⑮ 透けるインナー。和奏と優の体験談。『恥ずかしい……』
突然降り出した雨にずぶ濡れとなった僕たちは、たまたま見付けた公園の東屋にて雨宿りをする。
とりあえず、濡れたブラウスをとりあえず脱いで、インナーだけになる。
ブラウスが駄目にならないよう、軽く水を絞ってみた。
──あれ?
脱いでみて気づいたけど、女装している状態でブラウス脱いだら、まずいんじゃ……?
「………」
濡れたままの服を身に纏った和奏。
彼女の視線が、僕の上半身に向いていた。
釣られて自らの胸へと視線をおとす。
──濡れたインナー越しに透ける、ブラジャーの色や形……。
……え、これって……。
「は、恥ずかしい……!」
気恥かしさから僕は思わず、胸を掻き抱いて覆い隠す。
……顔がカーッと熱くなるのが分かった。
「ちょっと、和奏、見ないでよ……」
恥ずかしさに、ピンクのリップを塗った唇をとがらせて抗議する。
しかし、その唇を見た彼女が何を思ったか、とんでもない質問を投げてきた。
「──ねえ、優はキスしたこと、ある……?」
「え……あるわけないじゃん……付き合ったの、和奏がはじめてだし……」
「そう……?」
──ドクン……!
鼓動が一拍跳ねる。硬直したままの僕。
「……わ、和奏は誰かとキスしたことあるの……? り、凛とか……」
「凛とは、ハグとかだけよ。あたしは彼女に対して恋愛感情を持っていないし、凛も同じ。だから、ただのじゃれ合いでも、そういうことはすべきではないわ……」
「そ、そっか……」
真面目な和奏の答えに、そんな言葉しか返せない。
「──あ。空、晴れたわね」
「え……?」
和奏の声に我に返り、空を見上げる。
すっかり雨は上がっていた。
「冷えるし、駅に向かいましょ?」
「うん……」
寒そうな和奏の姿に、僕は頷きを返すだけだけだった。
◆◆◆◆
晴れた空の下を無言で歩く僕たち。
そこへ小石を投げこむように、和奏が話し出す。
「──あたし、凛以外にもキスしたことないから。女の子にも、男の子にも」
「う、うん……分かった……」
晴れ渡った空の下。先ほどまで降っていた雨の名残りを留めるように、濡れた地面、建物がキラキラと輝く。
「……ねっ、帰りましょ……?」
和奏が僕の手を、ちょこんと握ってくる。
「……そうだね、行こう」
──爽やかに晴れた空の下を、和奏とふたり並んで歩いていく。




