スポンサーと戦った『マジンガーZ』 第1話:おもちゃを売るための番組
作者のかつをです。
本日より、第十二章「7色のヒーロー ~スポンサーと戦った『マジンガーZ』~」の連載を開始します。
今回の主役は日本が世界に誇る巨大ロボットアニメというジャンル。
その誕生の裏側にあったクリエイターとスポンサーの熱い駆け引きと戦いの物語です。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
2025年、東京・お台場。
潮風が吹き抜ける広大な公園に天を突くように一体の巨大なロボットが大地に立っている。その高さ約18メートル。アニメの中に存在するはずだった空想の産物が圧倒的な現実感をもって目の前に存在する。世界中から訪れた観光客たちはその神々しい姿を見上げ、感嘆のため息を漏らしそして一斉にスマートフォンのカメラを向ける。
私たちは、「巨大ロボットが大好きである」という国民的とも言える感情を当たり前の文化として共有している。
しかし、その巨大な鉄のヒーローたちがそもそもなぜ生まれ、そしてこれほどまでに私たちの心を捉えて離さないのか。その誕生の裏側にクリエイターの純粋な創造性と企業の冷徹な商業主義との激しい戦いの歴史があったことを知る者は少ない。
物語の始まりは1970年代初頭。
日本のアニメ界は手塚治虫が切り拓いた二つの偉大な発明によって、完全にその進むべき道を定められていた。
一つは「リミテッドアニメ」。
限られた予算と時間の中で最大限の効果を生み出す独自の映像表現。
そしてもう一つが「マーチャンダイジング」。
アニメはそれ自体で儲けるのではなく、関連グッズ、特に「おもちゃ」を売るための30分間の最高のコマーシャルフィルムなのだというビジネスモデル。
この二つの発明は日本に「週一テレビアニメ」という文化を根付かせ、巨大な産業へと育て上げた。
しかしその輝かしい光は同時に、一つの濃い影を作り手たちの上に落としていた。
「スポンサーの言うことは絶対である」
その鉄の掟。
スポンサーとは番組に制作費を出してくれる広告主。
当時のアニメの主なスポンサーは言うまでもなく玩具メーカーだった。
彼らの目的はただ一つ、自分たちの会社のおもちゃが売れること。
そのためには彼らはアニメの内容にまで容赦なく口を出してきた。
「主人公のヒーローはもっと子供が真似しやすい格好いいポーズをとらせてくれ」
「敵の怪獣はもっと分かりやすく強そうに見せてくれ」
「毎週必ず新しい武器を登場させてくれ。すぐに商品化するから」
クリエイターの自由な発想は常に「おもちゃとして売れるか否か」という商業的なフィルターによって厳しく選別された。
どんなに革新的なアイデアもおもちゃにしにくければ容赦なく却下された。
多くのアニメーターや監督たちはその鉄の掟に絶望しそして諦めていた。
自分たちは芸術家ではない。
おもちゃ屋のために絵を描くただの職人なのだ、と。
しかしそんな息苦しい時代に、その鉄の掟そのものを逆手に取りスポンサーと対等に渡り合い、そして全く新しいジャンルを生み出してしまった一人の天才漫画家がいた。
彼の名は永井豪。
彼と東映動画の若きプロデューサー、そして玩具メーカーの野心的な企画者。
その三者の奇妙な共同戦線が、やがて日本中の男の子たちの魂を永遠に変えることになる一体の鋼の魔神を生み出そうとしていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
第十二章、第一話いかがでしたでしょうか。
「おもちゃを売るための番組」。
それは一見クリエイターにとっては不自由な呪いのようにも聞こえます。
しかしその呪いといかに向き合うか。そこに新たな発明のヒントが隠されていました。
さて、そんな息苦しい時代に一人の天才がとんでもないアイデアを閃きます。
次回、「人が、ロボットに乗る」。
ロボットアニメの歴史が永遠に変わる、その革命の瞬間に迫ります。
ブックマークや評価で、新章のスタートを応援していただけると嬉しいです!
ーーーーーーーーーーーーーー
もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。
▼作者「かつを」の創作の舞台裏
https://note.com/katsuo_story




