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罰ゲームで黒髪清楚な高嶺の花に告白した僕は、百合属性だったカノジョに女装させられて、誰にもヒミツの関係になった。  作者: きたみ詩亜


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③ 氷点下対応の和奏。蜜月関係の凛。『男性には興味ないの。他を当たってくれるかしら』

 翌朝。和奏と僕の、秘密の関係が始まってから一夜が明けた。

 窓の外から聞こえる鳥の鳴く声を聞きながら、自室のベッドから起き上がる。

 目覚まし時計を見ると、朝六時半を示していた。

 学校は朝八時からだが、家からバスで三十分ほどかかるため、あまりのんびりはしていられない。

 制服に着替え、階段を降り、洗面所で顔を洗う。

 ものの数分で支度が済んだ。

 昨日、和奏のマンションで女装してメイクした際には、軽く一時間くらいはかかっていたことを考えると、男子って楽だなぁ、と感じてしまう。

 まあ、僕が女装に慣れてないってのもあるんだろうけど……。

 リビングに顔を出すと、小二の妹、琥珀がすでに朝ご飯を食べはじめていた。


「にいにい、おはよ〜」


 ちょっと伸びた髪を頭の上でちょんまげに結んでいる。


「おはよう。琥珀」


 琥珀の向かいに座った僕。

 母さんが僕の分の朝食を運んできてくれた。

 トースト、目玉焼き、ソーセージ、コーヒーをそれぞれ並べていく。


「優。あなた、昨日帰り遅かったけど、何かあった?」

「……いや、何もないよ」


 和奏と付き合うことになった件は、彼女が秘密にしてほしいと言ってきたため、航汰にも伝えていなかった。

 何となく誤魔化すように、コーヒーをひとくち、口に含む。


「そう……? あら、今日あなた顔色いいわね……もしかして、優、彼女でもできたんじゃない?」


 僕の顔を覗き込んで母さんが、特大の余計な一言を放つ。


「──ゲホッ、ゲホッ!」 


 口に含んだコーヒーが気管に入り、激しく噎せてしまう。


「にいにい、大丈夫……?」


 琥珀が椅子から降りてきて、背中をすりすりと擦ってくれる。


「あらあら、大丈夫? ヘンなこと言ってごめんなさいね……」

「……も、もうおかしなこと言わないでよ……!」

「彼女ができるのはヘンなことじゃないわよ? ……琥珀だって、お兄ちゃんに彼女ができたら、見てみたいわよね?」

「見たーーい!」


 ブンブンと首を縦に振りながら、激しく同意する我が妹。

 ──い、いかん……女子ふたりのペースに呑み込まれている……!


「……そう言えば、父さんは?」


 話題を変えようと、この場に姿の見えない父さんのことを話題に出す。


「……あなたが眠ってる間に出掛けたわよ。最近忙しいみたいね……優も時間大丈夫?」


 時計を見ると七時近くになっていた。


「──やばっ!」


 慌てて、そばに置いていた鞄を引っ掴む。


「行ってくる!」

「はい、行ってらっしゃーい」

「にいにい、車に気を付けてね〜」


 ふたりの声に見送られつつ、外へと走り出した。


◆◆◆◆


 教室に入ると、航汰はすでに登校してきており、準備を済ませていた。挨拶もそこそこに、後ろの席に座った僕へ訊ねてくる。


「なあ、優、昨日の亜桜への告白はどうだったんだ?」

「……ああ。玉砕だったよ」


 沈痛な面持ちを作って答える。

 和奏との約束上、僕が彼女と付き合うことになった話をするわけにはいかない。


「ん? 駄目だったのか……? 意外とうまく行くと思ってたんだがな……まあ、罰ゲームで告白しただけなんだから、振られたとしてもあまり気にするなって」

「ま、まあ、そうだね……あ、そう言えば、航汰が罰ゲーム代わってくれようとしてたけど、誰に告白するつもりだったの……?」

「俺か? まぁ、亜桜でないことはたしかだな……」


 ──ガヤガヤ……。

 航汰との会話を遮るように、突如、教室の入り口付近が騒がしくなる。

 視線を向けると、ふたりの少女が颯爽と教室内に入ってくる。見目麗しい美人ふたり組。


 ──まずひとり目は、亜桜和奏。昨日から、僕と秘密のお付き合いがはじまった彼女だ。

 黒髪清楚、バスト九十一という美貌の持ち主。僕にはもったいないくらいの美人だ。

 

 そしてもうひとり、クラス委員長の恩田おんだ麻音まおん

 委員長らしく、真面目な雰囲気の彼女。眼鏡の奥に見える、理知的な双眸。

 和奏に比べると負けるが、それでも遜色のないサイズのバストに、肩くらいまでの長さの髪の毛は、キチンと手入れしているのだろう、サラサラヘア。

 顔立ちも、校内トップ3に入るほどの美貌。

 成績についても、学年首席の航汰に次ぎ学年二位という、才色兼備を地でいく優等生だ。  


「……おい、お前が、亜桜さん誘えよ……?」

「えっ、俺……っ!?」


 不意に背後からヒソヒソと聞こえる、男子ふたりの声。


「……あ、亜桜さん! 遊園地のチケットあまってるんだけど、休みの日にでも、俺たちと、行かない……?」

「──あたし、男性には興味ないの。他を当たってくれるかしら」


 ──彼女の鋭く眇められた目。

 氷点下の冷たいまなざし。


「ご、ごめん……」


 すごすごと男子たちが引き下がる。


「全く、不毛なことね……」


 恩田は静かに呟くと、僕と航汰のほうを一瞥。

 ──しかし、興味をなくしたのか、ふいとすぐに目を逸らした。

 和奏は、先ほどの男子たちを尻目に、僕の席の近くにある自席へとつく。

 

「おはよう、凛……」

「あっ……和奏、おはよう……!」


 和奏が、彼女のひとつ前の席に座っている女子──持月凛に挨拶をする。

 凛は和奏に挨拶されると、不機嫌そうなつり目をふんわりと緩め、ウルフカットを指先でもじもじと弄りだす。

 巨乳の和奏とは対照的な、小振りなバストの凛。しかし、和奏と話すあいだは、その胸もこころなしか普段よりも膨らんで見える。

 ──そして、凛こそ、和奏から僕たちの関係を絶対ばらさないようにと、釘を刺された相手でもある。


「……昨日の放課後、和奏、あたしとおしゃべりしたあと、一緒に遊び行く予定だったのに、すぐ帰っちゃったでしょ……? やっぱりご両親が海外赴任中で大変なの……?」


 ──しまった、凛と予定があったのに、僕のところに来てくれたのか。なんで僕なんかのために……。


「……ちょっと、家で切らしてた物を思い出してね……ごめんなさい」

「謝らないで……! 和奏は忙しいんだもの。何か困ってたら遠慮なく言ってね?」

「……うんっ。ありがとう、凛っ! いつも感謝してるッッ」


 和奏が、ガバっと凛に抱きつく。


「ちょっ、みんな見てる……」

「すりすり〜〜」

「やっ、やめてっ……!」


 和奏に頬ずりされ、手をジタバタとさせる凛。

 しかし、本気で突き放す気配はなく、彼女にされるがままになっている。

 ──そんな微笑ましい光景を見ながら僕は、授業の準備を始めるのだった。

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