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結婚直前にハニトラにかかったと見せかけて脱走した元旦那様、慰謝料請求のため追手を差し向けますのでお待ちください

作者: すじお
掲載日:2026/02/13


その男は、逃げた。


結婚式まであと三日。

帝国暦三二一二年、春。

軍事名門ヴァルディエ家の令嬢――エレオノーラ・ヴァルディエの婚約者であった男、

帝国参謀本部エリート将校  ルーク・ハインツ少佐は、

「敵国のハニートラップにかかった」という噂だけを残し、姿を消した。


「……随分と、都合のいい話ですこと」


エレオノーラは静かに紅茶を置いた。

指先は微かに震えているが、表情は氷のように冷たい。


ルークは逃げる前夜、婚約者という立場を盾に、彼女の婚前の純潔を踏みにじった。

それがどれほどの意味を持つのか――

貴族社会において、軍事一門において、そして何より彼女自身にとって。


責任も、謝罪も、慰謝料も置き去りにしての逃亡。


「私のせいにしておいて、とんずら。 しかも敵国ハニトラのせいにするなんて……随分と、舐められたものですわね」


その瞬間、エレオノーラは決めた。


――軍を動かすと。


---


ヴァルディエ家は代々、帝国陸軍を支えてきた軍事一門。

机上の貴族ではない。

現役将官、特殊部隊指揮官、諜報畑の化け物たちが、

親族として普通に食卓を囲む家系である。


「対象:ルーク・ハインツ元少佐」

「罪状:婚約破棄に伴う慰謝料未払い、名誉毀損、逃亡」

「加えて――私的に、許しがたい行為」


作戦会議室に、重い沈黙が落ちた。


「……捕縛ですか?」

「ええ。生きたまま」


エレオノーラは背筋を伸ばし、告げる。


「裁判に立たせます。逃げ得は、ヴァルディエが許しません」




三週間後。


山岳地帯の廃補給基地で、

ルークは包囲された。


「な、なんでここが……!」


「お久しぶりですわ、元・婚約者様」


月明かりの下、装甲車から降り立つエレオノーラ。

軍服姿の令嬢は、もはや花嫁ではない。


「ハニトラ? 敵国? 違いますわね」


彼女は静かに告げた。


「あなたは、慰謝料を払わず逃げた犯罪者です」


拘束具が嵌められ、軍事エリートだった男は、あっけなく地に膝をついた。


「裁判まで、しっかり護送します。 その間――逃げる権利は、ありません」


---


後日。


帝国軍事裁判所にて、

ルーク・ハインツは有罪判決を受け、

莫大な慰謝料と終身的な社会的制裁を課された。


そしてエレオノーラは、

再び前を向く。


「……結婚?

 ええ、いつかは。 ですが次は、逃げない方にしますわ」


軍靴の音を響かせ、

令嬢は新たな戦場へと歩き出した。



たまに「それハニトラかかってないよね」っていうことありますよね

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