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国産アニメ創世記~絵を動かした開拓者たち~  作者: かつを
第2部:革命編 ~テレビとお茶の間~
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『鉄腕アトム』とリミテッドアニメの発明 第6話:お茶の間のヒーロー

作者のかつをです。

第五章の第6話をお届けします。

 

ついに歴史が動いたその瞬間。

今回は第一話の放送日に日本中で何が起こったのか、その社会現象とも言える熱狂の渦を描きました。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

2025年、東京。

 

日曜の朝。リビングのテレビの前では子供たちがヒーローアニメの主題歌を大声で合唱している。その手にはおもちゃ屋で買ってもらったばかりの最新の変身アイテムが握りしめられている。毎週テレビでヒーローの活躍を見ること。それは日本の子供たちにとっていつの時代も変わらない、当たり前の原風景となっている。

 

私たちは、その「毎週ヒーローに会える」という幸福な日常を当たり前のものとして享受している。

 

しかし、その当たり前の幸福な一週間が、かつて一本のテレビアニメによって初めてこの国にもたらされた、あの熱狂の日々を知る者は少ない。

 

 

1963年1月1日、火曜日、午後6時15分。

その運命の瞬間。

日本中のほとんどの家庭のテレビのブラウン管は、一つの番組を映し出していた。

 

フジテレビ系列、新番組『鉄腕アトム』。

 

制作を担当した虫プロダクションの富士見台の小さな砦では、手塚治虫をはじめとする全スタッフが固唾を飲んで自分たちの血と汗の結晶が電波に乗って全国に届けられるのを見守っていた。

間に合った。

その安堵感とこれからどんな審判が下されるのかという緊張感で、誰もが口を開くことができなかった。

 

そして番組が始まった。

 

♪空をこえて ラララ 星のかなた

 

軽快なマーチのリズムに乗って希望に満ちた主題歌がお茶の間に流れ出す。

画面の中ではアトムがリミテッドアニメという新しい翼で、生き生きと空を駆け巡っていた。

 

その瞬間、日本中の子供たちの心は完全に鷲掴みにされた。

 

映画館で年に一度しか会えなかったアニメのヒーロー。

そのヒーローが今自分たちの家のテレビの中で毎週毎週新しい冒険を繰り広げてくれる。

それは革命的な体験だった。

 

子供たちは熱狂した。

翌日、学校の教室や校庭はアトムの話題で持ちきりになった。

誰もが主題歌を口ずさみ、「十万馬力だ!」と叫びながらアトムのポーズを真似した。

 

その熱狂はすぐに社会現象へと発展していった。

『鉄腕アトム』の放送時間になると街の銭湯から子供たちの姿が消えると言われた。

スポンサーであった製菓会社のアトムシール付きマーブルチョコレートは、爆発的な大ヒット商品となった。

 

そしてその熱狂を誰よりも驚きと嫉妬の目で見つめていたのが、東映動画のベテランたちだった。

 

「なぜだ……」

 

彼らが「紙芝居」と揶揄したあのカクカクのアニメ。

それが自分たちが芸術の粋を集めて作ったどんな長編映画よりも、子供たちの心を熱く捉えている。

その厳然たる事実を彼らは認めざるを得なかった。

 

視聴率は回を重ねるごとにうなぎのぼりに上昇し、最終的には40%を超えるお化け番組となった。

 

リミテッドアニメは手抜きか、発明か。

その問いへの答えは出た。

日本中の子供たちの熱狂的な支持が、それが紛れもない大発明であったことを証明したのだ。

 

手塚治虫が起こしたたった一人の反乱。

その革命の炎は今、日本中のお茶の間を赤々と燃え上がらせていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

視聴率40.3%。これは今ではおよそ考えられない驚異的な数字です。紅白歌合戦やオリンピック中継に匹敵するほどの国民的イベントだったのです。

 

さて、大成功を収めた『鉄腕アトム』。

その輝かしい光はしかし同時に、一つの濃い影を未来の日本のアニメ界に落とすことになります。

 

次回、「日本アニメのDNA(終)」。

第五章、感動の最終話です。

 

物語は佳境です。ぜひ最後までお付き合いください。

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もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。


▼作者「かつを」の創作の舞台裏

https://note.com/katsuo_story

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