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君が死んだ7月7日

作者: 死神くん
掲載日:2026/10/09

斉相 夏音。享年17歳。


夏音は俺、海道 匠哉の彼女だった。だが七夕の日、7月7日に突如として死んでしまった。彼女が死ぬ前の1週間の記録をここに記す。


2026年7月1日水曜日


俺の学校は夏休みが異様に早く、この日からだった。もちろん、他行の友達には羨ましいと言われるばかりだ。俺の彼女、斉相夏音は学校のマドンナだった。なぜ、俺がそんな彼女と付き合えたか。それは俺が彼女の命の恩人だからである。高校1年生の2学期に俺と夏音は出会った。たまたま隣席になったのだ。それで3学期、夏音がナンパにあったところを俺が背負い投げして助けたというわけだ。そしたら、今年に告白されて晴れて彼氏彼女へ。という流れだ。ちなみに背負い投げの威力は相手の背骨にひびが入っていたほどだったらしい。


「たっくん、一緒に帰ろ?」


「おう」


たっくんは俺のあだ名だ。海道匠哉なのでたっくん。彼氏彼女なのだから匠哉って呼んでほしいのが本音なのだがたっくんもまあ悪くはない。僕が校門を出て、自転車に乗った。夏音は僕の背中に頭をうずくめている。彼女の温もりが背中越しでも感じられる。


「たっくんの背中、あったかい…」


「あんま、くっつくな。視線が痛い」


大体いつもこの会話はしている。夏音は俺にくっついてくるので引きはがすか、視線が痛いの照れ隠しだ。実際のとこ、結構悪くはない。


「どっか寄り道するか?」


「うん。私、いつものところ行きたいな」


「へいへい」


いつものところ。とは古本屋『本所』だ。僕は大の小説好きなのだがそれが夏音にも移ったのだ。


「いらっしゃい。今日は何買うんだ?」


「おっさん、俺はアレで」


「んぁ?いつものか?」


俺が頼むいつものとは、『魍魎の匣』だ。買っては挫折して返品し、買っては挫折し返品し…の繰り返しだ。今日こそは読むと決めていたのだ。


「で斉相の嬢ちゃんはどうすんだ?」


「ん~…たっくんの好きなやつ!」


「じゃあ、これだな」


店主のおっさんが出した本は『君の膵臓をたべたい』。俺が初めて小説で大号泣した本である。


「ナニコレ…?」


「ホラーじゃねえぞ、恋愛だ」


俺もタイトルを見た第一印象はホラーだった。これが恋愛小説だなんていまだに信じられない。


「じゃあ、それで!」


「あいよ。980円だ」


「じゃあ、俺が払うよ」


俺は小さな財布から1000円札を出した。


「1000円な…20円のお返しだ」


「てんきゅ」


俺は『本所』を出て、自転車に再び乗った。もちろん夏音も俺の背中に顔をうずくめて乗る。夏音の見た目は茶髪のロングヘアーで童顔。特にお洒落などには興味が無いがいつもかわいい。そんな感じだ。そして俺の方は…これと言った特徴がない。強いて言うならクラスのイケメンランキングTOP10に入った事くらいだ。どうして夏音が俺に惚れたのか。まだ分からない。


「どういうことだよ…」


俺は思わず呟いてしまった。夏音の頭に?マークが浮かぶ。


「何が?」


「何でお前が俺に惚れたっていう事だよ」


俺はついに言ってしまった。まあそのうち、言うつもりだったので別にいいが。


「そんなの全部だよ。顔もいいし、性格もいいし、力も強いし…とにかく全部だよ!」


「そうか」


なんか夏音らしいなと思った。俺は家の目の前に自転車を止めると夏音に「また明日な」と手を振って言った。その発言に夏音は少し寂し気な顔をしていた。



2026年7月2日木曜日


この日は夏期講習だった。夏期講習終了後、俺は校門を出て、真っ先に夏音の家へ向かった。夏音が体調不良で休みだったからだ。俺がインターホンを鳴らそうとしたとき、ガチャとドアが開く音がした。


