者達が喋る度に吐き気がする。ああああ、嫌だ嫌だ!!

「ソレヨリモコノコノメカクシヲハズシタホウガイイダロウ 」

「ソウダナ」

化け者達は私のお守りに手を掛けてくる。やめて! それはミカーリオがくれた大切なものなのに!!

抵抗空しく私の大切なお守りが奪われる。おぞましい光が差し込む。


助けてミカーリオ!!


そう、私が叫んだ時だった。


頬に暖かい液体が触れる。



化け者達の悲鳴、怒号。そして何かを切り裂く様な鈍い音。大きなモノが倒れる音。



静かになると頬についていた液体をゴシゴシと拭われた。ふかふかの大きな手に私は安堵して大きな身体に抱きついて泣いた。


ミカーリオに拾われた当初の様に。大声で泣いた。

そしてミカーリオは初めて会った時と同じように、私が泣きやむまで頭を撫でて、涙が止まるとお守りを付けてくれた。





夕飯は私とミカーリオと一緒に料理する。

今日はビーフシチュー。野菜や肉が大きめにカットしたヤツ。それにご飯と温野菜。デザートは私が好きな青リンゴのゼリー。ミカーリオがどんどんと食べさせるからお腹がはち切れそうになった。

お風呂や着替えはいつもは一人で出来るけど、昼間のせいなのか、今日はミカーリオが手伝っている。恥ずかしいけどどうもミカーリオは淡白な性格のようだ。官能小説の様な出来事は今まで一度も起きた事はない。(別に不満はない。……本当に不満ではない)


いつもはミカーリオ特製のベッドに寝かせるのに、今日はミカーリオのベッドに一緒に寝る事になった。

ミカーリオの匂いがするベッドでミカーリオの体温を感じながら眠る。それは何とも幸せな事だろう。

だから私は「大好き」とつい言ってしまった。ミカーリオは溜息を吐いて私のオデコにデコピンした。

「さっさと寝ろ」と何とも薄情な事を言われる。


でも、毎日眠るまで頭を優しく撫でる手を、眠る直前に「おやすみエンジュ」と言って額にキスしてくれる。

私はそんな何気ない日常を、ミカーリオを愛している。



















たとえミカーリオが恐ろしい魔物だという事を、とっくの昔に私の眼は完治している事も、言わないでおこう。


この幸せを続く為に。















昔々、ある所にお姫様がいました。お姫様のお母様は元は低い身分の女性でしたが王様に見初められ王妃になる事が出来ました。しかし、お母様は心を決めた相手がいましたが、王様が無理やり二人を引き裂き、相手を殺してしまったのです。

しかも無理やり身分の低いお姫様のお母様を王妃にさせた為に周りの反感は凄まじい物でした。特に許婚だったそ側妃の怨みは恐ろしい物でした。


お姫様のお母さんはお姫様を産むと直ぐに亡くなりました。そして側妃はお姫様のお母様と自分の立場を入れ替えてしまいました。王はお姫様のお母様を失ったせいでほとんど抜け殻同然でした。

お姫様は継母や周りに冷遇されました。しかしお姫様は悲しむ事も人を恨む事もありませんでした。お姫様は感情という物が理解出来なかったからです。


そんなお姫様の様子に怒った継母はお姫様を恐ろしい人食い魔物がいる森に捨てたのです。賢かったお姫様が戻らない様に視力を薬で奪い、最後の嫌がらせとして母親譲りの美しい髪を無残に切り落としたのです。

暗い森の中に一人ぼっちになったお姫様は初めて『悲しい』と思いました。

それは自慢の髪を奪われた事なのか一人で暗い森の中にいる恐怖なのか分かりません。それでも『悲しい』と思い、『涙』が零れ落ちて止まりませんでした。


そんな時に出会ったのです。『人食いの魔物』に。

最初、魔物はお姫様を食べようとしました。

たげど、あんまりにもお姫様が声を上げず静かに泣くもんですから、思わずお姫様の頬を恐る恐る触れました。

お姫様は初めて、自分の頬に触れてくれる人を見つけました。その手があまりにも暖かったものですからお姫様はわんわんと大きな声で泣いてしまったのです。


魔物は人の、特に少女の甲高い泣き声は喉仏を引き裂ぐ位大っ嫌いでした。でも、お姫様の泣き声だけはどうしても嫌いになれず、それどころか早く泣きやんでほしいと願ってしまったのです。魔物は普段使う半分以下の力加減でお姫様の頭を撫でました。泣きやむまで何度も何度も撫でました。


