表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/75

俗に言うチュートリアルってところか。 Ⅲ

サブタイ通りに、非常に説明が長ーいです。

スフィアはこの世界においてもっとも広く使われている魔法となります。

十三




「よし、決めた!」


 五分ほど悩んだが、やはりパスワードにも組み込んだようにあの属性がいいだろう。


「では登録するとしよう。スフィアの白い円に触れてくれ。今度は一度だけで良い」


「あいあいさ!」


 白い円に触れると青い波紋が広がり、下に、左から赤、緑、紫、水色、白の明滅、黒の明滅が表れた。


「いくつか色のついた円が出てきたであろう。それは左から、炎、風、雷、凍結、光、闇を表している。さあ、すずめ殿が決めた属性の色を押してみてくれ」


「よーし……これだー」


 私が押した色、それは白の明滅、つまり光だ。やはり勇者といえば光だろう。


 スフィアの表面から、私の押した部分以外が消えると下の方にいくつかの数字と、白い円の明滅、それらを繋げるように矢印が現れた。


「数字と矢印が表示されているであろう?」


「ぶわーって出て来ました」


「うむ、それが登録用表示面だ。では説明するとしよう。一気にいくのでしっかりと聞いてくれ」


「あいあいさ!」


 言われたとおり、聞き逃さないように集中して耳を傾ける。


「まず全ての数字が一になっていると思うが、その数字は左から、密度、範囲、長さをそれぞれ示している。

 密度は効果の強度、つまり威力などを表す。数が多いほど強力になる。

 範囲は効果の及ぶ領域を表す。基本的に入力数は直径で、数が多いほど広くなる。

 更に範囲とは別に形状もある。これは範囲指定か形状指定を選ぶ事となり、どちらか一方で設定するようになっている。

 形状には、ブレット、ランス、スクエアがあり、入力する数が出現数となる。形は、ブレットが小さな球状、ランスは棒状、スクエアは板状となっている。

 次に長さだが、まあそのままだな。まず範囲設定の場合、数は効果範囲の発生する場所、自信をゼロとした距離の長さを表す。そして形状設定の場合、この長さに当たる部分に入力する数は、それぞれの形状自体の長さを表すので間違えぬようにな。

 さて、ここまでで質問はあるかな?」


 すごく一気にきた。それなりに流れは把握できたが細かいところが少し不安だ。


「えっと……まず、数の設定は無制限なのかな?」


「いや、数には制限がある。初期の状態では密度は一から三まで、範囲は一から五まで、形状も一から五まで、距離は、範囲の場合は一から十まで、形状の場合は大きさとなり、一から二となっている」


 なるほど……、つまり密度を高くして範囲を大きくして距離を長くしての超大爆発的なことはできないということか。まあそれはしょうがないか、いきなり出来たらもはや無法地帯になるかもしれない。


「じゃあ次は……、範囲と形状っていうのは?」


「ふむ、まず範囲だが、先ほど言ったように効果範囲の事だ。

 すずめ殿の設定は光なので、設定した範囲に対し強烈な光熱による照射を行う。発動と同時に発現するので、距離の設定と相手との間合いをしっかりと合わせれば、回避は難しいだろう。

 そして形状の方だが、これは光にそれぞれの形を持たせるということだ。ブレットとランスは効果を視覚化することで照準を付け易くする代わりに、相手にも見えるようになるので回避されやすくなる。これには初期出現位置や軌道などを練り上げて対応する。まあここは実戦経験を積み色々と試行錯誤してみる事だ。

 それとスクエアは、光による壁を創り出す。主に防御面に優れているが、基本的に効果の同時発動は出来ぬので、守りながら攻撃ということは出来ぬ。タイミングを誤らぬように気をつけるといい。そして最後に出現させたい数を入力すれば完了だ」


「ふむむ……なるほど……」


 なかなかややこしいけれど、とりあえず理解は出来た。位置取りさえ定まれば回避の難しい範囲攻撃か、回避されやすい分狙いも付け易い形状攻撃か。

 くふふふふ、これは考察のし甲斐がありそうだ。


「すずめ殿、なにやら楽しそうであるな」


「え、いやぁー、やっぱりねー」


 どうやら顔に出ていたらしい。まあそれもしょうがない、私のテンションは今最高潮だ。


「私こういうの好きだったので。ずっと前から想像してたから、今すっごく楽しいです」


「ハハハ、そうであるか。それは良かった、説明のし甲斐があるというものよ」


 そうこう話しているうちに、もういくつかのパターンを思いついた。それと同時に思った事もある。


「そういえば、効果の登録数はいくつまでって制限はあるんです?」


「いや、登録数に制限は無い。だがまあ、登録しすぎると後々登録名や効果内容を忘れてしまった等という者もいたからな、そこに気をつけておけばいくつ登録しようと問題は無いだろう。