「…たっくん?」


「今、夏期講習終わったから来た」


「ありがとう…」


俺は夏音のおでこに手を当てた。かなりの熱がある。確かに顔がかなり赤い。


「何度あったんだ?」


「39℃…まあ大丈夫だよ」


「高熱だな。俺に構わないで寝てくれ」


自分から来たのになんやねんって感じだがこれが俺の本音だった。俺は本音と行動が良く矛盾している。これは中学生からだ。


「ん、分かった」


「いや、やっぱお粥作る」


更になんやねんポイントが重なった。俺は夏音の家に上がるとキッチンへ向かい、エプロンもしないで調理を始めた。普通のお粥じゃ面白くないなと思ったので少しだけ砂糖も入れてみた。夏音が気に入ってくれたらいいのだが…そんなことを思いながら俺は出来上がったお粥を夏音の部屋を持って行った。


「夏音~入るぞ~?」


俺は夏音の部屋のドアをガチャっと開けた。


「できたの?」


「できた」


俺は短く返すと持ってきていたスプーンを持ってお粥をすくい、差し出した。


「じ、自分で食べれるし…」


「なーんだ」


俺はスプーンを夏音に渡した。そして夏音は食べる…と思ったが、スプーンを手から落とした。そしてそれを俺はぎりぎりキャッチした。


「っぶない…やっぱ駄目じゃねえか」


「うっ…」


「はい、あーん」


「あ、あーん…」


夏音は少し照れくさそうにパクッとお粥を一口食べた。少し砂糖入りの。


「甘い…」


「流石だな。少し砂糖入れたから」


「バカ?」


「バカで悪かったな」


俺はスプーンでもう一度お粥をすくって、差し出した。今度は素直に食べくれた。


「でも…おいしい」


「良かった」


俺はこの時間が今までで一番愛おしく思えた。



2026年7月3日金曜日


俺は夏音の風邪が移ってしまった。最悪だ…だけど看病できただけまだ良いか。俺は熱を測る。


「41℃…」


かなりの高熱だ。確かに先程から頭がぐわんぐわんするし、心臓の鼓動が早い。これが原因だったのだ、俺は静かに目を閉じると昨日の出来事を思い出していた。


(夏音が看病…なんて展開は流石に無いか)



