『ガンダム』、リアルロボットという革命 第6話:伝説の始まり
作者のかつをです。
第十五章の第6話をお届けします。
ついにガンダムが社会現象の頂点を極めるその瞬間。
今回はアニメ史に残る伝説のイベント、「アニメ新世紀宣言」の熱狂を描きました。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
2025年、東京・新宿。
週末のシネマコンプレックス。あるアニメ映画の劇場版公開を記念した「オールナイト上映イベント」が開催されている。会場には作品のTシャツを着た熱心なファンたちが集い、これから始まる長丁場の上映に胸を躍らせている。ゲストとして登壇した監督の言葉に耳を傾け、そして同じ作品を愛する仲間たちと一体となって夜を明かす。
私たちは、「ファンイベント」という熱狂の空間を当たり前の文化として楽しんでいる。
しかし、かつてその熱狂が一つの頂点に達し、作り手とファンが一体となって新しい時代の到来を宣言した伝説の一夜があったことを知る者は少ない。
ガンプラの空前の大ヒット。
それは社会現象となりテレビのニュースでも連日報じられた。
「ガンプラを求める子供たちが模型店に殺到!」。
その熱狂はついに業界の大人たちを動かした。
「なぜこの打ち切りアニメのプラモデルがこれほどまでに売れるのだ?」
その問いへの答えを求め、テレビ局は『機動戦士ガンダム』の再放送を決定した。
ヤマトと全く同じ道のり。
歴史は繰り返した。
再放送は今度こそ熱狂的に受け入れられた。
プラモデルからガンダムを知った新しい世代のファン。
そして雑誌でその深度を知った旧来のファン。
その全ての熱狂が一つの巨大なうねりとなった。
そしてそのうねりはヤマトと同じく、一つの結論へとたどり着く。
「この物語の本当の決着を大きなスクリーンで観たい」
ファンの声に後押しされる形で『機動戦士ガンダム』の劇場版三部作の制作が決定した。
それは単なるテレビ版の再編集ではなかった。
監督の富野由悠季は打ち切りによって描ききれなかった自らの本当の構想を、この劇場版に全て注ぎ込んだ。
新作カットが大量に追加され、物語はより深くそしてよりシャープに生まれ変わった。
第一作、第二作、そして最終作『めぐりあい宇宙編』。
映画は立て続けに記録的な大ヒットとなった。
そして1982年2月13日。
『めぐりあい宇宙編』の公開前夜。
新宿駅東口広場でその熱狂の頂点を象徴する歴史的なイベントが開催された。
「アニメ新世紀宣言」。
極寒の夜にもかかわらず広場は一万人を超えるファンで埋め尽くされていた。
ステージには富野監督、安彦良和、そして声優たちが登壇した。
その熱狂の渦の中心で富野監督はマイクを握りしめ叫んだ。
その言葉はガンダムの中のギレン・ザビの演説を借りた、ファンへの感謝とそして新しい時代への檄文だった。
「我々は今アニメの歴史の大きな転換点に立っている! アニメはもはや子供だけのものではない! 我々若者の文化なのだとここに宣言する!」
「立てよ、国民よ!」
その叫びに呼応するように、一万人のファンから地鳴りのような歓声が巻き起こった。
打ち切りという絶望の淵から這い上がった一つの物語。
その物語を救い出したのは作り手でも企業でもない、ファンの一人一人の純粋な愛だった。
その愛の力がついに時代を動かし、新しい世紀の扉をこじ開けた。
それはアニメの歴史が、そしてファンの歴史が最も美しく輝いた奇跡の瞬間だった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
この新宿でのイベントは警察の予想を遥かに超えるファンが殺到し大きな混乱を巻き起こしました。それほど当時のガンダムの熱狂は凄まじいものだったのです。
さて、ついに伝説となったガンダム。
その革命は現代の私たちに何をもたらしたのでしょうか。
次回、「僕たちのリアル(終)」。
第十五章、感動の最終話です。
物語は佳境です。ぜひ最後までお付き合いください。
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