 それとスフィアには登録内容の一覧があるので、思い出せなくなったら確認するといい」


「なんと、そんな機能が! どうすればその一覧を見れるので?」


「ふむ、まず属性の登録時と同じように、白い円に一回触れると上方に白の明滅、下には先ほど選ばなかった色の円が現れる。その状態で一番上の円に触れると、下の円が消えて今の入力表示が現れる。

 ちなみに、下に並ぶ円に触れるとその属性に変更出来る。ただし変更には先ほども言ったとおり、少々時間がかかるので気をつけるように。

 さて、入力表示の右上辺りに白い四角が表示されていると思うが、そこに触れることで一覧が確認出来る筈だ。尚、一覧の表示中に左上の円に触れれば入力表示へと戻る事が出来る。更に補足すると、入力表示はもう一度同じ円に触れることで取り消しとなり、初期表示へ戻る事が出来る。その初期表示状態でなければ効果の発現は出来ないのでこれにも注意するようにしておいてくれ」


「はーい」


 ハティの言った通りに操作してみると四角いスペースの一覧らしきものが表示されたが、やはりまだ何も登録していないので空白だった。ので左上の円に触れ、先ほどの入力表示へと戻す。


 それと補足で結構重要そうな事を言っていた、初期表示の状態じゃないと魔法は使えないらしい。いじり終わったら必ず初期表示に戻す事を念頭に置いておこう。


「それでは一つ試しに登録してみようと思うのだが、すずめ殿のことだ、もう何か思いついたものがあるのではないか?」


「そりゃもうバッチリです。やっぱり最初は一番基本的な魔法を登録しないと」


「よし、では早速登録方法へ移るとしよう。入力表示になっているかな?」


「なってまーす」


「よろしい、では始めよう。とはいえ入力自体はそれほど難しい事ではない、設定したい部分に触れて順に選んでいけば良いだけだ」


「ほうほう」


 設定したい部分に触れる。表示されている一番左の数字に触れてみたら一、二、三の数字が現れた。


「おお」


「そうだ、そのような感じで設定していけば良い。まだ登録したばかりなので設定できる数の幅は少ないが使っていけば次第に上限も増えていく、しっかりと訓練するといい。

 さて、一番左は密度の設定だな、好きな数を選ぶといい。ただし設定で七以上を入力するか、形状設定の場合、密度に出現数や大きさをかけた数、範囲の場合は密度と効果範囲をかけた数の、合計の威力が七を超える場合、その威力の度合いに応じて若干の再使用時間が発生する。

 それと一分以内に合計三十以上の威力分を使用した場合にも発生する。この場合の再使用時間は七以上の時よりも長くなるので、覚えておいてほしい。

 とはいえこの程度ならば再使用時間は数秒ほどだが、高くなればなる程時間が延びていくので、そこには注意が必要となる。だがこれも使い込むことで再使用時間が短縮されるので、すずめ殿次第というわけだ。ここまではよいかな」


「はーい」


 再使用時間か……リキャストタイムみたいなものかな。まあそうだよね、超強力な魔法を連発出来たらそれも凶悪過ぎるし。


 ふーむ、しかし七以上か、ちょっとした縛りだけど、これはこれで頭を働かせるのもまたいい。それに若干ならまぁ、心に留めておく程度でもいいだろう。


 うん、なんだかドンドン楽しくなってきた。こういうのは毎日妄想してたけど、実際にそういう事が出来る物を手にしながら考えるとちょっと堪らない。もしハティが居なかったらもっとはしゃぎ回ってるはずだ。


 さてそれではまずは最初の登録だ。一番使用するのではないかと思える最も基本的な設定。


 まず、威力は三。再使用時間がすぐに発生せず一分間に三十以下、つまりその後の設定で一、一とすれば、六秒に一発のペースで撃ち続けられる計算だ。牽制用にもなるし便利そうだ。うんうん。


