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国産アニメ創世記~絵を動かした開拓者たち~  作者: かつを
第3部:表現の深化編 ~魂を吹き込む職人たち~
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撮影台が魔法を生んだ日 第3話:ビームはこうして輝いた

作者のかつをです。

第十一章の第3話をお届けします。

 

アニメの華とも言えるビームや爆発のシーン。

そのアナログ時代の驚くべき作り方の秘密に迫りました。

そこには現代のデジタル技術にも負けない創造的なアイデアが満ち溢れていました。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

2025年、東京。

 

映画館の漆黒の闇の中、巨大なスクリーンで繰り広げられるロボットアニメの戦闘シーン。主人公が叫ぶ。「ビーム、発射!」。その瞬間画面が閃光に包まれ、轟音と共に一条の光の奔流が敵のロボットを貫く。その圧倒的な破壊のスペクタクルに、観客はただ息を呑む。

 

私たちはCGで作り出されるケレン味たっぷりの「ビーム」や「爆発」の表現を、アニメの醍醐味として当たり前に楽しんでいる。

 

しかし、かつてその光の奔流が、一枚のセル画とアナログな光の操作だけで作り出されていた、驚異的な職人技があったことを知る者は少ない。

 

 

1970年代、SF・ロボットアニメの全盛期。

撮影監督たちの仕事場には毎日のように監督や演出家から、一つの無茶な要求が舞い込んできた。

「もっと派手なビームにしてくれ」

「爆発はもっと画面が白く飛ぶくらい眩しく頼む」

 

作画のアニメーターたちは確かにビームや爆発の「形」を描くことはできる。

しかしその「輝き」そのものを描くことはできない。

その無機質なセル画に破壊のエネルギーという魂を吹き込むのが、撮影監督たちの腕の見せ所だった。

 

彼らはまず作画スタッフに特殊なセル画を発注した。

それは「透過光用セル」と呼ばれる特殊なセル画だった。

 

例えばビームが発射されるシーン。

アニメーターはビームの形だけをセル画に描き、その内部はあえて色を塗らずに透明のままにしておく。

 

撮影監督はその特殊なセル画を撮影台にセットする。

そしてカメラのシャッターを開けたまま、下から強い光を当てるのだ。

するとビームの部分だけが光を透過し、フィルムには白く発光する光の塊として焼き付けられる。

 

しかし魔法はここで終わらない。

 

彼らはシャッターを開けたままの状態で、今度は撮影台のステージをミリ単位で上へとずらしていく。

するとフィルムの上で光の残像が尾を引き、ビームが前方へと突き進んでいくかのような力強い軌跡が生まれるのだ。

 

さらにステージをずらしながらカメラのピントを徐々にぼかしていく「送りぼかし」という高等技術も編み出された。

これによってビームの光が拡散し、画面全体が眩い光に包まれるかのような効果を生み出すことができた。

 

爆発のシーンも同様だった。

エアブラシで描かれた爆発の絵。その中心に透過光を当てることで閃光の輝きを表現する。

 

それは一枚の絵を一度撮るだけの単純な作業ではなかった。

一つのカットを撮影するために光を当てたり消したり、セル画を差し替えたりずらしたり。

何重にも撮影(多重露光)を繰り返し、フィルムの上で光と影を重ね合わせていく複雑なパズルのような作業だった。

 

それはまさに錬金術だった。

作画という「物質」と撮影という「光」が融合し、フィルムの上で全く新しい輝きが生まれる。

 

このアナログの錬金術こそが、CGでは決して再現できない独特の力強さと温かみを日本のアニメの特殊効果に与えていたのだ。

彼らの手の中でビームは本当に輝いていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

この透過光を使った撮影技術は『宇宙戦艦ヤマト』の波動砲や『機動戦士ガンダム』のビームライフルのシーンでその頂点を極めることになります。まさにSFアニメの進化を支えた核心的な技術でした。

 

さて、光の魔法を自在に操る撮影監督たち。

しかし彼らの仕事はそれだけではありませんでした。

 

次回、「アナログの魔法」。

彼らがいかにして作品の世界観そのものをコントロールしていたのか。その物語です。

 

ブックマークや評価、お待ちしております!

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もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。


▼作者「かつを」の創作の舞台裏

https://note.com/katsuo_story

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