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ども、読者の皆様こんばんわ。
さて前回で主人公はボロい亡霊船を見つけました。そして、歌を聞いて契約のための”試練”について考察した所で終わりましたね。
今回は戦闘回です。正直描写に自信が持てませんが、なるべくその場の臨場感を出そうと努力はしました……本当に難しいですね。他作品のリアルな戦闘シーンを書ける作者達は本当に凄いと思います。精進していつか書ける様に頑張りたいです。
では、本編をどぞ!
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船の横に梯子を見つけたので登った。ああちなみに“自力で試練を受けたい”と言う名目で、クロエは何とか説得して置いて来ている。
それにしてもこれだけ古くて壊れかけに見えるのに、俺が登っても木の軋む音が一切しないってどう言う事だ?それに登り終わって明らかに床板の腐っている甲板に立っても壊れないとか……
まあいいや。
さてと、一応着いたが何を……“summon”、つまり呼べばいいのか?
「すいません、御免下さ〜い。船長又は船員の方はご在宅ですか?」
………何かアレだ、とても試練を受けに来た人に聞こえないな。むしろ郵便配達員とか、隣人にお裾分けを持って行く人みたいに聞こえる。
「あ、挑戦者の方ですね。船長が奥でお待ちです。」
そして、答えた身体の透けた元乗組員?に俺は連れられて船内に入って行った。
船室は、予想外に明るかった。嬉しい限りだ。まあ、光源は……
「おう、ようやっと来たか!」 「頑張れよ、兄ちゃん!!」
「あ、ども。頑張ります。」
元船員の身体の透けたオッサン達だって言う事を無視すればな。
そして案内霊?は円形のガラス付きの重厚な扉の前で止まった。こちらを向くと少し心配そうな顔をしていた。
「この部屋の中に我々の頭がお待ちだ。死ぬなよ、少年。」
「まあまだ死ぬ気はないので、せいぜい歌通りに勝って勝鬨を挙げますかね。」
そう言い返すと、口角を上げてニヤリと笑った。
「ガハハ、お前見かけに寄らず言うな〜!!是非船長に認められてくれよ、こっちは高級な酒でも用意しておくかな?」
「まあ成る様に成るさ。それと酒を呑むなら肴も用意しておけよ。」
「お前と船長の勝負でも肴にさせてもらうよ。」
船員はそのまま消えた、跡形も無く。マジもんの亡霊だったようだな。実体が有る分、分かりにくい。まあ亡霊自体初めて見るけど……。
重厚そうな扉を強めにノックすると、内側からノックが一回却って来た。入出しても良さそうだな。
少し重い扉を開き、部屋に入った。部屋は薄暗いが、それでも天井が高く、広々とした空間が広がっている事は分かった………ここなら一応大業物の日本刀を振り回しても問題は無いな。
部屋に踏み込んだ瞬間、背後で扉は閉じた。何かこの感じ……お化け屋敷の類みたいだな。まあ違いは命懸けって所と、相手はリアル亡霊だって事だけど。…全然違うな。
とか呑気な事を考えていると、何かナイフが頭上0.1mmを通り過ぎて行った。
「おいおい、やっとここを見つけてくれたと思ったらまだまだ甘いガキかよ……敵前でボケッとしているとか………これ試練与えて大丈夫か?」
「オッサンこそガキだって舐めない事だね。」 ヒュンッ
俺は通り過ぎたナイフを投げ返してやった。すると船長?は二本指でキャッチすると……
「ヒュウ〜、やるじゃん。ガキだって見くびって悪かったな、でもこれで遠慮なく……決闘出来るな!!」
そう言いながら椅子から立ち上がって脇差しを抜いて構えた。先程の緩い雰囲気が一変、今にも刺さりそうな鋭い空気を醸し出した。俺も虎徹と村雨を抜いて、二刀流の構えを取った。
「ほう、あの2振りの新たな主人か……」
船長?は驚いた顔をしていた。そして懐かしげに目を細めた。
「知っているのか?」
「まあな、元の持ち主の事は良く知っているよ。」
船長は遠い目をしていた。ここで気を緩めるか……やはりこの連中は2900年間ここにずっといたのか、実践から随分離れている様だな。もし俺の親父だったら迷わず攻撃して5撃は与えている所だが……