 それと、数値の上限や再使用時間も使い込めば、より使いやすくなるという事。私にとっては好都合な仕様だ。こんな夢のようなアイテムを手にした今、使い込まない訳が無い。


 では次の項目だ。一つ右の数字に触れると、数字と記号のようなものが現れた。


「そこは範囲と形状の設定であるな。範囲で設定する場合は、そのまま数字を入力すればいい、形状で設定する場合は、一緒に表示されたマークに触れる。ブレットなら小さな丸、ランスなら線、スクエアなら四角となる。その後出現数の入力を求められるので数を入力すれば完了だ」


「範囲は数字で、形状がこの記号……ふむふむ。それじゃあここは……」


 小さな丸、ブレットの一を入力する。単発の光弾系魔法だ。やはりこの手の基本魔法は抑えておきたい。


 さて、次の数字に触れると、一と二の数字が現れる。


「そこは、範囲の場合は距離、形状の場合は大きさの設定となる。今回は形状なので大きさだ。

 ブレットは入力数に、かける五センチメートルの直径、ランスは単位がメートルとなり長さを表す、スクエアも単位はメートルとなり一辺の長さを表すこととなる。

 それと、すずめ殿の設定したブレットだが、大きさの単位が他と違うのには理由がある。これは特性として威力の圧縮というのがあり、同じ威力一でもブレットとランスでは直撃時の威力が違う。ただし圧縮されている分、少しの衝撃で相殺されてしまうという欠点もあるので、これも気をつけておいてほしい」


「りょーかいです!」


 何気なく選んだけど、ブレットにそんな特性があったのか。これならば結構な攻撃手段としても運用出来そうだ。まあ相殺には気をつけよう。


 さて大きさだが、ここも一だ。つまり直径五センチメートル、二にすると威力は六になるがその分燃費も悪くなる。まずは汎用性の確保が先決だ。高威力系は後の楽しみに取っておく。──くふふふふ。


 よし、次の項目だ。


「えっと……、次はどれかな?」


 一つ右には白い明滅の円、これは属性だ。属性は一つしか選べないからここは関係ないはずだ。ずっとスフィアを見つめ続けていた顔を上げると、ハティの方を見つめる。


「次というか、これが最後の設定となるな。一番右の空欄に触れると登録名入力だ。ここですずめ殿の考えた魔法名となるものを、音声入力すれば登録完了だ」


「おお! では早速、記念すべき一つ目を」


 表示の一番右の空欄に触れると白い長方形と疑問符が現れた。パスワード入力の時と同じ感じだ。

 さて、では登録名もとい魔法名の入力だ。


「セイクリッド・トリガー」


 ──……登録完了しました……──


 やっぱちょっとはずかしい。でも楽しい。


「よし、これで登録は完了だ。スフィアは脳波と同調する事で、意識レベルでの微調整も可能だ。まあこれは経験がものを言うので、我が説明するよりも実際に使ってみて覚える方が早い。

 形状設定の場合は出現位置も操作可能だが、遠くになればなるほど魔法が実体化するのに若干の時間差があるので注意するように。他にも色々と応用方法などもあるが、これも我が教えるよりかは、自分で見つけていく方が覚えやすいだろう。習うより慣れよと言うしな。

 それと、使えば使うほどより大きな現象を扱えるようになるので精進すると良い」


「微調整、意識レベル……、つまり頭の中で思うことで操作出来るみたいな感じでいいのかな?」


「その通りだ。さすがすずめ殿、理解が早い」


「えへへー」


 褒められて少し照れる。なんだかハティに褒められるとすごく嬉しく感じる。なぜだろう。


「さてどうかなすずめ殿、登録の流れは大体理解できたかな?」


「うん、多分バッチリだと思います! 私勉強は苦手だけどこういう事にはちょっと自信あるから!」


 ゲームなどでのシステム説明やチュートリアルなど、少し複雑で皆が良く分からないなんて言っているものでも、私は一発で理解する事が出来る。今回のスフィアの入力もそれとほぼ同じ感覚でやれたので大丈夫。きっと好きこそものの上手なれってやつだね。


「ここは多少の衝撃は吸収するように出来ているので満足いくまで試してみるといい。それとすぐそこの階段より地下に入れば研究所と居住区へ行けるので、そこで眠るといいだろう」


「うわぁ、それはありがたい!」


 一応屋内とは言え石の上で寝るとなるとちょっと寝心地が悪そうだったが、居住区にならベッドくらいはあるだろう。今日はいい夢が見れそうだ。そして研究所、探検するしかなさそうだ。


