スポンサーと戦った『マジンガーZ』 第5話:子供たちの熱狂
作者のかつをです。
第十二章の第5話をお届けします。
ついに放送が開始された『マジンガーZ』。
今回はその熱狂がいかにしてアニメと玩具の歴史を永遠に変えてしまったのか、そのビジネスモデルの革命に焦点を当てました。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
2025年、東京。
玩具店の一角に設けられた巨大ロボットのプラモデルコーナー。そこには何百種類ものロボットたちが箱の中でその出番を待っている。子供の頃夢中で作ったあのヒーロー。大人になってからその魅力に目覚めた最新の機体。世代を超えて男たちは鉄の塊にロマンを感じ、その精巧なミニチュアを組み立てることに至福の喜びを感じる。
私たちは、「ロボットの玩具が大好きである」という文化を当たり前の国民的な趣味として享受している。
しかし、その文化の全ての始まりとなった一つの伝説的なおもちゃがあった。
そしてそのおもちゃがアニメと幸福な結婚を果たし、巨大な産業を生み出したあの熱狂の日々を知る者は少ない。
1972年12月3日。
ついにテレビアニメ『マジンガーZ』の放送が開始された。
その第一話。
主人公兜甲児がおじいさんの作ったスーパーロボット、マジンガーZに初めて乗り込み、地下帝国が送り込んだ機械獣と対峙する。
最初は思うように動かせず街を破壊してしまう未熟なヒーロー。
しかし絶体絶命のピンチの中で彼は叫ぶ。
「ロケット、パーーーンチ!」
その瞬間、日本中の子供たちの心は完全にノックアウトされた。
なんだこれは。
今までのロボットとは全く違う。
自分で乗り込んで操縦するあの高揚感。
自分の叫び声と共に放たれる必殺技の圧倒的なカタルシス。
子供たちは熱狂した。
翌日、学校の校庭はマジンガーZの主戦場と化した。
「ブレストファイヤー!」「ルストハリケーン!」。
誰もが兜甲児になりきり、見えない機械獣と激しい戦いを繰り広げた。
そしてその熱狂はそのまま街のおもちゃ屋へと直結した。
スポンサーであったポピーは、この熱狂を見越し二つの革命的な商品を世に送り出していた。
一つは子供の身長と同じくらいの大きさのポリエチレン製巨大フィギュア、「ジャンボマシンダー」。
そしてもう一つが、ずっしりと重い亜鉛合金の塊から作られた小さな高級玩具、「超合金」だった。
特にこの「超合金」は歴史的な大発明だった。
それまでのロボットのおもちゃが安っぽいプラスチック製だったのに対し、それは本物の金属の質感と重量感を持っていた。
そして腹のスイッチを押せばバネの力で拳が発射されるロケットパンチのギミック。
それはもはや単なるおもちゃではなかった。
テレビの中の憧れのヒーローのミニチュアであり、男の子が初めて手にする精密な機械だった。
「ジャンボマシンダー」と「超合金」。
この二つの商品は社会現象と呼ぶにふさわしい記録的な大ヒットとなった。
クリスマスや誕生日のプレゼントとして、全国の子供たちの羨望の的となった。
ここに一つの完璧な黄金のサイクルが完成した。
アニメがヒットすれば玩具が売れる。
玩具が売れればその莫大な利益がアニメの制作費となり、さらにクオリティの高い映像が作られる。
そしてその映像がまた新たな玩具のヒットを生み出す。
アニメと玩具。
作り手とスポンサー。
かつて対立していたはずの両者はいつしか、互いがいなければ成り立たない最強の共犯関係で結ばれていた。
この『マジンガーZ』が作り上げた幸福なビジネスモデル。
それこそがその後の日本のキャラクタービジネスの巨大な礎となっていくのだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「超合金」というブランドは今もなお続いており、大人のための高級玩具として世界中にコレクターが存在します。まさにおもちゃの歴史を変えた大発明でした。
さて、絶大な成功を収めた『マジンガーZ』。
その功績は単なる一作品のヒットに留まりませんでした。
次回、「ジャンルの誕生」。
マジンガーZがいかにして一つの巨大な「ジャンル」そのものを生み出したのか。その物語です。
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