魔法少女というジャンルの確立 第5話:時代が求める少女像
作者のかつをです。
第十六章の第5話をお届けします。
80年代、魔法少女アニメは大きな転換期を迎えます。
東映動画の伝統を受け継ぎつつ、他社が競うように生み出した「職業変身」や「アイドル」というテーマ。
それは、女の子たちの夢がより具体的で、社会的なものへと変化した証でもありました。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
2025年、東京。
バーチャルYouTuberが画面の中で歌い、踊っている。彼女たちはアバターという魔法の力で、理想の姿に変身し、世界中のファンを魅了する。アイドルになりたい、歌手になりたい、誰かに注目されたい。その承認欲求と自己実現の形は、テクノロジーの進化と共に多様化している。
私たちは、その「なりたい自分になって輝く」という姿を、現代のサクセスストーリーとして見ている。
しかし、かつて魔法少女アニメが、その「自己実現」の夢を、テレビの中で鮮やかに叶えてみせた時代があったことを、知る者は少ない。
1980年代。
日本はバブル景気へと向かう高揚感の中にあった。
豊かになった社会で、女の子たちの夢も変化していた。
「お嫁さんになりたい」から、「アイドルになりたい」「看護婦さんになりたい」「キャリアウーマンになりたい」へ。
その時代の空気を敏感に察知したのが、東映動画から独立したスタッフたちが立ち上げた新しいスタジオ、葦プロダクションやスタジオぴえろだった。
彼らは、東映動画が築いた魔法少女の基礎の上に、新しい時代の価値観を乗せた。
1982年、『魔法のプリンセス ミンキーモモ』。
大人に変身する魔法を持ったモモは、看護婦、婦人警官、パイロットと、毎回異なる「職業」のプロフェッショナルに変身して活躍する。
それは、アッコちゃんの変身をさらに進化させ、具体的なキャリアとしての「働く女性」への憧れを肯定するものだった。
そして1983年、『魔法の天使クリィミーマミ』。
ひょんなことから魔法の力を得た少女優は、謎のアイドル歌手クリィミーマミに変身し、芸能界でスターダムを駆け上がっていく。
芸能界、歌番組、コンサート。
当時の女の子たちが最も憧れていたキラキラした世界を、魔法というギミックを使ってリアルに描いた。
これらの作品は、従来の「魔女っ子」という呼び名から、「魔法少女」というより広いジャンルへと進化させた。
彼女たちは、もはや不思議な国から来たお客様でも、修行中の身でもなかった。
現代の日本に生きる普通の女の子が、魔法の力で「可能性としての自分(大人)」を先取りし、社会の中で輝く。
「私も、大人になったらあんな風になれるかもしれない」
テレビの前の少女たちは、変身したヒロインの姿に、自分自身の未来を重ね合わせた。
そして、主題歌もまた、アニメソングの枠を超えてヒットし、作品そのものがファッションや音楽といったカルチャーの一部となっていった。
魔法は、問題を解決するための道具から、少女が自分自身を輝かせるための「プロデュース能力」へと意味を変えたのだ。
この80年代の魔法少女たちは、女性が社会で活躍することが当たり前になる時代の先触れだった。
彼女たちが振りまいたキラキラとした光は、女の子たちに「自分の力で夢を叶えること」の素晴らしさを教えてくれたのだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
『クリィミーマミ』などのスタジオぴえろ制作の魔法少女シリーズは、ファッション性の高さも特徴でした。当時の流行を取り入れた衣装や小物は、今見ても色褪せない魅力があります。
さて、半世紀にわたる魔法少女の歴史を辿ってきました。
彼女たちの魔法は、現代の私たちに何を遺したのでしょうか。
次回、「あなたの最初の「憧れ」(終)」。
第十六章、感動の最終話です。
物語は佳境です。ぜひ最後までお付き合いください。
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