「おい、決闘中だぞ。次は無いからな。」
「お、おう、悪いな。」
ここは一応決闘だし、実力を見てもらいたいから我慢した。でも、正直力が抜けそうだ。
「さて、仕切り直しだ。」 「………。」
再び鋭利な空気に戻った。
それから暫く互いに睨み合いが続いた。
正直相手には隙がない。こいつ出来るな、と思った。もしかしなくとも達人級、それも、人を切った事が有るな。……まあ海賊稼業をしていれば当然か。かく言う俺も経験有るけど、残念ながら。
ちなみに俺は、敢えてどこからでも責められる様に無の構えを取った。勿論二刀流で。
お、来るな。上段からか。
ヒュン、キンッ、キンッ、サッ、キイィィィン
………危なかった。予想以上に動きが俊敏だ。でもこれだったらもう少しギアを上げても良さそうだな。相手も今までは様子見、これから本気だろうからな。
そう思っていたら、やはり相手の剣気が更に強くなった。さて、俺の様な若造相手に本気を出してくれたのならそれなりにお礼をしなくては。少なくとも“免許皆伝”先の道場が泣くな。
今度は下段、地の構えからか。珍しい。だが、俺は敢えて上段から攻込む。
キイィィィン、ザクッ、スッ
勝負有り。
虎徹で30%力を入れたら、相手の刀が切れた……真二つに。ゆえに船長は得物を失い、首に村雨を突きつけられて負けた。
「ハァ……俺の負けだ。まあでも安心した。その強さがあれば、大抵の敵は相手にならないだろう。ここはもう任せられる。」
「そうか。」
「ああでも、待てよ………もう1つの試練+αあったわ。見守っているからしっかりやれ。」
「分かった。って、刀どうやって治した?!」
そう、二つに裂けた刀が元の状態に戻っていた。
「ああこれか?実はこれは……こうなっているんだよ。」
刀は船長に一撫でされると、ブルリと震えて形状を指輪に変えた。次いでに鞘も無くなっていた。
「………従魔か?」
「いや、魔道具…魔武器の一種だ。そうだな……これから成仏するし、俺が持っていても宝の持ち腐れか。さて……」
何処からとも無く羊皮紙と羽ペンを取り出し、何かを書き付けた。終わったら、全て消えた。それから指輪を外すとこちらに投げた。
「?!……いいのか?」
「いいんだ。これはくれてやる。便利機能満載で、冒険には重宝したものだよ。ああちなみに登録方法は自分の血を吸わせる事な?」
「……呪いの剣みたいだな。」
「盗まれるよりマシだろう?これで後100年は再登録不要だな。まあでも呪いね〜……身体から100年離れないと言う意味合いではそうなのかもしれん……………。」
「………まあでもくれるなら、使うさ。」
そう言いながら、俺は親指を噛み切って指輪に血を垂らした。すると指輪は球体となり、血が染み込むと共に細かく振動してから……腕輪になった。驚いて見ていると、いつの間にか俺の腕へ蛇の形になって巻き付いた。
それはさっきの指輪とは大きく異なる金属とデザインをしていた。金属は黄色光沢から白色光沢に変わり、指輪時のモチーフであるエメラルドは無くなっていた。代わりに鱗形の翡翠が全体へ所々散りばめられ、蛇の目の部分はスターサファイアとなっていた。
「おお蛇か。俺の時より忠誠心、つか、執着心が高いみたいだな……それなら200いや、500年位は大丈夫だな。さて、形状変化させてみろよ。」
蛇型の腕輪になった時、武器化の使い方が頭に流れ込んで来た。虎徹と村雨が有るので武器は不要だと思ったら、別の使い道を提示して来た。だからそれを試してみた。
「………おお、すげーじゃん。俺の時はせいぜい篭手くらいだったのに………………流石蛇、執着しまくっていんのな。」
「!!!」
俺も流石に驚いたよ。だって金属の質量とか完全に無視して………鎖帷子になったんだから。しかも軽くて丈夫だな、これは。
それにしても…完全に物理と化学に喧嘩売っている様な現象だな。
次回
「なあ、この元指輪って本当に無生物か?」
「………」←目を逸らす船長
「いや、何かさっきから時々蠢くんだが………」
「…………ピ、ピュ〜♪」←口笛を吹く船長
「おい、どうなんだ?なあ、マジで呪いのグッズなのか?!」
さて、蛇に見入られた遥は一体どうなるのか?
*蠢きも呪われても無いです。それはきっと本人の錯覚です……多分。