「それと、今回は一つだけパスワードを入力したが、それは第一制御と呼ばれるパスワードとなる。

 登録時には明滅する長方形が五つ出現したのは覚えているかな? あの時は、一番上を指定したが、他の四つもパスワードの入力箇所となっており、上から第一、二、三、四、五となる。これは発動させる効果の総威力によって分かれており、第一は一から三十以下、第二は三十一から四十という風に数値の上昇と共に設定するパスワードも変わってくる。

 まあ、登録したばかりでは第一制御しか登録できないので問題は無い。これも使い込むことで、入力可能となるだろう。ずっと先の事になるだろうが頭の隅にでも留めておいてくれればよい」


「りょーかいしました!」


 確かに長方形が五つあった。ちょっと気になってたけど他もパスワード登録用だったのか。しかも第一から第五までとは、高威力になるにつれてパスワードもランクアップみたいな感じかな。今度、考え溜めしておいた私の呪文リストから良さそうなのを更にピックアップしておかなくては。


「では最後に、スフィアには登録者を守る生命保護機能が備わっている。即死でなければ生存率は極めて高くなるので、少し怪我をするくらいでも逃げ切れれば勝ちだ。スフィアを上手く使えば生存率は更に上がる。あのアクゼリュスを相手に湖まで逃げられたすずめ殿ならきっと大丈夫であろう」


 ハティと目が合う、その金色の瞳はやはり綺麗ですごく優しく輝いて見える。


「それでは、我はこの辺で退散させてもらうとしよう。スフィアが使えるようになったからとて、登録したばかりではこの森は危険だ。居住区には食料も残っているはずなので、ここで暫らくスフィアの使い方に慣れるといい。

 自信が付いたらこの周辺のアクゼリュスを倒してみてもいいだろう。スフィアに慣れてくれば研究所近くならば十分実戦経験が積めるはずだ。呼んでもらえれば我もすぐに駆けつけられるしな」


「この近くのは弱いんですか?」


「うむ、スフィアの扱いに慣れれば苦戦するような相手はいないだろう。人々を無差別に襲う害悪に躊躇はいらぬ。遠慮無くスフィアの実験台にするとよい。その分我の手間も省けるというものよ」


 ニヤッと口端を上げイタズラっぽく微笑むハティ。アクゼリュスのような魔物を倒して回るハティ。実戦訓練をしながらハティの手伝いが出来るという事か。


「それとこの研究所には、危険な生物は滅多に入ってこれないから安心して励めるはずだ。努力次第で、この森では敵無しになれるであろう。

 それと門を閉める時は、開ける時と同じようにすればいい。外と内、丁度裏表で開閉装置があるのでな」


 なんだかこの数時間でほんと色々あった。朝起きたら風邪ひいてて、泉の部屋にはカギがかかってて、マンガ読んで、ホットケーキ食べて、スフィア拾ったらこの世界に居て、襲われて、ハティに助けられて、教えられて。思うとずっと前のことのような気がするが全部今日の事なんだ。


「うん、色々ありがとう。この恩はずっと忘れないから」


「気にする事はない、我とて久しぶりに人と話せて楽しかった。やはり良いものだな、触れ合いというものは」


 何か浸っているような感じでハティが目を瞑る。久しぶりに話せたという事は、余り人は来ないのだろうか。だがまあ、喜んでもらえたのなら幸いだ。


「ではすずめ殿、また何かあったならこの森で我の名を呼んでくれ、すぐに馳せ参じようぞ」


「うん、ありがとう。またね、また今度ね!」


 助けられた時のように、ハティに抱きつく。


「ああ、また今度だ」


 そっと離れると開いた門へ向けて歩き出すハティ。これが最後の別れではない、呼んだらすぐに来てくれるって言ってた。だからきっとまた会える、その時は成長した私を褒めてもらおう。絶対だ。


「さらばだすずめ殿。武運を祈る!」


「ハティも元気でね!」


 ハティはコクリと頷くと、門を出て数歩加速し、音も無く一気に天高く飛び上がっていった。みるみる小さくなっていくその姿を大きく手を振りながら見送ると、やはりハティはすごい守護獣なんだなと改めて思った。


 一人になり、ふと寂しくなる。でも大丈夫、私にはハティに使い方を教えてもらったこのスフィアと、私が今まで培ってきたこの好奇心がある。


 さあ、早速練習だ。使い勝手などもしっかりと確かめながら、色々と新しい効果を登録していこう。


「くふふふふ」


 さあいよいよ私の冒険が始まる。勇者すずめ此処にあり!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