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国産アニメ創世記~絵を動かした開拓者たち~  作者: かつを
第2部:革命編 ~テレビとお茶の間~
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国産初のカラーテレビアニメ 第6話:世界に色が溢れ出す(終)

作者のかつをです。

第七章の最終話です。

 

カラー化という一つの技術革新がいかにしてアニメの表現だけでなく、産業構造そして文化そのものを変えていったのか。

その壮大な歴史の連鎖を描きながら物語を締めくくりました。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

2025年、東京・秋葉原。

 

キャラクターグッズ専門店の店内はまばゆい色彩の洪水に包まれている。棚には様々なアニメのキャラクターたちがキーホルダーになり、フィギュアになり、そしてクリアファイルになって所狭しと並んでいる。ファンたちは、お気に入りのキャラクターのその髪の色、瞳の色、衣装の色を愛おしそうに眺め手に取っていく。

 

私たちは、そのカラフルなキャラクターたちが生み出す巨大な経済圏を当たり前の文化として享受している。

 

しかし、その色鮮やかな世界の全ての始まりが、かつて一頭の白いライオンがお茶の間に灯した小さな色の光にあったことを知る者は少ない。

 

 

『ジャングル大帝』は、大成功を収めた。

それは『鉄腕アトム』とはまた質の違う決定的な成功だった。

 

『鉄腕アトム』はテレビアニメという新しい「フォーマット」を発明した。

そして『ジャングル大帝』は、そのフォーマットの上で表現できる「クオリティ」の限界を一気に押し上げたのだ。

 

この成功は日本のアニメ界に一つの動かすことのできない潮流を作り出した。

「これからのアニメはカラーでなければ勝負にならない」

 

その流れは誰にも止めることはできなかった。

東映動画をはじめ他の制作会社も急速にカラー化へと舵を切った。『魔法使いサリー』、『ゲゲゲの鬼太郎』。白黒だったはずのヒーローたちが次々と色鮮やかな姿で生まれ変わっていく。

 

日本中の家庭でカラーテレビへの買い替えが急速に進んだ。

『ジャングル大帝』は、アニメという一つのコンテンツがハードウェアの普及さえも牽引しうることを証明したのだ。

 

そしてその色の革命は、手塚治虫が当初目論んでいたもう一つの野心を見事に花開かせることになる。

「キャラクタービジネス」の爆発的な拡大である。

 

色がつくことでキャラクターの魅力は何倍にも増幅された。

レオの白い毛並み。ライヤの美しい横顔。

その色鮮やかな姿は商品として圧倒的な訴求力を持っていた。

文房具、お菓子、衣類。あらゆる商品にレオたちのイラストが印刷され子供たちの人気を博した。

 

手塚がかつて『鉄腕アトム』の制作費を捻出するために描いた、二次利用によるビジネスモデル。

その錬金術はカラー化によってついに完成の域に達したのだ。

アニメを作りそのキャラクターグッズで儲ける。

その黄金のサイクルは、現代にまで続く日本のアニメ産業の根幹を形作っていくことになる。

 

 

……2025年、東京。

 

物語の冒頭に登場したあのアニメショップ。

一人の外国人観光客が興奮した面持ちで、あるキャラクターのぬいぐるみを手に取りレジへと向かう。

そのキャラクターの髪は現実にはありえない鮮やかなピンク色をしていた。

 

彼は知らない。

 

今自分の心を掴んで離さないそのカラフルなキャラクターの文化。

その遥かなる源流に、かつてアフリカのジャングルを舞台に一人の神様が壮大な色彩の夢を見た物語があったということを。

 

歴史は遠い資料館の中にあるのではない。

あなたが今当たり前のように手にしているその色鮮やかなキャラクターグッズの一つ一つに、それは確かに息づいているのだ。

 

店の外に出ると東京の街はアニメの広告の鮮やかな色彩で溢れかえっていた。

あの日手塚が灯した小さな色は今、世界を照らすほどの大きな光となっていた。

 

(第七章:ジャングルに色が灯った日 ~国産初のカラーテレビアニメ~ 了)

第七章「国産初のカラーテレビアニメ」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

 

この『ジャングル大帝』の成功がなければ日本のアニメのカラー化はもっと遅れていたかもしれません。そしてその豊かな色彩表現がなければ「クールジャパン」と呼ばれる現在の隆盛もなかったでしょう。まさに決定的瞬間でした。

 

さて、テレビアニメは色を手に入れました。

次なる物語は、そのアニメに命を吹き込む「歌」の物語です。

 

次回から、新章が始まります。

**第八章:レコード会社の賭け ~アニソンが“ビジネス”になった日~**

 

今では音楽チャートを席巻することも珍しくない「アニソン」。

しかし、かつてそれがただの「テレビまんがのうた」と呼ばれ軽んじられていた時代がありました。

その子供の歌にヒットの可能性を見出し、巨大な市場を作り上げたレコード会社の男たちの知られざる賭けの物語が始まります。

 

引き続き、この壮大な旅にお付き合いいただけると嬉しいです。

ブックマークや評価で応援していただけると、第八章の執筆も頑張れます!

 

それでは、また新たな物語でお会いしましょう。

ーーーーーーーーーーーーーー

もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。


▼作者「かつを」の創作の舞台裏

https://note.com/katsuo_story

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