⑦ 怯える優の生理現象。和奏の助け船。『ここなら今のあなたでも大丈夫でしょう……?』
時代家をあとにした僕たち。
コミュニティバスに乗り、ショッピングモールへとやってきた。
「わ、和奏、混んでるね……」
「そうね……」
休日ということもあり、どの店も賑わっている。
大勢の人に囲まれると、女装しているという実感が更に強くなり、恥ずかしさが増してきた。
前方から、女子中学生らしき私服のふたり組みが歩いてくる。おしゃべりに興じる彼女たち。
すれ違いざま、彼女たちの視線が、僕のピンクのリップが塗られた口元に向いた。
──見られてる!
緊張の一瞬。足音が遥かに遠ざかっていく。
何とか、やり過ごした……そう思った刹那。
「「──キャー!」」
辛うじて聞こえた、彼女たちの小さな悲鳴。
──女装がばれた……!!
途端、顔が真っ赤になるのを感じた僕。
胸に両手を当てた僕は、柱の陰に崩れ込んだ。
気持ち悪くなり、スカートを押さえてうずくまる。
「ゆ、優! 大丈夫……!? おなか痛いの……??」
苦しむ僕に、和奏が不安そうに駆け寄ってくる。
いや、おなかが痛いわけじゃない……けど……。
──そう思いつつも、言われると行きたくなってくる。
「ちょっとおしっこ、したいかも……」
ただ、今の女装姿では男子トイレに入れないし、女子トイレに入るのは一番駄目だ……!
今の僕は、男女どちらのトイレに入ったところで、詰みが確定してしまう……!!
「安心して。大丈夫、こっちよ……」
そんなことはお構いないしという表情の和奏。
僕の手を掴み、そのまま通路を進んで行った。
◆◆◆◆
通路の奥まで連れて行かれた僕は、俯いていた顔を上げる。
目の前には、とある個室があった。
──多目的トイレだ。
「ここなら今のあなたでも大丈夫でしょう……?」




