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罰ゲームで黒髪清楚な高嶺の花に告白した僕は、百合属性だったカノジョに女装させられて、誰にもヒミツの関係になった。  作者: きたみ詩亜


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⑳ 隅の席。気遣い上手な和奏。『真ん中の席だと、女の子に囲まれちゃうでしょう……?』

「長らくお待たせ致しました。──時──分上映、『岬トライ&アングル』舞台挨拶ライブビューイング付き上映の入場を開始しまーす! チケットお持ちの方は……」


 入場開始を告げるアナウンスが流れ、列へと並ぶ。

 すでに並んでいた人たちの後ろについていくと、女子高生の年代の女の子や、社会人らしい若い女性が多い。パッと見た感じでは、男性客は見当たらない。


「──これ、僕、男子の格好だったら確実に浮いてたよ……」

「ふふっ、そうかもね……」


 チケットに印刷されたQRコードを専用の機械に翳して入場。


「はい、こちら入場者特典になります」


 少し進んだところにいたスタッフの人から、冊子を渡される。

 表紙には『岬トライ&アングル・中巻』と書かれている。普通の単行本の半分くらいのその冊子。


「随分、豪華な特典だね?」

「そうなのよ! 数量限定だから、配布終了してないか心配だったのよぉ〜!! 原作では描かれていなかった、修学旅行のエピソードが載っていてね、地方の映画館では配布初日で無くなったところもあるんだから……!」


 ニコニコした和奏が、もらったばかりの冊子を持参していたプラスチックケースへと大事そうに仕舞った。

 右手にあったエスカレーターへ乗り込み、スクリーンがある階で降りると、そこは女性客ばかりで埋まっている。


「『岬トライ&アングル』って、やっぱり男性ファンは居ないのかな……?」


 不安を感じ、小声で和奏に訊ねる。

 ──中身は結局、男子な自分。

 多くの女性たちに囲まれると、否応なく心臓が早鐘を打つ。

 こんな場違いな気分で、無事に映画を見終えられるのだろうか……。

 

「そうね……やっぱり作風からか、女性ファンがほとんどなのよ……ネットを見る限りは、男性ファンも居るはずなのだけど……」

「そっか……」 


 ──仕方ない……。

 あまり考えないようにしよう……。

 とりあえず、映画の前にトイレを済ませることに。

 雑談しながら、和奏の後ろをついていく。

 そのまま女子トイレの列に並んで……、って!?


「──ッッ! わ、和奏、下の階の多目的トイレ行くねっ」

「分かったわ。ごめんなさい、気付かなくて……」


 小声で伝えると、和奏も全然気付いてなかったようだ。危ない、危ない……。


◆◆◆◆


 トイレを済ませ、合流。

 『岬トライ&アングル』が上映されるスクリーンへ入り、薄暗い中を、チケットに記された番号の席へと向かう。

 和奏が予約していたのは、スクリーンからは一番後方、右端にふたつ並んだ座席。

 ──いわゆるカップルシートだ。

 この席だけ他から離れた位置に設置されていて、カップルであれば、ふたりの時間を作るのに打ってつけなのかもしれない。

 僕が一番奥の席に腰掛け、和奏がその手前の席へと座る。

 若干スクリーンから斜め寄りとなり、距離もあるため、少し観づらそうだ。


「……和奏は、こんな端の席で良かったの?」

「まあ、ちょっとスクリーンは観づらいかも知れないけれどね……ただ、真ん中の席だと、女の子に囲まれちゃうでしょう……? だから、隅の席のほうが、優は落ち着くかなと思ってね……」

「あ、ありがとう……!」


 彼女の、僕を思いやっての配慮。

 ──和奏の気遣いに、心の底から感謝した。


◆◆◆◆


「すごく良かったわ……!」


 あっという間だった、二時間半の上映時間。僕と和奏は、映画館内に併設されたカフェで一休みしていた。

 このカフェのすごいところとして、映画の鑑賞後にしか利用できないようになっていること。

 上映作品ごとにテーブルの島が巧みに配置されており、鑑賞後の半券をカフェのスタッフに見せると、該当の作品のテーブルに案内してくれる。

 ネタバレ防止や、ファン同士の交流の場になればという映画館の配慮らしい。


 和奏は、岬トライ&アングルのコラボメニュー、岬、触愛、三隅をイメージした、ミニストロベリーとティラミスのミニケーキに、ミルクティーのセットを注文。


「舞台挨拶ライブビューイング、すごくよかったわね! 監督の原作に対するリスペクトと、原作者の狭山さやま挟山はやま先生から届いたサプライズの手紙! 涙腺が崩壊するほど素晴らしかったわ……!」

「映画のほうも、ラストシーンの岬と触愛の長尺の掛け合いとか、声優さんの演技が凄くて、泣きそうになったよ」

「あのシーンはハンカチなしじゃ、見られないわよね……! あっ、脚本を担当した方もね──」


 夢中で語り続ける、笑顔の和奏。


 ──彼女の話にうなずきながら、楽しそうな和奏の笑顔をいつまでも見つめ続けていたいと思うのだった。

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