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国産アニメ創世記~絵を動かした開拓者たち~  作者: かつを
第5部:産業編 ~未来への布石~
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デジタルアニメの夜明けと職人たちの選択 第2話:効率か、味か

作者のかつをです。

第二十章の第2話をお届けします。

 

初期のデジタルアニメに対する違和感。それを覚えている読者の方も多いかもしれません。

「綺麗だけど、何かが違う」。その感覚の正体と、現場の葛藤を描きました。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

「なんだ、こののっぺりした色は」

 

デジタル彩色デジタルペイントによって仕上げられたテスト映像を見て、ベテランの色彩設計家は眉をひそめた。

 

画面の中のキャラクターは、確かに指定通りの色で塗られている。はみ出しもないし、塗り残しもない。完璧だ。

しかし、そこには決定的に欠けているものがあった。

「深み」だ。

 

セル画のアニメには、独特の「揺らぎ」があった。

絵の具の厚み、筆跡のわずかなムラ、セルを重ねた時に生まれる影。

それら物理的な要素が、画面に温かみと存在感を与えていた。

 

しかし、デジタルで塗られた色は、あまりにも均一で、冷たく、平面的だった。

当時のモニターの解像度や色域の限界もあり、それはまるでプラスチックの人形が動いているように見えた。

 

「こんなのはアニメじゃない。ただのデータの塊だ」

「効率、効率って言うけど、一番大事な『画の力』が落ちてるじゃないか」

 

現場からは、デジタル化に対するアレルギー反応が噴出した。

特に、長年セル画と向き合ってきた職人たちにとって、自分の技術が「クリック一つ」で代替されることは、プライドを傷つけられる耐え難い屈辱でもあった。

 

一方、デジタル推進派のスタッフたちも必死だった。

彼らは彼らで、新しい表現の可能性を模索していたのだ。

 

「確かに今の段階ではセル画の質感には勝てないかもしれません」

「でも、デジタルならセル画では不可能なことができるんです」

 

彼らが提示したのは、複雑なグラデーション処理や、半透明の表現、そして何層にも重ねた光のエフェクトだった。

セル画では、セルを重ねすぎると色がくすんでしまうため、重ねられる枚数には限界があった。

しかし、デジタルには物理的な厚みがない。

理論上、無限にレイヤー(層)を重ねることができる。

 

雨の表現、魔法の光、複雑なメカニックの質感。

デジタルならではのリッチな画面作りが可能になる。

 

「味がないなら、新しい味を作ればいいんです」

 

若いデジタルスタッフたちは、従来の「セル画風」を再現することに固執するのではなく、「デジタルならではの新しいアニメのルック」を作り出そうと試行錯誤を繰り返した。

 

効率を求める経営陣と、味を求める職人たち、そして可能性を信じる若者たち。

 

スタジオの中では、連日激しい議論が交わされた。

それは単なる技術論争ではなく、アニメーションという文化の「定義」を巡る、哲学的な戦いでもあった。

 

そして、その議論に強制的な終止符を打つ出来事が、静かに、しかし確実に近づいていた。

 

「セルの生産終了」。

 

そのニュースは、業界全体を震撼させることになる。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

初期のデジタルアニメは、線がパキッとしすぎていて目に痛いと言われることもありました。そこから現在の「馴染む」画面作りになるまでには、膨大な試行錯誤があったのです。

 

さて、議論を続ける現場に、逃れられない現実が突きつけられます。

 

次回、「絵の具の匂いが消える日」。

物理的な限界が、時代の転換を決定づけます。

 

よろしければ、応援の評価をお願いいたします!

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もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。


▼作者「かつを」の創作の舞台裏

https://note.com/katsuo_story

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