1時間後、インターホンが鳴った。俺は鉛のように思い体をなんとか起き上がらして、玄関へ向かい、ドアを開けた。


「たっくん大丈夫…?」


「大丈夫、と言ったら噓になる。41℃ある…」


夏音は俺のおでこに手を当てる。


「うわっ…凄い熱」


「お前にも熱が移るから入ってくんな」


「いやだ、私がたっくんの看病するもん」


「どうぞご勝手に…」


矛盾しているな、と俺は自分でも思った。夏音は俺の家に躊躇なく上がってきて、俺の自室に入った。


「汚いね…」


「足の踏み場なくて悪かったね」


俺の部屋はほとんどがカップラーメンとコンビニ弁当のゴミで埋め尽くされている。俺の主食二つだ。


「私、お粥作るから」


「よろしく…」


夏音は急ぎ足でバタバタと階段を下りて行った。5分後、お粥を持ってきた夏音が姿を現した。


「はい、あーん」


「あーん…うまい」


なんだかバカップルみたいなやり取りだが実際バカップルかもしれないと俺は思った。


2026年7月4日土曜日


俺と夏音は夏期講習が終わると、俺の家へ向かった。今日は夏音が止まりに来るのだ。俺は自転車に乗り、タイヤを確認する。


「パンクしてんな…」


最悪のタイミングである。いつパンクしたのかは全く見当が無いがおそらく登校中にパンクしたのだろう。


「夏音、今日は徒歩だ」


「ええー!?」


「仕方ないだろ…タイヤがパンクしてんだから」


「なら…」


夏音は頬をプクーッと膨らませている。


「感情表現小学生かよ…」


俺はとっさにツッコミを入れてしまった。まあ正論だろう。俺はパンクした自転車を引きずりながら歩き始めた。夏音は俺の腕をがっちりと絡ませてくる。


「あんまりくっつくな」


「良いじゃん…別に」


「まああんまし悪くないけどな」


俺は食い気味に言った。その発言に夏音はぽかんと口を開いている。


「え、え?今なんて…」


「だからあんまし悪くないんだよ」


その一言で夏音の顔がリンゴみたいに真っ赤に染まった。


「な、なななな、何言ってるのよバカーーーーーーっ!!!!」


バシィン!と物凄い音が鳴る。夏音に叩かれたのだ。それも結構強い力で。


「あ…ごめん」


「良いよ」


俺はすんなり許してしまった。昔からの癖だ。俺と夏音はそんな会話をしていると俺の家の玄関まで来た。


「鍵、開けるぞ」


ガチャという音が鳴る。いつも通りのさみしい玄関。だけど今日は夏音がいる。


「ただいま…つっても俺と夏音しかいないけどな」


俺は荷物を雑にソファーに置くと真っ先に自室へ向かった。まず帰ってきたらカップラーメンというのが俺の日課である。俺はお湯を沸かすとブタメンの塩タン味にお湯を入れる。後は3分待つだけである。早速、スマホで3分図る。その間に下へ行き、夏音と話すつもりだ。


「たっくん~冷蔵庫に良い食材ないよ~?」


「バカッ!?人の家の冷蔵庫を勝手にあさるな!」


俺は急いで冷蔵庫を無理やり閉める。俺は友達や彼女には絶対に冷蔵庫の奥を見られたくないのだ。黒歴史ノートが保管されてある。どうして冷蔵庫にって?置き所が無いんだよ。するとスマホからアラームが鳴った。


「3分経ったか…カップ麺食ってくる」


「あ、うん!…慣れないなぁ」


夏音が小声で何か言った気がするが全く分からなかった。俺は自室へ戻るとカップ麺の麺をすすり、スープを飲み干した。


2026年7月5日日曜日


この日、夏音が重い病気だということが分かってしまった。どうやら心臓病のようだ。朝起きると、夏音が倒れていて、過呼吸状態だったので流石にヤバいと思い救急車を呼んだ後、心臓病のことを明かされた。1時間はずっと自室へこもっていた。ショックだった。うつ病になってしまうんじゃないかと思うほどに。だけど俺はなぜだか前向きにならないといけないという気持ちになり、部屋を出た。


まず俺は真っ先に夏音が入院している病院へ向かった。そして斉相夏音の文字を見つけ、その病室を開ける。


「あ、たっくん…」


「体調は?」


「今のところは…大丈夫」


「良かったぁ…」


とりあえずは落ち着けた。俺は安心感に包まれた気がした。


「そういえばもうすぐで七夕だな」


「そうだね」


「俺は…『夏音が幸せになりますように』って書くわ」


「七夕の願い事は自分自身に対する願いがいいらしいよ?」


「んなもん知るかよ」


俺は苦笑した。この時はまだ知らなかった。この愛おしい時間が終わることを。


2026年7月6日月曜日


「いろいろあって遅くなったな…」


現在、午後11時57分。とっくに夏音は寝ている。だが、俺はどうしても行かなければと思い来たのだ。彼女の寝顔はとてもかわいい。ただただ、かわいい。俺は夏音の頭をそっと撫でた。でも…何か妙な胸騒ぎが絶えなかった。


そして訪れる2026年7月7日火曜日


午前2時57分59秒。夏音がこの世を去った時刻だ。夏音が死んだのに気付いた俺はただただ叫び続けた。声がかれようとも叫ぶ続けた。どれだけ迷惑だろうとも叫んだ。叫び続けた。とにかく…俺は夏音の死を受け入れられなかった。この絵を見るまでは。その絵には少しいびつな形をしている3本のガーベラが描かれていた。花言葉は『愛してる』だ。俺はこの絵を見た時、涙が零れ落ちた












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