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ども、読者の皆様こんばんわ。
さて、今回はちょっと長めです。後、前回に引き続き”八咫烏”との契約編です。
では本編をどぞ。
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「………ない。」
さっきから探しているんだが、中々見付からない。測量室と保健室。
さて、試練についてだが、一応謎は解けている。多分亡霊2体は船の上で存在しなければ直接命に関わる存在だ。
即ち航海士と船医。
理由?ヒントを元にして、“複数の終着”を“複数の(命の)終わり方”と考えて、その上で“命に関連する職業”について考えれば分かり易いよな。つか、あそこまでヒント出していいのか?答え言っている様なものだろう?
まあそう言いながら、迷っているんですけど。
つか、さっきも思ったけど、この船広過ぎだから!明らかに船の大きさを無視している。……だって外から見えなかったけど、農園とか大浴場・露天風呂とかプールが有って、挙げ句に訓練所まで常備されていた。また魔術か?
はぁ疲れた。けど、試練の続きをしないといかんな。
………………………………
やっと見付かった。保健室が。
「よ、遅かったな、兄ちゃん!!」
で、本当にこの人船医か?何か肉屋の亭主の方が似合う様な……
「おい、今何か失礼な事を考えなかったか?」
「あ、いえ……ただ、何でこんな微妙な所を診療スペースにしているのかな〜って……」
「ああそれか?俺が狭い部屋を所望したからだ。広過ぎると相手の顔が見にくいだろう?」
……ちゃんと医師やっているのな。
「あ、鬼灯遥です。宜しくお願いします。」
「俺はドグラス・G・ハーランドだ。亡国ガリスシンシア学術大国出身と言ってもまあ分からんだろうけど、まあお尋ね者だ。“元”だけどな。経歴については今度話してやるよ。」
お、マジか。ちょっと“亡国”と言うのが気になっていたからな。
「あ、御願いします。」
「で、測量室は見付かったのか?」
「それがまだ……探しているんですけど。」
「まあアイツの部屋はなぁ〜……仕様がない、ヒントをやるよ。測量、つまり地図を書く時、必要な事何だが船の上ではある部分を除いて厳しい。さて、それは何処か?ちなみに波と関係あり。」
!!!
「分かりました、行ってみます。また後ほど。」
「了解、八咫の所にいるから。」
俺は船の中心部へ向かった。
盲点だった。測量には光が必要だと思ったので、真っ先に外側だと決めつけていた。後は全体を見渡せる部分だと思っていた。でもどれも不正解。
正解は揺れの少ない所。即ち中央深部。船の重心部だ。そこなら何か測量して線を引いたりしても曲がりにくいし、それに……
「酔う事も無いだろうな。」
そうだ、それが大きいのではないだろうか?“船酔い”については全然頭になかった。俺自身物心ついた頃に船旅に出た事があったからな……(遠い目)。
さて。もうそろそろ着くな。ここか。一応測量室って書いてあるし。
「失礼します。」 ガチャン
部屋の中はカオスになっていた。本棚が倒れて内部の紙やら本がバラバラに積み重なっており、埃っぽかった。ここに本当に誰かいるのか?
「…………(〜〜〜!)………………」
ん?何か聞こえた様な……
「(助けて〜!!押し潰される〜〜!!!)」
………………まずい、誰かが本棚の下敷きになっている。
「直ぐに助けますから落ち着いて下さい!!」
慌てて本やら資料を退けた。すると………
「いや〜マジで死ぬかと思ったわ……サンキュー。つか、俺既に死んでいたわ……ははは」
何かチャラい感じの茶髪&ピアスのエルフ…幽霊がいた。不良か?
「あ、ユーの名前は?つか、同族?」
「……俺は鬼灯遥です。1/4ハイエルフですね。貴方は?というか、どうしてこんな事に…」
「おお、マジか?!ハイエルフね…ああちなみに俺は〜ジャコビウス・F・ホーエンハイム。大体ジェークで反応するから〜、ヨロ〜。後この状況はノーコメントで。」
「あ、俺は遥でいいので。」
何か軽い感じだな……まあでもヒス起こす奴よりは断然いい。
「さてと、多分これから継承式兼使い魔契約の儀をするだろう?テキトーに駄弁りながらゆっくり行こうぜ〜」
「はぁ。」
「そうそう、俺と喋る時は敬語要らないから〜」
「……分かった。なら質問いいか?」
「ん、何?」
「事情はいいとして、この部屋の掃除はどうする?」
「?!……………どうしよっかぁ〜……また八咫ちゃんに怒られるなぁ〜…ははは………はぁ」
結局放置する事にした。つか、アレを短時間で掃除とか、無理ゲー過ぎるから。
……………………………………(移動中)…………
「さて、皆さんお待たせ。これから契約したいと思います、と言いたい所だが、ちょっと職員を呼ばないと出来ない事になっているんだよな……」
甲板に集まって来てくれていた2人と1匹は、ずっこけた。まあ確かに出端を挫かれた感じだろうからな。刀2振りは職員無しで契約出来たのにこっちは何で出来ないんだろうな?
