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国産アニメ創世記~絵を動かした開拓者たち~  作者: かつを
第2部:革命編 ~テレビとお茶の間~
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『鉄腕アトム』とリミテッドアニメの発明 第4話:止め絵、バンク、3コマ撮り

作者のかつをです。

第五章の第4話をお届けします。

 

ついに登場したリミテッドアニメの具体的な手法。

今回は今では当たり前となったそれらの技術がいかにして発明されていったのか、その実験のプロセスを描きました。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

2025年、東京。

 

子供たちがテレビの前で魔法少女アニメの変身シーンに合わせて一緒にポーズを決めている。「私もあんな風に変身したいな」。その華麗な変身シーンは毎週同じ映像が繰り返し使われている。しかし子供たちはそれを決して退屈だとは思わない。むしろその「お約束」のシーンが流れるのを毎週心待ちにしているのだ。

 

私たちは、その「バンクシステム」と呼ばれる映像の使い回しをアニメの様式美として当たり前に受け入れている。

 

しかし、その様式美がもともとは制作現場の地獄のスケジュールを生き抜くための、あまりにも切実なサバイバルのための発明だったという事実を知る者は少ない。

 

 

「動かさずに動いているように見せる」

 

手塚治虫が提示した革命の思想。

そのあまりにも大胆なコンセプトに虫プロの若いスタッフたちの心は確かに火がついた。

しかし思想だけでは絵は一枚も減らない。

 

その日からスタジオはさながら新しい武器を開発するための秘密の実験室と化した。

手塚を中心にスタッフたちは毎晩、どうすれば最小限の作画枚数で最大限の映像効果を生み出せるのか、その具体的な方法論を議論しそして試作を繰り返した。

 

そして彼らはついに三つの強力な「魔法」を発明する。

後に日本のアニメの宿命を決定づけることになる「リミテッドアニメの三種の神器」である。

 

一つ目の魔法、それは「3コマ撮り」。

フルアニメーションが一秒間に24枚の違う絵を使うのに対して、彼らは同じ絵を3コマずつ撮影することにした。

つまり使う絵の枚数は一秒間にたったの8枚。

これだけで作画の絶対量は3分の1に激減する。

もちろん動きはカクカクになる。しかし人間の目は意外と騙されやすい。テンポの良いBGMや効果音を合わせれば、そのぎこちなさはむしろ独特の躍動感として見えなくもなかった。

 

二つ目の魔法、それは「バンクシステム」。

主人公が必殺技を繰り出すシーン。変身するシーン。毎回必ず登場する見せ場のシーンを一度気合を入れて作っておく。そしてそのフィルムを「バンク(銀行)」に預けるように保管しておき、毎週繰り返し使い回すのだ。

これによって作画の手間を大幅に省けるだけでなく、視聴者に「お約束」としての安心感と高揚感を与えることもできた。

 

そして三つ目の、そして最も多用された魔法。それは「止め絵」と「口パク」だ。

キャラクターは動かさない。ただ立っているだけの一枚の絵。

しかしその背景の絵だけをカメラワークで動かしたり(スライディング)、あるいはキャラクターの口の部分だけを数パターンの絵で差し替える(口パク)。

それだけで驚くほどキャラクターが会話し、物語が進行しているように見せかけることができた。

 

3コマ撮り、バンク、口パク。

 

これらの魔法は一つ一つはささやかな工夫だったかもしれない。

しかしその三つの神器が組み合わさった時、奇跡が起きた。

 

あれほど絶望的に不可能だと思われていた「週一30分」という巨大な壁が、確かに乗り越えられるかもしれないという一筋の光明がはっきりと見えてきたのだ。

 

それはディズニーの潤沢な物量が生み出すリアルな生命感とは全く違う。

制約とアイデアが生み出すケレン味と様式美。

まさに日本独自のアニメーションの文法が産声を上げた瞬間だった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

これらの発明は手塚治虫一人のアイデアだけでなく、現場の名もなきアニメーターたちの日々の試行錯誤の中から生まれてきたものでした。まさにチーム全員で勝ち取った革命でした。

 

さて、新しい武器を手に入れた虫プロ。

しかしその革新的な手法は外部から厳しい批判に晒されることになります。

 

次回、「これは手抜きか、発明か」。

革命につきものの旧世代からの抵抗が始まります。

 

ブックマークや評価、お待ちしております!

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もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。


▼作者「かつを」の創作の舞台裏

https://note.com/katsuo_story

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