『ガンダム』、リアルロボットという革命 第7話:僕たちのリアル(終)
作者のかつをです。
第十五章の最終話です。
一つの作品がいかにして一つのジャンルを生み、そして一つの時代の若者たちの「リアル」そのものとなったのか。
その壮大な歴史の連鎖を描きながら物語を締めくくりました。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
2025年、東京。
物語の冒頭に登場したあのお台場。
実物大ガンダムの足元で父親が息子に語りかけている。
「いいか、ガンダムはな、ただ格好いいだけのヒーローじゃないんだ。戦争の悲しさとか人間の愚かさとか、そういう難しいことも教えてくれるんだよ」。
息子はまだその言葉の本当の意味は分からないかもしれない。
しかし彼は父親の真剣な眼差しと、目の前にそびえ立つ巨大な鉄の塊の圧倒的な存在感をただじっと見つめている。
私たちは、「ガンダムが人生の教科書であった」という世代を超えた共通の記憶を当たり前の文化として享受している。
しかし、その教科書の最初のページが、かつて一人の鬼才が全ての常識に抗い、たった一人で書き上げた反逆の物語であったことを知る者は少ない。
富野由悠季が起こした『機動戦士ガンダム』という革命。
それは日本のアニメの歴史を永遠に変えてしまった。
彼が打ち立てた「リアルロボット」という新しいジャンル。
それは単なるロボットのデザインの話ではなかった。
それは「物語」の質そのものを変える革命だった。
勧善懲悪ではない。
敵にも守るべき家族があり信じる正義がある。
戦争とは正義と正義がぶつかり合う悲劇なのだ。
そのあまりにも大人びたテーマは、アニメが子供だけの娯楽から大人の鑑賞にも堪えうる深い物語を描けるメディアへと、完全に脱皮したことを証明した。
ヒーローではない兵器としてのロボット。
その無骨な工業製品としての魅力はメカニックデザインという分野に新たな可能性を切り拓いた。
そしてガンプラというメディアはファンに「物語を消費する」だけではない、「物語を追体験し創造する」という新しい楽しみ方を与えてくれた。
『マジンガーZ』が巨大ロボットの「夢」の原型を作ったのだとすれば。
『機動戦士ガンダム』は巨大ロボットの「現実」の原型を作った。
その豊かな土壌の上に『超時空要塞マクロス』の華麗なバルキリーが舞い、『装甲騎兵ボトムズ』の無骨なスコープドッグが大地を踏みしめ、そして『新世紀エヴァンゲリオン』の苦悩する少年が搭乗した。
その全ての物語の源流に、あの白いモビルスーツは立っている。
歴史は遠い資料館の中にあるのではない。
あなたが今当たり前のように感じているそのやるせない現実の理不尽さ。
あなたが今当たり前のように抱いているその大人への不信感と未来への漠然とした不安。
その全ての感情を半世紀近くも前に描き切ってくれた物語があった。
かつて視聴率という数字の前に一度は敗れ去り、それでもファンの愛の力で蘇った不屈の物語が。
お台場の空の下にガンダムは立つ。
それは単なる鉄の像ではない。
それは一つの時代の若者たちが初めて出会った「僕たちのリアル」の記念碑なのだ。
その記念碑がそこに立ち続ける限り物語は決して終わらない。
(第十五章:『ガンダム』、リアルロボットという革命 了)
第十五章「『ガンダム』、リアルロボットという革命」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
ガンダムの革命はあまりにも巨大でその影響は今なお計り知れません。富野監督のあの戦いがなければ現代のアニメの風景は全く違うものになっていたことでしょう。
さて、男の子たちのリアルな物語でした。
次なる物語は、その対極にある女の子たちの「夢」と「憧れ」を形にした魔法の物語です。
次回から、新章が始まります。
**第十六章:プリンセスたちの魔法 ~魔法少女というジャンルの確立~**
「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン」。
女の子なら誰もが一度は唱えたあの魔法の呪文。
女の子たちの「変身願望」を叶え一大ジャンルを築き上げた「魔法少女アニメ」。
その半世紀にわたる華麗なる進化の歴史に光を当てます。
引き続き、この壮大な旅にお付き合いいただけると嬉しいです。
ブックマークや評価で応援していただけると、第十六章の執筆も頑張れます!
それではまた新たな物語でお会いしましょう。
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▼作者「かつを」の創作の舞台裏
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