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第2話

 



――キーンコーンカーンコーン。

 

 チャイムが学校中に鳴り響く。どこの学校でも、このキーンコーンとかいう音なのだろうか?

 俺は、そんなチャイムの音で目が覚めた。ベットで横になっている体を起こす。ふと、真横の棚の上にあった時計が眼に入る。時計の針は、既に12時5分をすぎた所に止まっている。 目覚ましのタイマーは確か久遠先生が、1時間後に設定してくれていたはずだ。


「寝過ごした……」


 これを、寝過ごしたと言うのは少しおかしい。だが、目覚ましに気づかずに熟睡するとは……俺はどうやら相当疲れていたらしい。実際に今でも体がダルイ。目の前が少し揺れる。

 ――ガラ……

 誰かが保健室に入ってきた。今は確か、久遠先生は出張中で居ないはず……。

 ツカツカと足音を立てながら、ゆっくりと俺の寝ているベットに近づいてくるのが分かる。 今入ってきた生徒、もしくは教員は確実に俺に用がある人物。 

 ――ドクン、ドクン、ドクン。

 妙に心臓の鼓動が、体から聞こえてくるかのように大きくうつ。 ただ誰かが俺に用があって、来ただけなのに何故こんなにビビル必要がある。――女だからだ……。

 俺にはわかる。いつも感じている恐怖。たとえ今はその姿が見えなくてもなんとなく分かってしまう。しかも、この静かな保健室。足音がいつも以上に大きく聞る。

(まさか……な、な…か?)

 そんな筈はない。あいつは俺の事は忘れている。だが、何故か昔の奈々の笑みが俺の頭を過ぎった。まるで、警告するかのように俺の体はブルブルと震え、冷や汗が全身から流れだす。体が動かない。指を動かそうとしても力が入らない。視線が、開かれるカーテンから外れない。


 ――シャー。その白いカーテンがゆっくりと開かれた。 そこに居たのは……。


「つか……さか。はぁ、はぁ、はぁ」

「ちょっと、大丈夫!?薫。すごい汗じゃない」


 そう言って、つかさは俺の肩に触れようとした。その事に俺の体はビクっと跳ね上げる。――怖い……。


「ご、ごめん……」


 小さく呟き、暗い表情で俺から距離をとるつかさ。確かに、心配してくれてるのにこんな反応されちゃぁ傷つくよな普通。俺は最低な奴だ。何も変っちゃいない。知り合って3年になるって言うのに。


「つかさ。もしかして、俺の事心配できてくれた?」

「な!?そ、そんな訳ないじゃない! ただ薫がなかなか教室に帰ってこないから……」


 つかさ、それは心配してくれているのとどう違うのか俺に教えてはくれないだろうか?まあこいつが、妙な所で素直じゃないのは分かってるけどな。 でも、ちゃんと優しい奴だ。


「俺は、後少しだけ休むからさ。早く購買に行かないと昼飯なくなるぞ?」

「う、うん……あのさ、薫」

「うん?」

「朝のね、言おうとした事。 放課後、言うから……」

「おう」


 顔を、今朝どうように真っ赤にして保健室を出て行くつかさ。朝の言おうとした事って、亮二のせいで不発したやつの事だろうな。なんだろう、めっちゃ気になってきた。


「まあいいか。後少し寝るか……」

 

 さっきまで十分寝ていたのに、まだ寝る俺。さっきの、つかさが来た事によって色々とまた疲れてしまった。5時間目は休んで、6時間目は出よう。

 そんな事を考えながら、再びベットに転がり眼を瞑る。

 ――ボフッ

 何かが、俺の体の上に乗った? ――重たい。これは、布団の重さを遥かに超えている。何かが俺の上に乗っている?何が? 眼を閉じて10秒も経たない内に、再び眼を開ける俺。そこには――



















「ねぇ薫君……あの()……なに?」



















 俺の上に乗っていた、重い何か。それは、『人』『女』『女子生徒』『転校生』『幼馴染』

 俺のよーく知っている、その人物は俺とキスしそうな程に顔を近づけて質問してくる。 半覚醒状態の、俺の意識が一気に覚醒していく。眼が大きく開いているのが、自分でもよく分かる。心臓が異常なまでに、速く鼓動する。体全身が硬直。

 額から頬にかけて汗が流れる。


「な…な……」

「薫君。もう一度聞くよ? あの娘、なに?」


 冷えきったもの凄く冷たい瞳で、俺の瞳を見つめる奈々。 

 こいつ、俺の事……覚えてやがった。朝のあれは、猫被ってたのか……。よくよく考えれば、俺が酷い事をしたってこいつは俺の事忘れる訳がない。何故、忘れてるのかなんて考えた。 安心したかったから? 昔に戻りたくなかったから? 昔の奈々を忘れたかったから? だから、別人という認識でいたのか? 俺の記憶の奥底にこびりついている奈々を消したかったから?

