スポンサーと戦った『マジンガーZ』 第6話:ジャンルの誕生
作者のかつをです。
第十二章の第6話をお届けします。
一つの偉大な発明がいかにして模倣され競争を生み、そして一つの「ジャンル」として成熟していくのか。
今回はそんな文化の進化のダイナミズムを描きました。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
2025年、東京。
アニメ専門チャンネルでは「80年代リアルロボットアニメ特集」が放送されている。ゲームの最新作は「スーパーロボット大戦」。様々な作品のロボットたちがメーカーの垣根を超えて共演する。ロボットアニメはもはや一つの作品群ではなく、それ自体が独自の歴史と文法を持つ巨大な「ジャンル」として確立されている。
私たちは、その「ロボットアニメ」という豊かなジャンルの存在を当たり前の文化として享受している。
しかし、その豊かな生態系の全ての始まりとなった偉大な始祖、「コモン・アンセスター」がいたことを知る者は少ない。
その一体のロボットがいなければ、その後の全ての物語は始まらなかったかもしれないのだ。
『マジンガーZ』の空前の大成功。
それは日本中のテレビ局そして玩具メーカーに、一つの動かしがたい事実を証明した。
「人が乗り込む巨大ロボットは売れる」
そのあまりにも甘美な成功の方程式を、彼らが見逃すはずはなかった。
『マジンガーZ』の放送が終わるや否や。
その広大な荒野には雨後の筍のように次々と新たな巨大ロボットたちが産声を上げた。
永井豪と東映動画はすぐさまその続編となる『グレートマジンガー』を世に送り出した。
そしてその成功を横目で見ていた他の制作会社も、我先にとこの新しい鉱脈に殺到した。
『ゲッターロボ』。
三機の戦闘機が合体し三種類の異なる形態のロボットに変形するという画期的なアイデア。
それは「合体・変形」という玩具としての新たな魅力をロボットアニメに持ち込んだ。
『勇者ライディーン』。
古代ムー帝国の神秘的な力で動く美しいフォルムのロボット。
それはロボットに「神秘性」や「美意識」という新たな価値観を加えた。
『超電磁ロボ コン・バトラーV』。
五人の若者たちが五機のマシンに乗り込み合体して一つの巨大ロボットになる。
それは「チームで戦う」というスーパー戦隊的な要素をロボットアニメに融合させた。
彼らは皆『マジンガーZ』の子供たちだった。
彼らは『マジンガーZ』が発明した「人が乗り込む」という偉大なフォーマットを受け継ぎながら、それぞれが独自の進化を模索していった。
敵はより強く狡猾になり。
ロボットはより複雑に変形し合体し。
主人公たちはより深く苦悩し成長していく。
そうしてわずか数年の間に「搭乗型巨大ロボットアニメ」という一つの豊かな生態系、すなわち「ジャンル」が形成されていったのだ。
作り手たちは互いに競い合った。
どうすればマジンガーとは違う新しい驚きを子供たちに与えられるか。
どうすればもっと格好良くそして売れるおもちゃをデザインできるか。
その健全な競争こそがこのジャンルを異常なスピードで進化させ、深化させていった最大の原動力だった。
そしてその豊かな土壌が十分に耕された後。
1979年。
ついに一人の鬼才がそのジャンルの全ての常識を根底から覆す、革命的な作品を生み出すことになる。
その作品の名は『機動戦士ガンダム』。
勧善懲悪ではないリアルな戦争。
ヒーローではない兵器としてのロボット。
その革命は決してゼロからは生まれなかった。
『マジンガーZ』が切り拓きそして数多のフォロワーたちが豊かに耕した「巨大ロボットアニメ」というジャンルの土壌があったからこそ、咲かせることができた突然変異の徒花だったのだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
この70年代後半のロボットアニメ群雄割拠の時代は、「第一次ロボットアニメブーム」とも呼ばれています。この熱狂がなければガンダムも生まれなかった。そう考えると感慨深いですね。
さて、ついに一つの巨大なジャンルを生み出した『マジンガーZ』。
その鋼の魂は現代の私たちにどう繋がっているのでしょうか。
次回、「男の子たちの夢の形(終)」。
第十二章、感動の最終話です。
物語は佳境です。ぜひ最後までお付き合いください。
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