魔物はお姫様が目が見えないと知ると、いつ目が見えるようになるのではないかと恐れ、『お守り』と嘘をついて目隠しをして連れて帰りました。

魔物はけして人間には教えない自分の名前をお姫様に教え、お姫様は他人にはけして言われなかった自分の名前を教えて二人で協力しながら暮らしました。


途中でお姫様の視力を取り戻したりしましたが、けしてそれを魔物には教えませんでした。時にはお姫様の故郷の兵士がお姫様を連れ戻そうとしましたが、魔物が皆倒しました。


色々大変な事があるけれど、お姫様と魔物は何時までも幸せに暮らしましたとさ。




                                          

                                               お わ り



    世界観と登場人物


・世界観は中世に現代の便利グッズや食べ物が幾つかある様な世界。ただし機械などないのだが、そこは魔法でカバーしている(例:冷蔵庫の様な魔法の箱がある)

・二人が買い物した街は亜人(人間達には魔物と呼ばれている)達が大勢いる街。偶に人間も買い物する為エンジュがいても街の人達はそんなに可笑しく思っていない

・三姉妹は実はサキュバス。エンジュが可愛くて仕方がない。

・亜人は人間で言うエルフやドワーフ、ゴブリンやオークなどの人ではないもの。種族は違うけど、亜人同士で争う事はない。

・亜人と人間との関係はある国では物凄く仲が良く、ある国では逆に仲が悪い。迫害されたりしたりと仲が良いのか悪いのか良く分からない。良くも悪くも無関心な人達(亜人も)が多い。


エンジュ

街の人達から『オチビちゃん』又は『目隠し姫』と呼ばれて可愛がれている。ミカーリオが大好き。ミカーリオが良いなら食べられていいと思っている。少し病んでいる。

人間不信。人間を『化け者』と思っている。


ミカーリオ

人間嫌いと言う訳ではなく、人間の肉が大好きな亜人。見た目は狼、目つきは大量殺人鬼以上に悪い。亜人でも怖がっている人もいる。

エンジュに一目惚れをして、特製の鳥籠に監禁する程の溺愛+ヤンデレぶり。いつかエンジュが自分の姿を見て怖がったら食べるつもりだと言うが、絶対にに食べない。エンジュに嫌われたら絶対に死ぬ。つまりツンデレ。エンジュが目が見えて自分の姿を知っている事を知らない。永久に知らない。


化け者

正体はエンジュの継母である王妃の命令でエンジュを連れ戻しに来た兵士。

なのでけして誤字ではないので悪しからず。

彼等が言っていたのを翻訳すると

「こんな所にいましたか!」

「おいたわしや、この様な所に住んでいて。さあ、もう大丈夫ですよ。一緒に城へ帰りましょう」

「妾腹のくせに暴れるな!!」

「おい! 丁重に扱え。王妃のご命令だ!!」

「それにしても王妃も人が悪い。自分が捨てた娘を隣国に嫁がせる為に連れ戻すなんて」

「隣国の王は女好きのスキモノと聞くからな。自分の娘をやるつもりはないだろう」

「我が王妃ながら怖いな」

「それよりもこの子の目隠しを外した方が良いだろう?」

「そうだな」

と言っている。


王妃(元側妃)

エンジュが人間不信になる原因でもあるが、視点を変えればある意味被害者。

王妃になるつもりで色々我慢して勉強を頑張ったのに、身分の低い女(エンジュの母)にその座を奪われ、側妃になってしまった可哀想な人。でも、エンジュの母親に少量の毒を仕込んだり、エンジュを迫害した挙句、視力を奪い髪を切り刻んで森に捨てた点においては全然同情出来ない。

『王妃』としては素晴らしい言動をした。


側妃(元王妃)

エンジュの実の母。美しくてどこか儚げだった。自分の身分に合う男性と恋愛結婚するつもりだったのに、王に横恋慕され、自分の愛する人を奪われた挙句、碌な王妃教育をされないまま無理やり王妃にされる。

周りから冷たい目で見られるが、恋人を殺された時点で心が死んでいた。

王妃(この時は側妃)に(死なない程度だが)毒を盛られ、産後の肥立ちが悪く亡くなった。

天国で恋人と再会している。


王

諸悪の根源。全ての悲劇の原因。同情するところがまったくない。

自分勝手で王としての才能がなかった。ほとんど宰相(国第一国民はもっと大事な主義者)の傀儡だった。もし兄弟がいたら間違いなく彼を王にしなかった。剣も頭も顔さえも普通で褒めるところがないある意味凄い人。

ミカーリオはエンジュに出会う切っ掛けになった事に関しては感謝しているが、あったら簡単には殺さず、苦しめて殺すつもりにいる。


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