 

「これで、最後だよ?薫君。 あの娘は……なに?」

「お、俺の……友、達……?」

「ふーん。 薫君の友達なんだ。 そうだよね、あの娘が薫君の友達以上な訳ないよね」


 そう言って、奈々は俺から顔を引き離す。そして、ニコッと満面の笑みを浮かべる奈々。

 それと、同時に俺は冗談ではなく意識が今にも吹っ飛びそうになっていた。 ただでさえ、女に触れられるだけで硬直してしまうと言うのに、こんな馬乗りで俺の上に乗られ密着されれば意識も飛ぶ。

 だが、それはなかった……奈々は俺の右腕の皮膚を、引きちぎられるかと思うぐらいに抓り、痛みで俺の意識を保たせていた。 そのせいで、いつも以上の女性恐怖症による体の振るえが止まらない。

 

「ねえ薫君。私、薫君に会いたくて、会いたくて帰ってきたんだよ?嬉しい? 私は薫君に会えて本当に嬉しいよ。一目で薫君だって、分かったよ私。 昔の薫君も格好良かったけど、今はもっと格好良くなってて惚れ直しちゃった。思わず、薫君に抱きつきたくなっちゃったんだよ? でもね、薫君の事も考えてね、二人きりになれるのをずっと待ってたの。 でも薫君が望むなら私人前でも平気だよ?だって、私薫君の事好きだもん。世界、ううん。宇宙で一番薫君の事大好き。他の人なんて、別にどうでもよくなちゃうくらい好き。 薫君も私の事好きだよね?ね? どうして、すぐに答えてくれないの? あ、そっか。私に会えて感激すぎて言葉も出ないって言うやつでしょ。もう、薫君ってば。私恥ずかしい。 そうだ、今からキスしようよ。あの時は、薫君が恥ずがしがって出来なかったけど、今はもう高校生だし、うれしいでしょ?あ、でも私初めてだからそんなに上手くないの。薫君も始めてでしょ? 薫君が、私以外の女となんかキスなんてしないもんね。だって、私がこんなに薫君の事好きなんだし、薫君も私の事好きなんだから当然よね。 なんなら、キスの後もしちゃう?恥ずかしいけど薫君となら私別にいいよ?保健室でなんて、ドキドキするね。保険の先生は出張中って西条先生言ってたし。 でも、お昼休みまでに終わるかな? そうだ、5時間目はさぼっちゃおうか。転校初日からさぼるなんて、薫君の事思えば私なんとも思わないから安心して?そうだ。子供は何人欲しい?私はね、二人は欲しいな。男の子と女の子の。それでね、私と薫君と子供二人とで、遊園地とかいきたいね。勿論お弁当は私が作るよ。ちゃんと薫君の体のバランスも考えて、薫君の好きなものも入れるからね。私薫君の為に料理も出来るようになったんだよ。だから、おいしいって言ってくれたら私うれしいな。それとね――」

 

 朝の教室に居た時とは、まったく別人の奈々。

 こいつ……やっぱりなにも変ってねえ。それどころか、昔以上だ。昔の頃の俺は、この変ってしまった奈々によって、女性恐怖症になった。それが、今もずっと続いている。

 だが、元を辿れば俺があんな事を奈々にしなければ、こんな性格にもならなかったんだよな……。

 俺が悪いんだ。俺が……。

 そんな事を考えている内に、抓られている腕の皮膚が痛みを感じなくなっていくのが分かる。これは、色々と俺の腕の皮膚がやばい。

 だがそんな事を気にする間もなく、俺は意識を失った。



「だから私ね…………薫君?寝ちゃったの?そっか、今でも薫君は恥ずがしがりなんだね。うん。また一つ薫君の事しっかりと頭に入れたよ。 ああ。やっと薫に会えたんだ。私この3年間寂しかった。薫君に会えなくて寂しかった……」


 そう言って、薫の右腕の抓っていた皮膚をペロっと舌で舐めた後、奈々は心臓の音を聞くかのように目を瞑り、薫の胸に顔をつける。


「でも、これからは毎日会える。薫君に毎日会えるんだ……昔みたいに毎日……」

 

 そう、呟いた後。ちょうど午後の授業の予鈴が鳴る。 奈々は少し心惜しそうにするが、ウフフと本当に嬉しそうに一度笑い保健室を出て行った。

短めの二話です。 どうでしょうか?ヤンデレってのを上手く書けているでしょうか?

ヤンデレってのは、短編で一度書いただけなんでよく分からないんですよ。

感想なんか頂けたらうれしいです♪ではでは~。

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