同じ様に“呪い”は有るのに……謎だ。
ああちなみに今話している以外の乗組員は船長と一緒に成仏コースらしい。そもそもこの海賊団?は、同時期の“漂流者”同士の集いだったらしいので、始めから船自体と2人以外は皆契約出来なかった様だ。
だからこちらの様子を遠巻きに見ながら宴会している。成仏前の最後の酒らしい。
「そう言う訳で、ちょっと行ってきます。」
「いや、行かなくても大丈夫みたいだぞ、何かこっちに向かって来ているからな。」
「?!」
八咫烏に言われて何か来ている様な“感覚”がする方向へ“見破る”を掛けた所……
「やはり奴はまだまだだな。俺が行っていなければどうなっていたか……」
「全く契約して早々ここまでハラハラさせるとは……」
「……僕はこっそり着いて行くべきでした。」
「ま、まあでも大丈夫そうですし、それに伊達に我々の神々の親族では……」
「でもね〜まさか“あの”海賊船の試練を受けるとは思わなかったわ………心配かけたんだから、後でお姉さん、お仕置きしようかしら。」
……お仕置きはちょっと勘弁だな。でも確かに契約して直ぐ置いて行くと言うのは悪かったとは思う。それについては誠心誠意謝ろう。
まあ今後の態度で挽回するしか無いな……ハァ〜…
暫く経って俺の従魔’s & 職員が来た。そんでやっぱり文句を言われたので日本人の十八番、DO☆GE☆ZAで一旦許してもらった。
その後、契約の件を職員に切り出そうとしたら
「あの、まさかとは思うのですが………攻略したんですか?」
本人が、恐る恐る聞いて来た。俺は自然と口角が上がり
「ああ、後は契約だけですよ。」
と言った。職員の驚き様は見事だった。始めから失敗すると思っていたらしい。で、自分が呪解する事になると思っていたそうだ。
まあ確かに“英語の苦手”かつ“剣術を知らない”人だったら試練は駄目だからな……だから別に怒っていないから、そんなに怯え無くても良いと思うが…。
「あ、で、では、契約に、掛かりたいと思います。」
「分かりました。永谷さん、では貰いますよ。安心して成仏して下さい。」
「そうかそうか、持って行け泥棒!!」
そう言うと、今度はさっきまで騒いでいた団員達の方へ視線を向けた。それだけでしんと静まり返った……かなり統率された優秀な集団だった事が分かる。でもそんな凄い連中でもやっぱりこれから“成仏”するのが怖いのか、暗い顔をした奴等もいた。
そんな彼らに船長、永谷悟郎は………
「さて、“野良鮫”海賊団諸君。船長としての最後の口上を述べさせてもらう。
これから俺達は確かにこの世からは“消える”。だが、それは決して今までの“俺達”が全て失われる訳ではない。記憶や経験、思想等。それらはここにいる次期船長、鬼灯遥がちゃんと”受け継いで”くれる。こいつもそれを承知でここを継承すると言って来たんだ。
それにな、別に俺達の冒険はここで終わった訳ではない。“この世”での冒険はこれで終わりだ。だがそれは同時に“あの世”での冒険の門出でも有るんだ。
いいか、“あの世”に行って俺達が散り散りになろうが“野良鮫”海賊団に所属していた事は変わらない。俺に取ってお前達はずっと大事な団員だ。だから……また一緒に“あの世”でも一旗上げてやるぞ!!!着いて来てくれるか?」
『『『はい、船長!!!!!!』』』
「ならここでいつまでもグダグダしてはいられないな?行くぞ!」
『『『オオオオオォォォォォ!!!!!!!!!!!!!』』』
そう言うと同時に全員が白い光に包まれた。そして眩しいと思ったと同時に
「じゃあ後は頼んだぞ、“八咫烏”の5代目船長、鬼灯遥。」
と声が聞こえ、団員達共々この世から消えた。
「う、永谷の馬鹿野郎……グスッ」
「おいおい、漢と漢の分かれに涙はあっちゃならねぇってのに…」
「……今回は仕様がないよ、ドグ。八咫はこういう経験をもう4回もしているんだから。」
「………まあな。だがよ………………」
「あーもー、そう言うのは辞め。それにこれから契約だろう?」
「そうだな。悪いな、5代目。」
「いや、別れが辛い事位は知っているし、別にそこまで気にしていないさ。ただ、これから責任重大だと改めて思っただけだよ。」
「そうか、まあ宜しく頼むよ。」
「まあ俺達もいるし〜大丈夫だと思うよ〜。頑張ろう。」
さて、永谷元船長の言葉を借りるなら、“俺達の門出はここから”だな。
次回
無事船の引き継ぎを行った遥。そして移動中、投下される爆弾(発言)。その影響で遥は………。果たし彼とその従魔達は無事に異世界へ移転出来るのだろうか?
*嘘は言っていません。ええ、嘘ではないです。